SmartHR社の「SmartHR」やネオキャリア社の「jinjer」では、これまで社員が提出した情報を人事部門で入力する場合が多かったが、クラウドの活用によって社員が直接パソコンやスマホなどの端末から入力することが可能になった。これによって入力ミスも減少して人事担当者の業務が大幅に軽減されている。この情報に基づいて社会保険手続きに必要な申請書類は自動的に作成され、電子申請も可能だ。スマホでの入力が可能なことから、店舗が多い会社やアルバイトが多い会社では情報を現場で入力できるため労務にかかわる手間が大幅に簡素化されている。 勤怠管理では、個人の残業時間だけでなく部署ごとの残業の傾向がリアルタイムに分析される。人事担当者だけでなく現場マネジャーが仕事の改善を即座に指示することができるなど、マネジメントにも活用されて全社の生産性向上に役立っている。 チームスピリット社の「TeamSpirit」は、売上情報や経費精算、労務管理情報とを連携することによって、部門を構成する社員一人一人やチームのパフォーマンスを一目で把握できる。これまでは人事部門だけの情報だった労務管理情報が、経営情報として経営層から部門マネジャーまで様々なマネジメント層が活用できるようになっている。さらに働き方改革で注目されている36協定や残業時間の上限管理、勤務間インターバルなどを設定すればリアルタイムで実態を把握できるなど、マネジャー層はたえず最新の情報を把握して手を打つことができる。 タレントマネジメントでは、人事評価や実績、経験・スキルなどの社員情報から適正な人材の配置・登用・育成をしていくための情報を一元的に管理できるようになった。カオナビ社の「カオナビ」は個人の評価や実績、勤務状況などを社員の顔写真とともに表示することができ、これまで名前だけでは思い浮かばなかった人物評価を経営陣が直観的に把握できるようにした。サムトータル・システムズ社の「SumTotal TalentExpansion Suite」は、タレントマネジメントと会社が用意したeラーニング教材とが結びついており、目標達成に必要なスキルやキャリア開発を社員自ら効率的に行うことができる。インフォテクノスコンサルティング社の「Rosic」は、将来の要員や人件費のシミュレーションなどの機能を強化して人事のKPIマネジメントをサポートする。 人材の適正な配置・登用・育成は、グローバル企業でも中小ベンチャー企業でも課題であり、従業員情報は経営情報として重要になっている。正社員からアルバイトまで様々なヒューマンリソースを把握して、その能力を活かし、高めていくことが企業成長のためには必須である。 教育へのテクノロジーの活用は、Edテック(エデュケーション×テクノロジー)といわれる。社員教育でのこれまでのeラーニングはパソコンの前に座って学習するしかなかったが、スマホやタブレットの活用で場所や時間の制約がなくなり、自宅や通勤電車の中でも手軽に学習の機会をつくれるようになっている。チェンジ社の「CHANGE UP」は、スマホにも対応する教育アプリ教材になっており、従業員自らが手軽に学習を始められるように工夫を凝らしている。特に若手社員は受験勉強からスマホに慣れ親しんでおり、抵抗なく学習を進められる。最近は自宅にパソコンがない社員やアルバイトも多く、スマホを活用した教育・研修は今後さらに本格化していくだろう。 若年労働者の減少による人手不足、働き方改革による生産性向上など、働き方の変化とともに組織のあり方も変えていかなければならない。従業員を定着させることで人手不足を解消し、社員がパフォーマンスを発揮できる働きやすい環境づくりに取り組む必要がある。