独自のビジネスモデルを構築している鎌倉新書の相木社長から話を聞く(写真:Signifiant Style)

社名を見る限り、多くの人は出版社を連想しがちですが、鎌倉新書の主力ビジネスは「いい葬儀」「いいお墓」「いい仏壇」という3つのポータルサイトの運営です。全国3000強の斎場、6000弱の墓地・霊園と提携、5000以上の仏壇店を掲載し、サイト上で見込み客を集めて事業者に紹介し、成約した時点で事業者から手数料収入を得るという独自のビジネスモデルを構築しています。2017年9月から新たに就任された相木代表取締役社長から、今後の戦略などについてお話を伺いました。


当記事はシニフィアンスタイル(Signifiant Style)の提供記事です

鎌倉新書は1984年に、仏壇・仏具業界向けの出版社として創業。1990年に証券会社勤務を経て清水祐孝現代表取締役会長が入社した。2000年からネットビジネスにも進出。2015年12月、東京証券取引所マザーズ市場に上場し、2017年7月に同取引所第一部に市場変更。2018年1月期の売上高は約17億円、営業利益は約4億円。証券コードは6184。

楽天で数々の不振部門を再建後、自ら志願して入社

村上誠典(シニフィアン共同代表。以下、村上):創業者の父から会社を承継し、ネット事業を開拓して業績を大きく拡大させた清水祐孝さん(現在は代表取締役会長)に代わって、昨年9月から代表取締役社長に就任されましたね。てっきりヘッドハンティングされたのだと思い込んでいたのですが、ご自身から入社を希望されたとか。まずは、その経緯についてお聞かせください。

相木孝仁(鎌倉新書社長。以下、相木):楽天では、国内外さまざまな事業のマネジメント経験ができ、職場に対して不満や疑問も全くありませんでしたが、10年という節目を迎え、新しい挑戦をしたいという気持ちが高まっていました。

村上:その中で相木さんは、楽天が苦戦を強いられていた事業の立て直しを次々と任されてきたわけですね。

相木:ええ。たまたま最初に任された部門を上手く軌道に乗せられたことから、その後も難しい舵取りが求められる事業を担当してきました。約10事業、1000億、2000人のマネジメントをさせていただき非常に充実した10年間だったと思っていますが、改めて内省してみると、自分自身の力で世の中になくてはならないイノベーティブなサービスを創り出せていないと感じていました。

そんな折に、目に留まったのが鎌倉新書です。電子書籍の「Kobo」を指揮したこともあって、以前から会社自体は認識していましたが、最近の動きを見て非常に興味深いと思ったのです。社名からは出版社をイメージするものの、中身はまったく違う。そして、世の中にインパクトを与えるビジネスを立ち上げたばかりで、伸びしろがとても大きな会社だという印象を受けました。そこで、自分から清水にアプローチしたわけです。

村上:入社前にイメージしていた会社像と、実際に働いてみての感想との間には何らかのギャップがありましたか?

相木:想像していた以上に、魅力的な人が集まっている会社だと感じましたね。それはスキルセットのみならず、マインドセットにおいても言えることです。企業理念に惹かれて、人のためになりたい、人から学びたいと真摯に思いながら頑張っている社員が多いのです。

ただ、いろいろな意味でまだ磨かれていない部分もあるので、みんなで鍛錬してさらに成長していくことが求められているとも思いました。

村上:現在の主軸事業を立ち上げたという意味では実質的な創業者とも言える清水前社長に対しては、どのような印象を受けたのでしょうか?


相木孝仁(あいき たかひと)/1972年、北海道生まれ。明治大学政治経済学部を卒業してNTTに入社し、通信機器販売事業に従事した後、米国コーネル大学ジョンソンスクールにてMBAを取得後、ベイン・アンド・カンパニーへ入社。カルチュア・コンビニエンス・クラブに移籍してツタヤオンライン事業を担当し、軌道に乗せてからベイン・アンド・カンパニーへ復帰。2007年に楽天に移籍し、グループ傘下となったフュージョン・コミュニケーションズの経営を再建。その後、楽天常務執行役員、Rakuten Kobo, Inc CEO、Viber Media Limited 取締役会長などを歴任し、2017年4月に鎌倉新書へ入社(写真:Signifiant Style)

相木:私はカルチュア・コンビニエンス・クラブの増田宗昭さんや楽天の三木谷浩史さんの下で働いてきましたし、彼らのところに集まってくる個性的なキャラクターの創業経営者たちとも接してきました。

だからというわけではありませんが(笑)、「この人となら長く同じ仕事に取り組んでいけそうだ」と感じました。清水と私は、キャラクターがまったく異なります。清水は新しいことが大好きで、右脳で思考して10手先の手を打っていくタイプです。もちろん、私も新しいことに挑んでいくことも大好きですが、ビジョンを示し、社員の意欲を高め強い組織を作ることが得意です。

村上:キャラクター以外の部分では、どういったところにタッグの組みやすさを感じましたか?

