介護される親が子供に伝えたいこと 作詞者不明の曲に感動広がる
2008年10月にCDが発売された「手紙〜親愛なる子供たちへ〜」という曲がじわじわ人気になっている。認知症などで介護が必要となってしまった時、老いた親が子どもに伝えたいメッセージがストレートに語られている。歌詞を書籍化した詩集も発売され、重刷も決定。実際に介護をする人からは感動したという感想が寄せられている。第二の「千の風になって」として爆発的なブームになるのか。
「親のありがたさを思い起こさせる歌ですね」
シンガーソングライターの樋口了一さんが歌う「手紙〜親愛なる子供たちへ〜」は、テイチクエンタテインメントのレーベル「タクミノート」から発売された。樋口さんはアコースティックギターを奏でながら、深みのある声で歌う。たとえば、最初の一文は次のように書かれている。
「年老いた私が ある日 今までの私と違っていたとしても
どうかそのまままの 私のことを理解して欲しい」
この詩はもともと、樋口さんが知人の角智織さんを通じて知った、作者不明のポルトガル語のメールだった。日本語訳の詩を読んだところ、内容に感銘を受けたという樋口さんは一部に歌詞を加え、作曲。ラジオを中心に曲を流し、ライブで歌っていたものが評判を呼んだ。ブログにも書き込まれ、クチコミで広まったこの曲は現在、はじめに用意したCD2000枚を大きく超える、1万8000枚が売れている。また、日本テレビ「誰も知らない泣ける歌」(2009年3月3日放送)でも取り上げられたばかりだ。
動画投稿サイトYouTubeでも公開されており、4万件以上が再生された評価は、5点満点。コメント欄には、「母をいつか介護するようになった時に、また聴いてみたいと思います。親のありがたさを思い起こさせる歌ですね」などと感想が寄せられている。
また、個人のブログにも、「3年前に亡くなった父も痴呆でした。その父も、この歌詞のような気持ちだったのかと思うと、たいした介護もせず申し訳なく涙がこぼれました」。母親の介護をしているある人は、「(この曲を聴いて)母はもう 私に笑顔で答えてくれることはありませんが 心で笑顔を作ってくれているかも知れないと思わされます。いつまでも忘れないでいたい 歌 です」と書き込んでいた。
角川が発売した「詩集」は重刷が決定
そして、この歌詞を書籍化した同名の詩集が2009年3月4日、角川グループパブリッシングから発売された。写真がふんだんに使われているビジュアルブックは初版2万部だったが、追加で1万部の重刷が決まった。
角川の担当者によると、同社の社員がタクシー内で聴いたことがきっかけで、出版が決まった。「その後の会議ではみなが感動した。その輪を広げたい。知らない人にも聴いてもらいたい。伝えたいという想いがあった」と話している。
紀伊國屋書店の調べによると、同書の購入者層は女性30〜49歳が31.1%ともっとも高く、女性50歳以上が22.7%、女性19〜29歳も19.3%とつづく。男性では30〜49歳が19.9%と、介護を担う世代を中心に強い関心が寄せられているようだ。
CDを販売する「タクミレーベル」宣伝担当の倉橋賢治さんは、これらの反響を受けて、
「介護をされている方の中には、歌詞をコピーしたものを持ち歩いている方もおられるようです。気持ちを忘れないように、と。また、『介護しているとき、話をさえぎってごめんね』といった実体験に即した感想も寄せられています。さらに、最近では介護施設からもライブのオファーが来ることもあります」
と話している。
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