投石への悪用も なぜ線路には石が敷かれているのか
運行トラブルに腹を立て、線路の石を列車に投げた男性が逮捕されました。あってはならない行為ですが、そもそもなぜ線路には石が敷いてあるのでしょうか。この石、“暴動”に関係することもあります。
クッションの役割を果たす石
2015年11月12日(木)、東海道本線で発生した運行トラブルに腹を立て、駅間で停車中の列車から線路へ下り、石を列車に向けて投げた男性が逮捕されるという事件がありました。
線路の石があってはならない使われ方をされてしまいましたが、なぜそもそも、線路に石が敷いてあるのでしょうか。
線路へ敷かれた石(バラスト)は列車通過の衝撃を吸収する働きがあり、簡単にいえばクッションのような役割です。また騒音や振動を緩和する、水はけが良い、建設費が安いというメリットも存在。この「バラスト軌道」は古くから多くの路線で採用されてきました。
ただバラスト軌道の区間では、もちろんそのバラスト軌道自体が悪いわけではありませんが、その石を使って今回のような投石事件、またレール上への置き石がしばしば起きるのも事実です。また“暴動”に関係する話もあります。
新幹線を遅れさせる線路の石
阪堺電気軌道(大阪府)の新今宮駅前停留所(旧・南霞町停留所)は、1990(平成2)年に起きた暴動で駅舎が焼失。こうした経緯から、暴動で投石に使われないように、停留所付近へはバラストを敷いていないといいます。
東海道新幹線が雪で遅れることにも、バラストは関係しています。
新幹線が高速で通過した際に舞い上がった雪は、列車に付着して固まり、氷の塊になります。これをそのままにしておくと、積雪区間を過ぎたところで落下。線路のバラストを跳ね上げ、車両破損などの被害が起きる可能性があります。
そのため東海道新幹線は、舞い上がる雪の量を減らして付着を抑えるため、しばしば列車の速度制限を行います。また合わせて名古屋駅などで、列車に付着した雪の除去作業などを実施。東海道新幹線の雪による遅れには、バラストの存在が大きく関係しているのです。
“最初に誕生した新幹線”で得られたこの教訓などから、のちに建設された積雪地を走る東北・上越新幹線では、バラスト軌道ではなくコンクリートを使うスラブ軌道が採用されました。
この「スラブ軌道」は保守が容易で、軌道の狂いが少ないことなどが特長です。ただ、バラスト軌道と比べて列車通過時の騒音や振動が大きくなりやすく、コストも高くなります。