春の強い風は、いろんなものを運んできます。そんな細かいかけらをまとめた呼び名が「埃(ほこり)」。一日外出すると、帰宅時にはなんとなく服や髪がザラザラ、ノドもイガイガ、目もかゆい! ・・・原因は、花粉ばかりじゃないようです。

ホコリダケ。真ん中の穴から茶色い胞子がモワ〜っと


春の埃に混じる花粉・虫の死骸・動物の糞・・・中には危険な物質も!

春は空気が乾燥しているので、植物や昆虫の死骸など道端のあらゆるものが乾いては細かい粒子になり、空気中に漂っているそうです。
じつは「春埃」「春塵」は、春の季語にもなっています。
北海道にはかつて『馬糞風』と呼ばれる春塵が。自動車がまだ少なかった昭和初期まで、札幌での輸送手段は馬車や馬そりでした。道端に馬が落とした糞は、冬の間は雪に埋まって冷凍保存されています。春になると、雪解けして現れた大量の馬糞が乾燥し、南寄りの強風とともに街中に吹き付けたのです。人々は砂塵と強烈な匂いに息を止めて歩くほどでしたが、春を告げる風物詩のひとつになっていたそうです。
黄砂は、中国大陸の砂漠から偏西風に乗って春に多く飛んできます。急速な工業化で大気汚染が深刻な中国。黄砂にも有害な化学物質が多量に含まれ、吸い込むと肺などの疾患や花粉症を悪化させる原因にもなります。呼吸器の弱い方は、この時期マスク着用や空気清浄機の使用などで、できるだけ埃の吸入を防ぎましょう。
「空気が汚れている都会では鼻毛が伸びやすい」といわれるように、鼻は埃が体内に進むのを防ぐフィルターの役目をしています。「鼻くそ」はいわば埃の固まり・・・なのに、鼻をほじほじした指をそのまま口に持っていってしまうお子さんは、いらっしゃいませんか? あるテレビ番組の調査では、なんと大人でも3割くらいの方が「食する」と答えています!
子供は「独特の塩味」が美味しい気がして食べていることが多いのですが、習慣化して大人になると、もう美味しいとは思っていないのについ食べてしまう(逆に大人になってから始める人はいない)のだそうです。衛生面はもちろん、将来無意識でやっているのを人に目撃されるのは社会人としてかなり痛いので、癖になる前に「それ埃の固まりだから毒だよ」と優しく阻止してあげたいですね。


体の表面についた埃は、とにかく払って洗い流すのが肝心!

気温が高くなると、汗や皮脂が出てお肌に埃がつきやすくなります。目では見えないのにクレンジングクリームで顔を拭き取ったらコットンが黒っぽくなって驚くことも。帰宅時に服の埃を払ってから家に入ると、お部屋の汚れもかなり軽減します。
埃は汗や老廃物と混ざって毛穴を詰まらせ、かゆくなったり肌荒れや大人ニキビの原因になります。アレルギーの原因物質から肌をガードしてくれている皮脂をとりすぎないように、洗顔やシャンプーはぬるま湯で。埃に固い粒子が含まれていると肌を傷つけてしまうので、いきなりこすらず、まず埃をしっかり流してから泡をつけます。


人やモノを不調にさせるグレーの埃、その中身とは?

室内の埃は、半分以上が繊維のかけら。 衣類・寝具・タオル・・・布類なしに文化生活は成り立たず、人が暮らすところに綿埃あり、なのです。同様に、暮らす者じたいから出るフケや垢・毛髪、ペットの毛。そして食べ物、外から入ってくる砂のかけらなどが含まれています。また学校では消しゴムのかすやシャーペンの芯が増えるなど、場所によっても変化します。
そして1グラムの埃の中には、なんとカビが約3万個、ダニが約2000匹、細菌が約800万個いるそうです(ダスキン調べ)。やっぱり埃は食べたくありませんね。気管支ぜんそくの原因の大半はハウスダストで、ダニの死骸や糞が主な原因といわれています。不快な症状がなかなか治らないときは、花粉以外の原因も考えて病院の受診をお勧めします。

とんでもないものまで飛んでくるようです

とんでもないものまで飛んでくるようです

掃除をしない言い訳に「埃じゃ人間死なないし」などと言う人も昔はけっこう存在しましたが、今はアスベストや黄砂・アレルギーや喘息・コンセントに溜まって出火など、多くの人が「埃で死ぬこともある」と認知しています。「春の埃防止三原則」は・・・
・吸わない
・溜めない
・持ち込まない
埃は、モノの不調も引き起こします。
家電やパソコンなどのトラブルの多くは、埃が原因といわれているほどです。修理に出されたのを分解して丁寧に掃除すると、それだけで元に戻ることも多いのだとか(ただし詳しくない人が自分で分解するのは危険です)。換気扇も油と混じった埃で回りにくくなったりします。「乾いているうちに取り除く」のが、埃撃退のコツのようです。
埃がグレーに見えるのは、かけらのいろんな色が細かく混ざっているから・・・絵の具もたくさんの色を混ぜていくと、だんだん灰色っぽくなっていきますね。ミクロの世界では、繊維たちがとてもカラフルに競演しています!