『悪将軍暗殺』(武川 佑) 武川佑の長編デビュー作『虎の牙』を読んだ時の衝撃は、今もよく覚えている。 武田信玄の父、信虎の弟でありながらその生涯はほとんどが謎に包まれ、世間的にもほぼ無名な勝沼信友を主人公に、山の民、山岳信仰といった『もののけ姫』的オカルト風味も交えて戦国中期の殺伐とした世界を活写してみせたその手腕は見事なもので、特に合戦シーンの解像度の高さには驚かされた。血の臭い