2018年のインディカーシリーズは全17戦。早くも第13戦が、オハイオ州コロンバスの北にあるミッドオハイオスポーツカーコースで開催された。そのレースの正式名称は「ホンダ・インディ200アット・ミッドオハイオ」。30年以上もホンダ車を作ってきたメアリーズビル工場に近いことから、ホンダとこのコースは深く連携している。

 ホンダ車を使ったドライビングスクールも運営。もう10年以上も前から、ティーンエイジャーに向け、二輪、四輪を安全に楽しく運転するためのコースもスタートさせている。工場周辺にはサプライヤー企業も多く、今年のレースには11000人以上のホンダ関係者が集まった。天気も上々、レース内容もエキサイティングで大いに盛り上がった。


ミッドオハイオで優勝したアレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)

 勝ったのはアレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)。2.258マイルのコースを90周して争われるレースで、ロッシはポールポジションからトップを守ると、ライバル勢が3ストップ作戦を採用するなか、ただひとり2ストップを選んだが、燃費で苦しむどころか、逆にライバル勢を驚かせる目覚ましいスピードを保ち続けてゴールまで突っ走った。

 ロッシはホンダ・インディV6ツインターボの燃費をセーブするために、逆にアグレッシブに走った。コーナリングスピードを速く保つのが狙いだ。高度なテクニック、集中力を途切れさせない体力と精神力、そして卓越したマシンコントロール。すべてが揃っていなければ、こんな走りはできない。26歳にしては非常に完成度が高いドライバーだ。

 2位でゴールしたのはロバート・ウィッケンズ(シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)。カナダ出身のルーキーだが、年齢は29歳。ヨーロッパでフォーミュラカーからドイツのハイパワーツーリングカーまでさまざまなカテゴリーを経験しており、デビューイヤーにして表彰台はすでにこれが4回目となる。初優勝の日は遠くないだろう。

 ミッドオハイオでのウィッケンズは、当初から3ストップ作戦でいくことを決めており、1回目のピットストップを終えるとトップに躍り出た。さらにリードをどんどん広げて2回目のピットストップに。ところが、佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)やトニー・カナーン(AJ・フォイト・レーシング)の後ろにピットアウトすると、彼らを抜くことができずに大幅にタイムロス。タイミングも悪かったが、ハード・コンパウンドのブラックタイヤ用のマシンセットアップの完成度が低かったため、ペースの遅いライバルたちに行く手を阻まれ、ロッシとの終盤の一騎打ちを実現できなかった。

 3位はウィル・パワー(チーム・ペンスキー)。予選は2位だったが、今回はまったく優勝争いに絡めなかった。これにより、ロッシ、ウィッケンズのホンダ勢による1-2フィニッシュが、ホンダにとって第2のホームコースであるミッドオハイオで達成された。

 2週前のホンダ・インディ・トロントでもスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)が優勝。ホンダがタイトルスポンサーとなるレースでホンダエンジンユーザーは2連勝を飾った。ちなみにロッシは今年のロング・ビーチ・ウィナーでもある。彼はホンダのホームレースふたつを同じシーズンに両方制することとなった。

 これでホンダ勢の今シーズンの勝利数は8になった。

 開幕戦のセント・ピーターズバーグでは、セバスチャン・ブルデー(デイル・コイン・レーシング・ウィズ・ヴァッサー・サリヴァン)が勝っただけでなく、ホンダ勢がトップ6を独占。ロングビーチは前述の通りロッシが優勝を果たした。

 シボレーがタイトルスポンサーのデトロイトは、レース1ではディクソンが勝ち、このときもホンダがトップ6を独占。さらにレース2はライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)が優勝と、敵地のレースで連覇して両方を制覇し、第4戦ホンダ・グランプリ・オブ・アラバマで敗れたリベンジを果たした。

 その後、テキサスではディクソンが今季2勝目。アイオワではジェームズ・ヒンチクリフ(シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)が優勝。そして、トロントではディクソンがシーズン3勝目をマークした。

 ホンダ勢はここまでストリートで4勝と強さを見せ、高速オーバルのテキサス、短いオーバルのアイオワでも優勝。そして今回のミッドオハイオで常設ロードコースでの今季初勝利を記録した。

 これに対してシボレー勢は、2016年以来となるインディ500での栄冠獲得に成功。バーバー、インディアナポリスのロードコース、ロードアメリカと、常設ロードコースで強さを発揮して3回の優勝を果たし、さらに1マイルオーバルのフェニックスで優勝している。

 これで今年のマニュファクチャラータイトルは、ホンダが制する可能性が高まってきた。シボレーはパワーアップを実現した分、信頼性が下がっており、パワーとシモン・パジェノー(チーム・ペンスキー)はすでに5基目を使用している。1シーズンを4基で戦い抜くのがルールだから、マニュファクチャラーポイントをスコアする資格がなくなっているのだ。一方のホンダユーザーにはまだ5基目を使っているドライバーはいない。

 シボレーが2012年に復帰して以来、ホンダは一度もマニュファクチャラータイトルを獲得したことがない。ホンダにとってはインディ500優勝が最優先の目標で、次がドライバー部門のチャンピオン。そしてマニュファクチャラー王者、というプライオリティで戦ってきたからだ。

 その結果、2017年までの6シーズンでホンダは4回のインディ500優勝を達成した。今年はシボレーが復帰以来3回目のインディ500優勝を果たしたが、逆に、獲り続けてきたマニュファクチャラータイトルを手放す可能性が高まってきた。

 2018年シーズンの残り4レースは、まずは2.5マイル三角形オーバルのポコノ。続くゲートウェイは全長1.2マイルのオーバル。そして最終2戦はポートランドとソノマという常設ロードコースだ。

 ポコノではインディ500同様、トップパワーが若干高いシボレーエンジンが有利と見られている。しかし、三角形のポコノは最終コーナーがタイトで、ホンダエンジンの特徴である広いパワーバンドがアドバンテージになる可能性も考えられる。

 ショートオーバル、ロードコースでの勝負は、シーズン終盤戦に入ってからは両者ほぼ互角。勝敗を決するポイントは各チームのマシンのセッティング能力とドライバーのスキル、そしてチームの作戦力やピットストップのスピードと確実性だ。

 一方、ドライバー部門のチャンピオン候補の筆頭は、2番手に46点差をつけてトップに立つディクソン。ポイント2番手はロッシ、3番手はシボレーユーザーで昨年度チャンピオンのジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)と続く。最後はこの3人による争いになると見ていいのではないだろうか。

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