相木:とかく創業者は、「今のビジネスを築き上げた自分が、例え全く新しい事業であっても、会社のことを最もよくわかっている」という思いを抱きがちです。清水は、今のビジネスをさらに10倍、20倍の規模まで成長させられると確信しているものの、それをすべて自分自身でやってのけようとは思っていないのです。

オーナーシップを持ちながら、人を信じて任せるところは任せるスタイルなので、私としても非常に仕事を進めやすいですね。

石材店や仏壇店、葬儀社と利用者をネットでマッチング

村上:御社が展開している事業について、改めて簡単にご説明いただけますでしょうか?

相木:出版ビジネスは売上の1割弱で、メインは3つのネット事業で、規模としてはお墓、葬祭、仏壇の順になっています。3つともビジネスモデルは共通しており、石材店や仏壇店、葬儀社を営む事業者と、それらの利用を考えているご利用者様をマッチングさせるというもの。3つのいずれにおいても、事業者とご利用者様はそれぞれ悩みを抱えていたのが実情です。まず、事業者は特に都市部において、ご利用者様をなかなか見つけられなくて困っています。


(鎌倉新書 平成30年1月期 決算説明資料より)

村上:地方はともかく、都市部では檀家制度も薄れつつありますし、代々にわたって特定の事業者と付き合ってきたという人も少ないでしょうね。

相木:その一方で、ご利用者様のほとんどは葬儀やお墓が初めての経験となりますし、親族の死という心が穏やかではない場面で意思決定を行わなければなりません。そこで、我々はご利用者様に客観的な情報をわかりやすく提供し、優良な事業者を紹介し、事業者からは成約に至った場合のみ手数料を頂戴するという事業を構築したわけです。

お墓の事業規模が最も大きい理由

村上:お墓の事業規模が最も大きいことについては、何らかの戦略があったのでしょうか?

相木:そうですね。かつては意図的に、お墓事業へとリソースを集約させてきました。なぜなら、通夜・葬儀の意思決定が短時間でなされるのに対し、お墓は場所探しから納骨に至るまでの時間が長く、我々がさまざまな方面からお手伝いできる可能性を秘めていたからです。

村上:なるほど。まずはお墓のマッチングにおいて、確固たる基盤を確立することに注力されたわけですね。

相木:葬儀のマッチングを本格的に強化したのは、私が入社してからのことです。マーケット規模はこちらのほうが大きく、お墓事業の道筋が見えてきたのを踏まえて、徹底的に葬祭事業を強化することにしました。さらに直近ではその成果や手法を仏壇事業にも展開し、2018年1月期におきましては、お墓が前年比35%増、葬祭が同32%増、仏壇が同20%増と、成長率がさらなる上昇を示しています。


(鎌倉新書 平成30年1月期 決算説明資料より)

村上:御社の沿革を拝見したところ、ネットビジネスへの進出にはかなり以前から取り組んできたようですね。

相木:実は、「いい葬儀」というサイトを立ち上げたのは2000年で、「いいお墓」と「いい仏壇」についても2003年からサイトの運営を開始しています。最初はしきたりやマナーなどの情報を提供するサイトにすぎなかったのですが、長い時間を費やしながらいろいろと形を変えていき、現在のビジネスが確立されていきました。試行錯誤を続けていく中で、「そんなに情報を豊富に集めているなら、いい葬儀社を教えてください」という声が寄せられ、それに応えて紹介ビジネスへと結びついていったのです。そもそもこのビジネスは、10代をターゲットにゲームを開発するケースなどとは違い、結果が出てくるまでにかなりの時間がかかるものです。当社のサービスを利用なさるご利用者様はもっぱら40代後半〜60代で、おそらくはお亡くなりになった人のお子さんでしょう。最近になって、ようやくこうした世代の間でもインターネットを活用した生活が浸透してきたことも、我々のビジネスの成長へと結びついているようです。


(写真:Signifiant Style)

村上:御社のサービスの浸透度とご利用者様のITリテラシーの向上がちょうど重なってきたわけですね。一方で地域的な戦略については、やはり都市部の開拓を優先してきたのでしょうか?

