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●内装イメージは空港や滑走路!
スルガ銀行と全日本空輸(以下 ANA)は10月21日、「スルガ銀行 ANA支店 Financial Center」を東京・日本橋にオープンした。このレポートでは、「旅」と「金融」のコラボレーションにより生まれた新ラウンジの様子と同行口座の使用レビューをお伝えする。

○そもそも「スルガ銀行 ANA支店」とは?

「スルガ銀行 ANA支店」は2004年4月、「スマートに貯めよう。スマートに旅しよう。」をコンセプトに始まったスルガ銀行のインターネット支店だ。

「ANA支店」の名の通り、同支店最大の特徴は「取り引きでANAマイルが貯められる」ということ。例えば給与口座への設定で月50マイル、固定電話、携帯電話の料金引き落としで毎月10マイル/件が付与される。

また2015年1月には、銀行キャッシュカード、デビットカード、ANAマイレージカードが一体になった「ANA マイレージクラブ Financial Pass Visa デビットカード」が発行開始され、Visaデビットで年間100万円以上200万円未満の買い物をすると3,000マイルがもらえるようになっている。

○2015年1月オープンのラウンジをリニューアル

元をたどれば、同行は2015年1月に「スルガ銀行 ANA 支店 Financial Space」を開設しており、リニューアルオープンする「スルガ銀行 ANA 支店 Financial Center」はその"進化系"といえるラウンジスペースだ。

内装はウォルナットをベースにゴールドのアクセントとANAのカラーであるブルーがマッチしており、重厚で高級感がある。プレミアムクラス利用者だけが入れる空港ラウンジが突然日本橋に登場したかのような印象だ。なお、庶民の筆者はANAのプレミアムクラスに乗ったことがないので、上記の感想は全て想像である。

スルガ銀行ANA支店 Business Planning Manager 鈴木謙吾氏によると、「内装は空港や滑走路、ANAのラウンジをイメージしている」そう。大画面デジタルサイネージには、日本橋から空港へ、そしてそのまま旅へ出かけていくイメージを演出したグラフィック映像も展開されている。

また、館内にはANAが導入予定の日本初国産ジェット旅客機「MRJ」(三菱リージョナルジェット)の大型模型のほか、カウンターやデスクなどいたるところに飛行機模型が並ぶ。

そんなラウンジでとりわけ大きな存在感を放つのが、飛行機模型約50機を配置したモデルプレーン・モニュメントだ。

セレモニーに参加したANA取締役常務執行役員の志岐隆史氏も「ラウンジには機体をたくさん展示してもらっているが、モニュメントにはジャンボやマリンジャンボJr.など、今はもう飛んでいない機体もならんでいて感慨深い」と満足げな様子だった。

ラウンジでは「ANA マイレージクラブ Financial Pass Visa デビットカード」を最短30分で発行するほか、旅やお金に関するテーマのセミナーやイベントの開催、金融に関するカウンセリングなどが行われる予定だ。

○インターネット支店でなぜラウンジ?

スルガ銀行代表取締役社長の米山明広氏とANAの志岐氏はラウンジ開設の経緯について、会見で次のように語った。

「スルガ銀行はリテールに力を入れ、お客様との接点を持つことに気を使ってきた。従来の支店は預金やローンを提案するだけのものであったが、これからはそれだけでは足りない。ライフスタイルにあった提案をする必要が出てくる。そうした経緯で、ANA支店が誕生した」(スルガ銀行 米山氏)

「2004年にネット上でオープンした当時は、ANAの社員も『スルガ銀行は変わったことするな』と思っていた。それから10年、昨年の1月に1階にスルガ銀行 ANA支店リアル店舗(スルガ銀行 ANA 支店 Financial Space)がオープンし、今年に入って、すばらしい形でグレードアップしてもらった」(ANA 志岐氏)

「ANA支店は、我が国を代表するトップブランドである全日本空輸の協力で開設することができた。お客様にご利用いただくことで、お客様同士のエンゲージメント、コミュニティを形成していきたいと考えている」(スルガ銀行 米山氏)

●ところで実際「ANA支店」ってどうなの? - 使用中の筆者がレビュー
ここからは個人的な話になるが、実は筆者も今年の5月、スルガ銀行ANA支店に口座を開設して給与口座として使っている。もちろん「ANA マイレージクラブ Financial Pass Visa デビットカード」も発行済みである。

○ANA支店ユーザーである著者が勝手にレビュー

ANA支店に口座を開設してからの約半年の正直な感想は「使い勝手はそこそこ。がっつりマイルが貯まるわけではないが、持っているだけでも得」というもの。なぜそのように感じたのか、同カード及び口座の使用感とメリット・デメリットを簡単に紹介しよう。

○デメリット:マイルはもらえるが還元率はあまり良くない

ANA陸マイラー必携のカードといえば、高還元率が特徴の「ANA To Me CARD PASMO JCB(ソラチカカード)」だ。年会費が2,000円(初年度は無料)かかるのだが、東京メトロで通勤する人であればとにかくオトクな1枚である。

一方、「ANA マイレージクラブ Financial Pass Visa デビットカード」は100万円利用で3,000マイル付与。還元率から考えると、同カードをメインカードとするのは、ANAマイルを効率よく貯めたい人には向いていない。そもそも同カードに限らずデビットカードはクレジットカードに比べてポイント還元率が低い事が多いのだ。

