「雨量計が規制値」でなぜ運転中止になるのか?
台風18号の影響で、東海道新幹線の雨量計が規制値に到達。運転が見合わされています。しかし東北新幹線では、こうした雨量による運転見合わせは基本的に起きません。なぜ運転見合わせになったり、ならなかったりするのでしょうか。
大雨によって具体的に何が問題で運転中止に?
2014年10月6日(月)、静岡県浜松市付近に上陸した台風18号によって、交通機関に大きな影響が出ています。特に台風の進路にあたるJR東海エリアでは、6日朝から在来線の全線で運転が見合わせられました。
東海道新幹線でも雨量計が規制値に到達。JR東海によると6日11時現在、品川〜静岡駅間で運転が見合わせとなり、運休列車が多数発生。名古屋〜新大阪間の下り線で1時間に1本程度、臨時「こだま」が運転されていますが、山陽新幹線との直通運転は中止になっています。
大雨の際にしばしば発生する運転見合わせなどの規制。東海道新幹線では次のような基準で行われています。
・最高速度を70km/hに制限
過去1時間の降雨量の累計が50mm以上
連続降雨量が250mm以上かつ10分間雨量が2mm以上
・運転見合わせ
過去1時間の降雨量の累計が60mm以上
連続降雨量が300mm以上かつ10分間雨量が2mm以上
連続降雨量が150mm以上かつ時雨量が40mm以上
東海道新幹線では今回、沿線にある複数の雨量計で「連続降雨量が150mm以上かつ時雨量が40mm以上」の規制値を観測し、運転が見合わせられました。
なぜこのように降雨量が多いと、列車の運転が見合わせになるのでしょうか。
東北新幹線が大雨でも運転見合わせにならない理由
雨量値で運転規制が行われる大きな理由は、多量の降雨によって地盤がゆるみ線路の陥没や崩壊、のり面の崩壊、土砂崩れなどが起きやすくなるためです。「のり面」とは人工的に土を盛ったり、山を切り開いて造られた斜面のことです。
新幹線の場合、安全性を考え道路とはすべて立体交差になっており、踏切をなくしました。そのため東海道新幹線では土を盛って地面を高くし、その上にレールを敷設する「盛土区間」が多く存在しています。この土を盛った盛土区間が、大雨の影響で陥没や崩壊といったトラブルを起こしやすいのです。
1965(昭和40)年度、東海道新幹線では水害によって線路陥没など12件の線路故障が発生。「雨に弱い新幹線」と言われるようになってしまいました。盛土区間が多いことのほか突貫工事で建設されたこと、軟弱な地盤が多いことも、東海道新幹線が雨に弱い理由といわれます。
東海道新幹線が1964(昭和39)年に開業した当初、運転見合わせになる「過去1時間の降雨量の累計」は20mmでした。
しかし国鉄・JRはそうした「雨に弱い」という評判を払拭し、安全で安定した運行を実現すべく、のり面の強化や排水性の向上といった対策を実施。現在では運転見合わせになる「過去1時間の降雨量の累計」が60mmと、大きく向上させることに成功しました。
さて東北・上越・長野新幹線では原則的に、降雨量による運転中止は行われません。そうした東海道新幹線の教訓を活かして建設されていること、盛土区間が少なくコンクリートの高架橋が多いこと、降雨対策の進化などがその理由です。