相木:そうですね。地方の場合は今でも、親類に葬儀社を紹介してもらえるケースも多いでしょうし、差し迫ったニーズは限られているようです。とはいえ、楽天やAmazonのようなeコマースがそうであったように、いずれは都市部と地方におけるニーズのギャップは縮小していくものと思われます。我々もそれを見据えて、徐々に地方の開拓も進めています。

これから成長が本格化するお墓、葬祭、仏壇の3事業

村上:相木さんが指揮を執る前から立ち上げられていたお墓、葬祭、仏壇という既存事業とともに、新規事業も積極的に開拓していく方針だとうかがっています。そのうち、まず既存事業については、どのような部分に成長余地があるとお考えですか?

相木:現状においては、墓地・霊園、葬儀社や仏壇店を探しているご利用者様をネット上で集客し、意向に沿った事業者とマッチングしているのが我々のビジネスです。しかし、たとえば最近の墓地・霊園のケースですと、我々が現地見学の予約を入れるところまでお手伝いするというアプローチもはじめています。従来のように事業者が直接アポイントを入れようとすると、ご利用者様はどうしても身構えてしまいがちです。その点、第三者である当社であれば、安心して見学の予約をしていただけます。

村上:なるほど。御社はあくまで第三者的な立場だから、ご利用者様も比較的気軽に見学の予約を入れやすいわけですね。

相木:その通りです。事業者が希望すれば、いくつか見学していただいた後で我々がご利用者様から感想を伺い、最終決定のアシストを行うことも可能です。そうすることでご案内後の成約率が向上すれば、事業者の満足度を高める結果につながりますし、我々としても今まで以上の拡大が見込めるようになるでしょう。

村上:一見する限り、御社のビジネスは事業者から手数料収入を得ているB to Bであって B to Cではありませんが、Cとも直接深く関わっていくことが大きな意味を持っているという話なのですね。

相木:ええ。我々はご利用者様からはお金をいただいておらず、ややもすると事業者のほうに目を向けがちになりますが、我々はつねにC(ご利用者様)側の視点を忘れないように強く意識しています。

供養に関する悩みは尽きぬが、相談先がないのが実情

村上:非常にセンシティブなテーマを取り扱っているビジネスであるだけに、事業者側もC側の視点を持たないと上手くいきませんよね。もともと御社が今のビジネスを展開する前から、この分野ではBとCの間に丁寧な関係性というものが存在していたのでしょうか?

相木:いろいろな事例があるので、一概には言えません。ただ、メディアでよく取り上げられている議論はちょっと偏りすぎていると個人的には感じています。たとえば「今までは料金体系がブラックボックス化されたグレーな世界だったが、ついに低価格で定額制の葬儀サービスが登場した」という話題が注目を集めていることなどです。そういったサービスに対するニーズが存在していることはまったく否定しませんし、シンプルでわかりやすく、訴求力もあると思います。ただ、その一方で生前にお付き合いが広かった故人を弔うというケースでは、相応の規模と予算で葬儀を行う方が、ご遺族が満足する形の葬儀になるはずです。結局、個々のご利用者様のニーズに応じて、適切にマッチングのお手伝いをすることが我々の使命だと思っているのです。

村上:Amazonでも僧侶の手配ができる時代になっているからといって、便利さや価格の安さだけで業界全体の課題が解決するわけではないということですね。葬儀やお墓、その後の供養に関しては、明らかにノウハウを得る機会が少なく、利用者も困っています。だからこそ、C側へ付加価値を提供していくように努めなければ、業界全体がフェアな状態になっていかないのでしょう。

相木:ご利用者の皆様は悩みだらけであるにもかかわらず、誰に相談すればいいのかもわからない状況にあります。その一方で、ほとんどの石材店や葬儀社はご利用者様のために心底から親身になって対応しています。我々としては、こうしたBとCの両方を手厚くサポートしていきたいと思っています。

村上:2018年1月期決算発表のタイミングで、36期(2019年1月期)〜37期(2020年1月期)にかけての中期経営計画を掲げましたね。ここまでの話をうかがう限り、極めて自然な流れで中期経営計画へと発展していったようにも見受けられるのですが、その点はいかがなのでしょうか?


