過日のシンガポール戦から、日本代表に日本人スタッフがいなくなっている。これまでコーチを務めてきた手倉森誠U−22日本代表監督が、代表チームに帯同しなくなったからだ。

 ヴァイッド・ハリルホジッチ監督にすれば、来年1月に迫ったリオ五輪最終予選に専念してもらう意図なのだろう。それにしても、タイミングとしては中途半端だ。

 リオ五輪出場の可能性拡大を日本サッカー界の共通認識とするならば、手倉森監督にはもっと早くU−22日本代表の活動に専念してもらうべきだった。

 日本代表に帯同しないことで出来たことは、実は少ないかもしれない。それでも、天皇杯やJ2リーグの視察はできたはずである。選手選考の確度は上げられただろうし、監督の視察によって選手のモチベーションを刺激することもできた。招集できる選手に限りがあったとしても、ミニキャンプなどの実施を探れたかもしれない。

 来年1月のリオ五輪アジア最終予選を突破すれば、五輪本大会が終了するまで手倉森監督は日本代表に関われない公算が強い。次のW杯予選が行われる来年3月から代表コーチに復帰してもらうのは、おかしな話だからである。

 日本人スタッフを加えないままで、代表チームの活動を続けていいものだろうか。霜田正浩技術委員長はチームに帯同しているものの、本来は現場の仕事ぶりを見極める立場だ。スタッフのひとりであってはいけない。

 ハリルホジッチ監督に日本代表を預けているのは、彼の経験と実績を評価してのことである。だとすれば、その経験と実績が何によって裏付けられているのかを、日本サッカーの共有財産とするべきである。結果が出ればOKではない。

 そのためにも、日本人コーチは必要だ。トレーニングメニューの立案に加わり、ミーティングに参加し、ゲームを戦い、選手の意見を吸い上げることで、彼の優れている点を肌で感じる人材がいなければならない。

 10月にアウェイでシリアを下し、11月12日のシンガポール戦で勝点3を積み上げことで、現在のチームは落ち着いた雰囲気に包まれている。だが、チームには浮き沈みがあるものだ。停滞期に陥ったチームを下支えするのは、ハリルホジッチ監督でも、彼が連れてきた外国人スタッフでもない。通訳を介さずにコミュニケーションを取ることができ、態度や言葉から微妙なニュアンスを汲み取れる日本人コーチである。この仕事は、キャプテンに任せてはいけない。

 チームが困難に直面する前に、人選を進めておくべきだ。ロシアW杯出場を逃さないために必要な、リスクマネジメントのひとつである。