バスやトラックの左側面は、「東急バス」「福山通運」といったように文字やロゴマークが左読みなのに対し、右側面は「スバ急東」「運通山福」というように右読みで書かれる場合も。近年は左読みに改められるケースもありますが、そもそもなぜ右読みなのでしょうか。

右読みのほうが「読み方」としては自然? そのワケは

 バスやトラック、あるいは営業車などの車体側面に書かれている文字や会社のロゴ。この読み方向が、車体の左側面と右側面とで異なるケースがあります。


東急バス。右側面の社名ロゴは、左から「スバ急東」とも読める(2018年12月、中島洋平撮影)。

 たとえば「東急バス」のロゴ。左側面は前扉側から左読みで書かれる一方、右側面は右読みで書かれており、「スバ急東」とも読めます。物流大手「福山通運」のトラックも同様で、右側面は「運通山福」という文字の配置に。福山通運によると、昔から「進行方向に向かって文字が流れるようにしている」のだとか。

 この「右側面の文字を右読み」にする理由について、トラックやバスの車体装飾・デザインを手掛けるエクシング(兵庫県尼崎市)は次のように話します。

「たとえば運転中に、対向から走ってきたトラックを見た際、右側面の文字列が右読みになっている『前流し』のほうが、ドライバーから見てひと文字ずつ前からテロップのように流れて読みやすいといわれます。また、車両の前進方向へ、左右側面で文字列の『頭をそろえる』という意味もあります」(エクシング)

 福山通運では前述のとおり、トラックの右側面は文字を右読みに配置していますが、貨物列車のコンテナに書かれた文字は、どちらの側面も左読みです。運転席の位置と進行方向が決まっているトラックと異なり、「貨物列車は機関車の連結位置次第でどちら方向にも動くから」とのことです。

やはり読みにくい? 左読みに変更することも

「スバ〇〇」といったバス右側面の右読み文字を、左読みに改めるケースもあります。東京北部から埼玉県にかけて営業する国際興業バスもそのひとつです。

「右側面の右読み文字は、走ってくる対向車からは読みやすいかもしれませんが、バスが停車している際には、歩行者から読みにくいためです。また、側面の屋根側には『KOKUSAI KOGYO BUS』とアルファベットでも表記しているのですが、こちらは昔から右側面も左読みにしており、それに合わせる目的もありました」(国際興業バス)

 同社ではおおよそ、2002(平成14)年に営業エリアのさいたま市で開催されたサッカーワールドカップのころに、右読みのロゴを左読みに改めたそうです。

 前出のエクシングも、「日本語は右読みでも、アルファベットや電話番号の数字などは、右側面であっても左読みにしないとおかしくなる」と言います。いま、トラックでは6割から7割が左読みになっているのではないか、とのことでした。

「お客様に『文字列の方向が2パターンあるのですが、どちらにしましょうか』とご提案し、『おまかせ』となった場合は、右側面の文字列も左読みのデザインをご提案します。それに違和感を持たれたことはなく、あえて右読みにこだわってご指定されるお客様も多くはありません。右読みの文字列は、単に昔からのデザインが踏襲されている、という側面が強いのではないでしょうか」(エクシング)


福山通運の貨物列車コンテナは、どちらの側面から見ても左読みの「福山通運」になっている(草町義和撮影)。

 ちなみにエクシングによると、文字列を右読みにするのと、左読みにするのとで、料金は変わらないそうです。「ひと文字ずつ施工する場合もありますし、1枚の大きなデザインを左右対称にして使う場合も、コンピューターで文字列を入れ替えるだけですから」と話します。