WBSSバンタム級決勝進出を決めた井上尚弥(左)【写真:Getty Images】

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英専門誌が回顧「またしても見せた破壊的な傑作をどう評価するか」

 ボクシングのワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)バンタム級準決勝でIBF王者エマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)を259秒KOで下したWBA世界王者・井上尚弥(大橋)。決勝で5階級制覇王者ノニト・ドネア(フィリピン)との対戦が決まった。権威ある米専門誌「リング」選定のパウンド・フォー・パウンド(PFP)最新版はキャリア最高となる4位に駆け上がったモンスターについて、英専門誌もロドリゲス戦のKO劇を「またしても破壊的な傑作」と高く評価。識者が絶賛している。

 英専門メディア「ボクシング・マンスリー」は同日に行われたスーパーライト級を含めたWBSS準決勝を振り返る同誌記者8人の座談会を掲載し、井上戦を回顧。「イノウエについて、何が言える? またしても見せた破壊的な傑作についていかに評価するのか?」という問いに対し、それぞれ分析。満場一致で高い評価を与えている。

 トム・クレイズ記者は「桁外れのファイターが桁外れな試合を見せてくれたということ」と指摘。一方で、打ち合いに出たロドリゲス陣営について「ロドリゲスがリング中央でイノウエと対峙したことは驚きでもあり、作戦失敗だった。プエルトリコ人が打ち合いに十分な自信を持った瞬間、結末は1つしかなかった」と戦略ミスと分析した。

 リー・ゴームリー記者は「我々はすでにイノウエがいかに品格溢れているか理解しているが、この勝利はまたしてもエリートレベルの相手を破壊するという、卓越したパフォーマンスだった。彼は何週間も観戦を心待ちにさせながら、あんな形で試合を終わらせてしまう。そして、もっと観たいという気持ちにさせるんだ」と持論を展開した。

259秒で英ファン増えた? バイロン記者「会場外でみんな称賛を口に」

 さらに、同記者は「この階級におけるパワーは恐ろしく、それこそが彼がKOショーを続けながら様々なファンを獲得し続けている要因だ。WBSS決勝が待ち切れない。ノニト・ドネアにとっては厳しい夜になるだろう!」と“井上愛”を見せ、決勝で激突するドネアは苦戦必至と分析していた。

 クリス・ウィリアムソン記者は「日本の破壊兵器」と形容。何発か左フックをわずかに狙いを外しながら圧倒したことに触れながら「もし試合の夜ベストな状態でなかったのであれば、彼は間違いなく世界で最も危険な男だ」とし、ルーク・ウィリアムズ記者は「彼は輝けるファイター。あまりに破壊的で、あまりに抜け目なく、あまりに冷静沈着。英国の地で彼のパフォーマンスを観られたことは栄誉だ」と絶賛した。

 これにルーク・バイロン記者も同調。「大盛り上がりのグラスゴーの観衆の心を満たすショーを見せた。彼は全員の期待に応え、会場の外ではみんな彼への称賛を口にしていた。そしてこの英国でかなりのサポーターを獲得したように見えた」と語り、圧巻のパフォーマンスでモンスターファンは拡大したと見ている。

 アダム・コックス記者は「イノウエはまたしても自分が世界最強のボクサーに値する権利を主張した。現在ボクシング界で最も爆発的で最も人々を楽しませてくれるボクサーと言って間違いないだろう。彼の蹂躙ぶりは富士山でゴジラが暴れているかのようだ」と独特表現で称えた。わずか259秒で英国の識者の心もがっちりと鷲掴みにしたようだ。(THE ANSWER編集部)