(鎌倉新書 平成30年1月期 決算説明資料より)


(鎌倉新書 平成30年1月期 決算説明資料より)


(鎌倉新書 平成30年1月期 決算説明資料より)

相木:入社してから私が問題提起した内容については、おそらく既存のメンバーたちが心の内で感じていたことと重なる部分が多いはずです。もちろん、様々な議論が飛び交いましたが、何度も協議を重ねたうえで、2020年1月期には、あくまで長期目標の通過点として2017年6月発行の有償ストックオプション行使条件「営業利益6.5億円」を超える「7億円をめざす」という計画がまとまりました。

新規事業の開拓

村上:中期経営計画では主力であるウェブ事業をさらに成長させていくことに加えて、「未来の事業への投資を行う」と明言されていましたね。すでに要介護・要支援のペットまで世話するペットシッターサービスやシニア向けパソコン教室にも取り組んでいるようですが、今後はさらに手を広げていくのでしょうか?


(鎌倉新書 平成30年1月期 決算説明資料より)

相木:そうです。もちろん、領域を広げれば広げるほどそれぞれに投下できるリソースが限られてくるのは確かで、社内でも様々な意見が出ましたし、投資家からもその点についてよく質問されます。

村上:なるほど。わたしの理解では、御社の成長を支える基盤は高齢社会そのものであり、ターゲットがシニアだけにとどまらず、その家族にも向けられているのが大きな特徴です。シニアを支える家族のことを最も理解しているからこそ、供養サービス以外の新規事業の開拓が必要だと考えているわけですね。

相木:ええ。新規事業もネットを中心とした展開が前提ではありますが、一部ではリアルのサービスも含めて介護や医療、金融の分野に手を広げたいと考えています。無論、いくつかの介護施設を運営したからといって、世の中を変えられるものではないことは重々承知しています。現状の我々の規模でビジネスを展開するには、やはりネットにおけるマーケティングに特化しなければなりません。ただ、ネットだけでは70代、80代の大半の方に利用していただくのは困難ですから、リアルのサービスも不可欠となってくるでしょう。

村上:これまで御社のネット3事業は、非常に利益率が高いことが特徴的でした。しかし、特性の異なる新事業に取り組んでいけば、先行投資している部門と稼いでいる部門が混在し、全体的な利益率はおのずと低下していくのではないでしょうか?

相木:財務面や利益率、事業拡大のバランスについては、ジレンマが生じるのが宿命といいますか、非常に繊細な舵取りを求められるのは間違いないことでしょうね。ただ、我々のビジネスは世の中に対して「終活No.1」と宣言するには、あまりにも規模が小さすぎると思います。今までのペースの成長に甘んじていると、売上を100億円の大台に乗せるまでにはかなりの歳月を要することになるでしょう。一刻も早く100億円、200億円といった規模まで拡大させるためには、新規事業へのチャレンジが不可欠となってきます。

村上:東証1部への移籍に当たって公募増資を実施して現金も資本も相当増えて、B/S(バランスシート)が1年前とはガラリと変わっています。とはいえ、今後は採用に投資、M&Aを積極化していくとなれば、さらにB/Sを積み上げていく必要が出てきそうですね。

相木:そうですね。今年か来年には、自分たちよりもサイズの大きな企業をM&Aで獲得することもありえると思っています。特に何も投資しないのであれば、「どうして増資したの?」と問われることにもなりますし、もっとアグレッシブに攻めていくべき情勢にあるのは間違いないでしょう。

優秀な人材の獲得に注力

村上:2018年1月期決算説明資料では、「35期、36期に向けた既存・新規事業の成長戦略完遂の体制構築完了」と宣言されていましたね。体制固めについてはかなり自信をお持ちなのではないかと勝手に解釈したのですが、いかがでしょうか?


(鎌倉新書 平成30年1月期 決算説明資料より)

相木:もちろん、まだまだ不十分なところもありますが、2017年1月期の第4四半期時点で51名だった正社員を2018年の同期には77名まで増やしているように、優秀な人材の獲得を積極的に進めてきました。その結果、「これ以上、すごい人材がここに集まってきたら窮屈だから、家のお風呂のサイズ(=事業規模)をもっと大きくして大浴場かプール並みにしてほしい」という声が社内から出てくるようになりました。

村上:贅沢な悩みですね。では、その精鋭たちで新規事業についてどのように知恵を絞っているのでしょうか?

