沖縄の学力向上は、偶然ではないのです。

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文科省が小学6年生と中学3年生を対象に行っている「全国学力テスト」の結果が8月末に公表された。

今回大きく注目されたのは、沖縄県の躍進ぶりである。
特に大幅に改善したのは小学校で、なにせ都道府県別の平均正答率では昨年まで6年連続最下位だったところから、24位へと、大幅に躍進。「知識」をみる「A問題」においては小中全ての科目(算数・数学/国語)で改善し、小6算数Aに至っては全国6位という急上昇ぶりを示した。

この躍進ぶりにはどんな背景があるのか。沖縄県教育庁義務教育課担当者に聞いた。
沖縄県では実は昭和63年より『学力向上主要施策』を策定し、学力向上を推進してきましたが、文科省で抽出していた結果によると、全国平均とは10ポイントほどの差がありました。そして、全国学力テストが導入された平成19年時にも、周回遅れほどの差があったんです」
その後、学力差は徐々に縮んできたものの、転機となるのは、2009年。教育研修や、学力テスト上位県・秋田と毎年2人ずつ教員を派遣し合うなど、交流を行うようになったことで、昨年度には全国平均との差が5ポイント以内まで縮んでいたと言う。

それにしても、昨年度からの1年間で飛躍的に伸びたのはなぜなのか。
「昨年、『学力向上推進室』を作ったんです。もともと指導主事が8名いたんですが、本来の業務に追われて現場を見まわることがなかなかできなかったところ、昨年11月に緊急で指導主事を2名追加したことにより、学校を直接訪問する人員の確保ができたんです」
緊急追加によって10名となった指導主事のうち、5名が沖縄県内の公立小学校約120校を1校1校訪ねて歩いた。学校によっては3度ほど訪れ、経過・変化を見守ってきたところもあるそう。
「これまでは調査をし、政策を打ち出して、文書を作って配布したり、問題を作ったりしてきましたが、直接学校をひとつずつ見てまわることができたのは大きな意味がありました。『現状』『実態』を正しく把握することができ、それに即した個々のアドバイスをかなり具体的に直接行うことができたんです」

県全体の傾向・政策を「文書」として配布されることと、1校1校が抱える問題点・改善できる点などを直接アドバイスされることとでは、響き方が全く違う。
さらに、現状を見てまわるなかで、工夫したのは、「日常の授業を見ること」だった。
「これまでも市町村や教育委員会で学校訪問をしてきましたが、多くは準備が整っている状態で行う『研究発表会』というかたちでした。でも、研究発表会には資料の準備など、先生方にかかる負担も大きく、普段の姿は見られない。ですから、『準備は必要ないので、日常の授業を見せてください』とお願いしたんです」
日常の授業を「1時間はりついてみる」+「その後1時間みっちり反省会を行う」というフィードバックの早さにより、生きたアドバイスが行われたのだ。

向上したのは、「知識」をみる基礎のA分野だけではない。小学校では、国語Bも最下位から32位、算数Bも46位から34位へと、いずれも上昇した。
「Bの活用力は、学級やグループで話し合ったり、発表したりする力、周りの意見を聞いたり学び合ったりする力が必要とされます。何が事実で、何がわかっていることで、どう考えられるのか、『事実』と『意見』『推論』との区別ができるようにしていくことが、国語でも算数でも必要なことなんです。こうしたグループ学習や学び合いは、秋田県が非常に進んでいる分野で、秋田との交流が実を結んだ結果だと思います」

ちなみに、昨年度は全小学校を訪問・アドバイスを行い、小学校の学力テストの結果が大幅に改善したことを受け、今年度は中学校を中心にまわっているそう。

沖縄の学力は今後まだまだ飛躍していきそうだ。
(田幸和歌子)