しかし、給与口座や電話料金引き落とし口座に設定するだけで勝手にANAマイルが貯まる銀行は、今のところスルガ銀行 ANA支店のほかにはない(2016年10月21日時点)。しかも、同カードは年会費無料。つまり、持っていても赤字になることはない。

よって、マイル稼ぎを最重視するユーザーなら、還元率の高いソラチカカードなどのクレジットカードをメインにしてがっつり貯め、ANA支店を給与口座や電話引き落とし口座にしてコツコツ貯める"二重取り"が1番お得な使い方だと言えるだろう。

そして、「クレジットカードの後払いが嫌!」「ついカードを使いすぎてしまう!」「だけどマイルは貯めたい」という人には、このデビットカードは1番のお供になってくれるはずだ。

実際、スルガ銀行 鈴木氏にマイル付与とユーザーの傾向を聞いたところ、「海外出張が多い方や20代女性が中心。デビットカードは審査がないので、リタイアした人(お金はあるが退職しているためクレジットカードの審査が通らない)の申し込みも多い。ANAマイルが貯まる唯一のデビットカードという立ち位置で年会費も無料なので、還元率の高いレジットカードと競合する、というよりは併用を考えていただければ」とのことだった。

○メリット:海外旅行で使いやすい

同カードは、"ANA"のイメージ通り、海外での使い勝手が良い。海外旅行傷害保険は無料で自動附帯だし、Visa加盟店で買い物もできる。

「渡航前に口座にお金を入れておけば、両替することなくカードで買い物ができ、ATMで現金も引き出せる。けがをしたときの保険やカードで購入した商品の破損や盗難補償も充実しているので、海外出張や旅行、留学に便利な1枚」(スルガ銀行 鈴木氏)

鈴木氏が述べるように、海外で現金が必要になった場合は、ATMで自身の口座から現地通貨を引き出すことも可能だ。キャッシング機能付きクレジットカードでも海外ATMから現地通貨を引き出すことができるのだが、キャッシング日から返済日までの日数分、利息が発生する。一方、デビットカードは自身の口座からお金を引き出す仕組みなので、利息はかからない。実際に旅行先で使ったが、特にトラブルなく現金を手にすることができた。

ただし、同カードの場合、1回の利用ごとに216円(税込み)の手数料と海外取り引き事務手数料3.0%がかかり、更に一部ATMでは追加の手数料が必要なところもある。海外ATMで現金を引き出すときは、デビットカードの手数料とクレジットカードキャッシングの利息、どちらがお得かをしっかり計算するべきだろう。

また、海外で使用することを考えると、以前に取材したソニー銀行の「Sony Bank WALLET」のように「外貨預金口座から直接決済」ができると更にお得に使えそうだが、残念ながらANA支店ではまだ実装されていない。ただ、鈴木氏によると「検討中」とのことなので、今後の導入に期待したい。

○メリット&デメリット:手数料無料で使えるATMが多いが……

スルガ銀行の本拠地は静岡県。都内在住の人にとっては使いづらいのでは? と思うかもしれないが、都内に数店舗支店があるほか、提携金融機関のATMが利用可能なので心配はいらない。すべてのユーザー(STAGE01)は、スルガ銀行、セブン銀行、E-net、タウンネットワークサービス、ゆうちょ銀行、イオン銀行のATMを出金手数料無料で利用できる。

ただし「出金手数料無料時間」には注意が必要だ。スルガ銀行、セブン銀行、E-net、タウンネットワークサービスのATMは平日7時〜18時と土曜日の9時〜14時(STAGE01)のみが手数料無料。それ以外は108円〜216円の手数料が必要となる。ゆうちょ銀行の出金手数料無料時間帯は平日7時〜18時、土曜日は9時〜14時、イオン銀行は平日8時〜18時、土曜日8時〜14時となっている。

社会人が急に現金を必要とするのは、仕事終わりの飲み会や休日遊びに出かけるときが多い。スルガ銀行に乗り換える前に給与口座にしていた三菱東京UFJ銀行の場合、平日・土日祝ともに8時45分〜21時は同行ATM利用手数料が無料(同行キャッシュカード利用)だったので、残業した後にお金をおろしに行っても間に合ったのだが、18時までとなるとちょっと厳しい。手持ちがなくて慌ててコンビニに駆け込み、手数料108円を支払うたびに、「夜や週末にATMが無料で使えないのは使い勝手が悪いかもなあ……」と思ってしまうのである。

よって、「平日の昼にしか引き出しをしない!」と決めている人はいいが、急に現金が必要になることが多い人は、無料時間が長い銀行口座との併用を考えた方が良いかもしれない。

※ATM出金手数料無料条件はステージが上がるごとに拡大する。詳しくは、同行HPで確認して欲しい。

○まとめ

上記のほか、デビットカードとキャッシュカード、マイレージカードが一体になっているので財布が少し薄くなるというメリットもあった(ミニマリストの人にはすごくいいかも!)。

言いたい放題言ってしまったが、ANAマイルを貯めている人なら持って損はない同口座。前ページで紹介した日本橋の「スルガ銀行 ANA支店 Financial Center」では最短30分で「ANA マイレージクラブ Financial Pass Visa デビットカード」も発行可能なので、興味がある人は足を運んでみてはいかがだろうか。

(関根千尋)