JR東海社長"新幹線本数はまだ増やせる"
■リニア開業後は「こだま」を増発
――会社の現状、課題、展望は。
【金子】幸いなことに日本の経済が好調で、鉄道の利用は堅調さを保っている。新幹線の乗客数は、18年3月期は前年比3%増。18年6月に大阪北部地震があったが、その月も17年と同水準の利用者数があった。リニアについては難易度の高い工事から契約を締結し、順次工事に着手している。最優先の課題は一貫して、事故を起こさず、安全を確保することだ。
今は好調でも必ず谷はくるし、逆風も吹く。またリニア建設も大阪延伸まで視野に入れると長く続き、設備投資額もこれから上がっていく。だからこそ、仕事を効率化したり、よりよいサービスを提供したりして、経営体力をつけなくてはいけない。
――新幹線利用者数は伸び続けている。天井は見えているか。
【金子】今は1日47万人が利用しているが、ダイヤはかなり過密。ただ、まだ新幹線の本数を増やす余地はあると思う。リニア開業までは毎年少しずつ乗客数を増やしたい。開業後は、新幹線については東京―大阪を最速で結ぶ「のぞみ」の本数を減らし、逆に多くの駅に停まる「ひかり」や「こだま」を増発したいと思っている。
――18年6月、新幹線内で刃物を持った男が暴れ、乗客3人が死傷する事件が起きた。
【金子】許しがたい事件だった。新幹線を安心して利用してもらうために、新幹線に乗る警備員の数を増やし、犯罪への抑止力を高めたい。また、全乗務員らへの防犯スプレーの配付を完了した。今後は、車内の複数箇所に、防護盾などの装備品を年末までに順次配備していく。
――金子社長の会社員人生の中で、思い入れのある仕事は。
【金子】新幹線鉄道事業本部の管理部長時代に、現場に話を聞きに回った。すると、国鉄時代は多くの現場長が「ルール通りに仕事を進めることが自分の役割」と思っていたのが、分割民営化から10年がたち「もっといい仕事をしたい」と思う人が増えてきたことがわかった。そこでマネジメントの優良事例を発表する「現場マネジメント発表会」を開いた。優良事例を社内で共有することで、現場はいい方向にむかった。発表会は20年後の今でも引き継がれている。
自分の原点はここにあると思っている。社員の本来持つ力を発揮させ、それを統合する。鉄道会社はヒット商品を次々生み出す会社ではない。安全やサービスを地道に磨き続ける仕事で、その力を社員に発揮させるのが私の役割だと思っている。
1 出身高校
富山県立富山高等高校
2 長く在籍した部門
人事部
3 最近読んだ本
『失敗の科学』
4 座右の銘
「心配な時は、もっと、しっかり準備しよう」と心がけている
5 趣味
読書
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(東海旅客鉄道社長 金子 慎 構成=鈴木聖也 撮影=原 貴彦 写真=iStock.com)