相木:普通の人が聞けば「なるほどね!」と思えるサービスに、さらにひとひねり加えた内容のものを作り出そうとしています。当社の清水は右脳で思考して新しいことにどんどん挑戦していくタイプですが、彼の先見性やクリエイティビティを活用し、組織力・徹底力といった私自身の持ち味を加えて、スケーラブルな新規事業を立ち上げていきたいです。

村上:新規事業については、どれくらいのスピード感で取り組んでいく方針ですか?

相木:今、社内で公言しているのは、「1四半期に1つ」というペースですね。社内で構築中のものに加えて、M&Aの候補として外で探しているのもあります。すべてが当たるわけではないでしょうが、数を増やしながら改善を重ねていきたいと考えています。

村上:短い時間軸で黒字化できるかどうかが見極めのポイントとなってくるわけですね。しかしながら、それだけのペースで進めていくと、2年後には8つとか10といった数まで増えているかもしれない。となれば、全事業のポートフォリオ(内訳やバランス)についてコントロールを図っていく必要も出てきそうですね。

相木:人生における終末期に近いことに関わってくるサービスとアクティブシニアに向けたサービスのそれぞれに、バランスよく取り組んでいきたいと考えています。

村上:その点に関しても、中期経営計画においてもう1つのキーワードとなっている「会社横断の開発室」の設置が重要な意味を帯びそうですね。

相木:かつては事業ごとにエンジニアがポツポツと点在していただけにすぎませんでした。サービスの内容やターゲットとしている世代からすれば、最先端のテクノロジーはあまり必要とされていないのも事実ではあるものの、あまりにもエンジニアが少なかったのは確かです。

「人が資産」と公言する会社

村上:御社の収益構造を見ていると、開発チームの人員が少ない割に、コストの半分程度を人件費が占めているのがとても特徴的ですね。日頃から「人が資産だ」と公言されていて、決算説明資料の表紙にも社員が登場しているのが極めて斬新でした。


(鎌倉新書 平成30年1月期 決算説明資料より)

相木:表紙については社内でも意見が分かれて、「それをやりますか!?」というリアクションがあったのも確かです。

村上:いえいえ。非常に御社らしいといいますか、個人的には、ぜひ今後の決算においても定番化していただきたいと思いました(笑)。ところで、これまで数々の企業を指揮してきた相木さんですが、上場企業のトップとなるのは初めてで、資本市場との対話も求められることになりましたね。やはり、今までとは違うと感じられているのでしょうか?

相木:非常に様々なステークホルダー(利害関係者)がいるのだなということを実感しましたし、これからさらにその思いが強くなるのでしょうね。堅調に成長しているビジネスをさらに成長させる場合と、厳しい状況に陥ったビジネスを建て直す場合とでは、戦略の考え方・見え方が大きく異なります。着任当初からこんなに上手くいっているビジネスに携わるのは、自分としては初めての経験かもしれません。今は大規模ではありませんが、しっかりとしている会社をさらに10倍規模に拡大していくというのが私にとって楽しみなチャレンジですね。

利用者が困っていることをとことん知る

村上:中期経営計画では、「圧倒的なデータ」でより革新的なサービスを提供するとも表現されていましたね。それは、いったいどのようなデータなのでしょうか?

相木:データそのものについては、当社だけに限らず、すでに世の中のあちこちで集積されています。しかしながら、当社内では我々が対峙しているご利用者様そのものの分析があまり進んでいなかったのが実情です。供養のみならず高齢者とそのご家族のお困りごと全般を解決できる会社を目指します。

村上:まずは御社の利用者が困っていることをとことん知る、という話なのですね。


(写真:Signifiant Style)

相木:そうです。それに加えて、当社の社員全員に、身近な友人から「自分の親の死期が迫っているけど、どうすればいい?」と相談された際に、いろいろなパターンでアドバイスできる知識やスキルを身につけてほしいと考えています。そこに向けて、体制を整えていきたいと考えています。

村上:「人が資産」と公言されている会社が「人の命」に大きく関わっていくことの意義について、深く感銘を受けました。本日はお忙しい中、本当にありがとうございます。

(ライター:大西洋平)