川崎宗則【写真:田口有史】

地元メディアが川崎のストイックな一面を特集

 その陽気なキャラクターでチームのみならず、リーグ屈指の人気者となっているブルージェイズ川崎宗則内野手に関して、地元メディアが求道者としてのストイックな一面を特集している。カナダ地元紙「トロント・スター」電子版が「ムネノリ・カワサキ、ブルージェイズ復帰に関する使命」との見出しで報じている。

 今オフ、ブルージェイズとマイナー契約を結んだ川崎は招待選手としてキャンプインを間近に控えている。神戸で自主トレを行っていたその川崎に関して、特集では「明確なフィジカル面の変化が見てとれた。彼のお尻は大きくなっていた」と臀部の筋肉が強化されていることに着目している。

 これに関して川崎は「下半身を重点的に強化してきた。お尻というよりも、腰と股関節周り。可動域を広げて、守備面でのプレーを向上させて、打席でもいいバッティングをできるようにその基礎を作っている。その結果、お尻が大きく見えるようになったのかもしれない。でも、お尻ばかり見ないで、自分の動きを見て欲しい」と冗談交じりに答えている。

 その日の川崎は室内でゴム製のバランスボールなどを用いて体幹トレーニングを行っていたという。記事では自宅でも器具を使いながらウェイトトレーニングに励んでいることや、可動域を広げるために股関節のストレッチに取り組んでいことも紹介されている。

 特集の中で川崎は日本とアメリカの野球を経験した上での違いや、異国の地での成長についても言及。

「日本の野球は基本がしっかりしている。小さな子供の頃から守備の時には打球に対して体を正面に向けて対処するように教えられる。しっかりと捕球して、いい送球ができる体勢を作る。日本人として、そこに誇りを持っている。

 自分たちが大事にしているやり方についてはたくさん話すべきことはあるけれど、北米のやり方はまったく違う。日本人が練習しないようなテクニックがいろいろある。バックハンドのプレーやジャンピングスローだけでも、何種類もある。オーバースロー、アンダースローとか。

 メジャーに来た当初はそういうプレーができる下半身ができていなかった。体をひねって、ベースを踏み込まないといけないけど、できなかった。今はそういうプレーができるようになっている」

 そう語る川崎は、今オフに噂された日本球界復帰ではなく、4年目となるメジャー挑戦を選択したことに一切迷いはないようだ。

「僕は野球を愛している」

「自分のやりたいことに関して言えば、ブルージェイズは野球史上最高の契約をオファーしてくれた。自分が実現したいプレーに関して学び続けることができるから、すごく幸せだし、感謝の気持ちでいっぱい。もちろん、トロントでプレーしたい。でも、(3A)バッファローに行くことになっても問題はない。なぜなら、そこでも成長できるから。僕は野球を愛している。それだけです。トロントは、日本ではできないことに取り組み、学べるチャンスを僕に与えてくれた。だから、僕はトロントを愛している」

 川崎はそう語り、野球とトロントに対する愛情を何度も口にしている。

 記事ではメジャーでプレーした日本人内野手が7選手しかいないことに言及。ツインズに所属した西岡剛(阪神)やレイズなどでプレーした岩村明憲(福島ホープス)が故障に苦しんだことにも触れつつ、今季、川崎がメジャーで唯一の日本人内野手となる可能性を指摘している。

 昨季まで2年間、アスレチックスでメジャー昇格を目指した中島裕之(オリックス)はデビューを果たせず、今オフにメジャー移籍を希望していた鳥谷敬も最終的に断念し、阪神と契約を結んだ。日本人内野手にとってメジャーで生き残るのはいばらの道だ。

 その中で川崎は3年連続でメジャー昇格を果たし、出場機会を手にしている。そして今季は二塁手のレギュラー候補に挙げるメディアもあるほど。今回の特集でも、異国の地で成長し続ける川崎の姿が浮き彫りとなっている。

 技術の向上、野球人としての成長に対する飽くなきモチベーションが川崎の原動力。片言の英語を駆使しながら観衆と同僚を笑顔にさせるムードメーカーの本質は、ストイックな求道者なのかもしれない。