今シーズンからニューヨーク・メッツに移籍したクローザーのJ.J.プッツがイチローを批判する発言が2月中旬にシアトル・タイムズ紙に掲載されてから、メディアはイチローのキャンプ入りを待っていた。

 記事のなかで、プッツは「200本安打を毎年記録するのは確かにすごいことだ...ただ、彼にはもっと他にやれることがあったはずなのに、それをしなかった」と述べたという。イチローほどの選手なら、「ここ」というときのダイビングキャッチや、盗塁、走者を進める動きをすることができるはずだというのだ。

 キャンプに合流したイチローはオープン戦に出場したあと、小さなスツールに足を組んでバランスよく座ったまま、30分近く記者の質問に答えた(3月26日付シアトル・ポスト・インテリジェンサー電子版)。イチローはWBC決勝戦について熱く語ったが、記者たちの質問は元チームメートの発言に集中した。

 イチローはプッツの発言の詳細は知らないし、ひとの考えを変えることはできないとしながら、「ぼくたちはプロだ。自分の行いについて、なぜそれをするのかを、いちいち説明しなければならないのか? そんなことが問題になってしまう程度のレベルだということのほうが問題だ」などと述べた。

 しかし、ケン・グリフィー・ジュニアやマイク・スウィーニーといったベテランが加入して、昨年の101敗という成績につながったクラブハウスの刺々しい空気が変わった。記者たちがイチローに質問している最中、グリフィーはしばしば「それは去年の話じゃないか」と大きな独り言をいって、彼がイチローの味方であることをイチローだけでなくチームメートにも知らせた(3月27日付シアトル・タイムズ電子版)。

 チームの雰囲気がよくなれば、もっと勝てるようになるかと訊かれたイチローは「雰囲気だけに頼ることはできないけれど、野球というスポーツでは、何事も起こりうる」と応えた。

 ひとりのリーダーが指示を出してチームを引っぱるよりも「向上心のあるひとりひとりが集まることのほうが大きい。野球選手として向上すること、人間として成長すること。それが大事だ」と述べた。