【プロ野球】なぜ守備に不安の高山俊(阪神)がセンターに。外野陣のシャッフルからセンターラインの将来像が見えた
ペナントレース中に外野の布陣が「1度にシャッフル」され、それぞれのポジションが変わったことは、これまであまり記憶がない。
その異例ともいえるシャッフルが行われたのは、6月6日の阪神対オリックスでのこと。阪神のスタメン発表の際に「1番、ライト糸井」、「3番、センター高山」、「4番、レフト福留」とコールされ、スタンドのファンを驚かせた。
これはただのシャッフルではない。阪神のチーム方針が大きく動いたことを示すものだ、と筆者は睨んでいる。
なぜ、この時期のシャッフルしたのだろうか?
阪神は開幕から広島に肉薄し、一時は首位に立った。その原動力は、FA加入の糸井嘉男、最年長の福留孝介、復活した鳥谷敬のベテラントリオによるところが大きい。
しかし、交流戦に入り、糸井は左太もも裏を痛め、万全の状態ではない。福留も疲労からか調子は下降気味だ。
そこで首脳陣は、ここぞとばかりに外野陣のシャッフルに動いた。
ただの一過性のものではない今回のシャッフル。将来を見据えた阪神のチーム方針をセンターラインの構築という観点から迫る。
※野球の見方が変わるスマホマガジンでニュースやコラムが読み放題!
■守備力に不安要素を残す高山をあえて中堅起用今回のシャッフルで注目したいのは、中堅に高山俊を配置したことだ。
中堅といえば、外野の要。守備隊形のセンターラインを担う重要なポジションだ。
ここに、あえて守備に不安要素を持つ高山を配置した。この采配は苦渋の決断というより、将来の伸びしろに期待した感が強い。
2年目のジンクスなのか、今シーズンの高山は持ち前の打撃で好不調の波が大きい。糸井、福留がここにきて不調気味のため3番に起用されているものの、まだまだ絶対的な信頼を得てのクリーンアップではない。
また、中堅の守備力だけを見れば、中谷将大が上だ。
高山の中堅起用は、「高山こそ将来の主軸となる選手」と首脳陣が認めたと解することもできる。
■経験のない糸原をあえて遊撃で起用期待の高さの現れでは、センターラインを担う内野の要・遊撃手に糸原健斗を積極的に起用している采配にも見受けられる。ここにも先を見たチーム編成の意図を感じる。
アマチュア時代の糸原には遊撃手の経験がほとんどない。しかし、糸原をあえて難しい遊撃手で起用し、リスクを犯してまで1軍の実戦で鍛錬を積ませている。首脳陣のセンターライン構築への本気度を感じるのだ。
将来的には、遊撃手を争う糸原と北條史也を天秤にかけ、片方を二塁手もしくは三塁手にコンバートし、鉄壁な内野を作る意図も含んでいるのだろう。
■強肩で正捕手の座をつかもうとしている梅野また、センターラインにおける重要な扇の要・捕手は、梅野隆太郎が開幕からほぼレギュラーの座をキープしている。
打撃は打率.181と期待に応えているとはお世辞にも言えないが、リードで味方投手を盛り立て、盗塁阻止率はリーグトップ。守備面での首脳陣からの信頼感は厚みを増している。
オールスターゲームの中間発表では、セ・リーグの捕手部門でファン投票数が20万票を突破。小林誠司(巨人)をかわし、現時点でトップを走っている(6月14現在)。
開幕から調子が上がらないとはいえ、WBCで大活躍をみせた小林に勝る投票数からは、強肩で投手をアシストする梅野への期待の高さが伺える。
■優勝争いをしながらの若手の育成あらためて言うまでもなく、センターラインがしっかりしているチームは強い。広島はその典型で、中堅・丸佳浩、二塁・菊池涼、遊撃・田中広輔、そして捕手は會沢翼と石原慶幸の併用だが、メンバーが固っている。
広島には及ばないものの、阪神も将来を見据えたセンターラインの布陣で徐々に態勢を整えつつある。
「優勝争いをしながらの若手選手の育成」
人気球団ゆえに勝つことが至上命題のなか、阪神はいまもっとも難しい課題に挑戦しようとしている。
まろ麻呂企業コンサルタントに携わった経験を活かし、子供のころから愛してやまない野球を、鋭い視点と深い洞察力で見つめる。「野球をよりわかりやすく、より面白く観るには!」をモットーに、日々書き綴っている。【関連記事】