これが24時間生放送のスタジオ! 想像以上に省人化されている

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夏は24時間超えの特番も多い。長丁場の番組を見ていると、出演者もスタッフも大変だろうなあと思う。だが実は夏に限らず365日、毎日24時間生放送をしているチャンネルがある。ショッピング専門チャンネルだ。

1986年にアメリカで誕生した「QVC」もその1つ。現在ではアメリカ以外に日本・イギリス・ドイツ・イタリアの5カ国で放送されている世界最大級のショッピング専門チャンネルだ。

一部の中継などをのぞき、基本的には番組はすべてスタジオからの生放送。番組自体は1時間ごとに区切られているが、CMもなく、年中無休。一体、現場はどんな感じなのだろうか? 

そこで実際にQVCを訪問し、撮影現場を見せてもらってきた。スタジオがあるのは千葉県千葉市にある「QVCスクエア」。2013年に建てられた7階建ての新社屋には、2つのTVスタジオを含む全7スタジオ、さらにカスタマーコンタクトセンターやオフィスフロアもある。

オンエア中のメインスタジオに入ってみると、人も少なく、すっきりとした空間が広がっていた。スタジオにいたのは出演者2名、それに商品を身に付けたモデルさん2名。あとはスタッフ2〜3名のみ。カメラの数は多いがカメラマンの姿はない。もっとドタバタな感じかと思ったが、想像以上に落ち着いた雰囲気だ。

担当者によれば、8台あるカメラはすべて“ライブコントロールルーム”と呼ばれる別室から、リモート操作されているという。ライブコントロールルームには他にライブプロデューサーなどがおり、視聴者からの問い合わせや商品の在庫数をリアルタイムで確認しつつ、番組進行役であるショッピングナビゲーターへ指示を出す。たとえば、「紹介されている洋服の裏地が見たい」という声が入れば、その場でナビゲーターに伝え、実際にナビゲーターが裏地を見せたり、触り心地をレポートする。そんな演出ができるのも生放送ならではだ。

出演者は1番組につき、2名が基本。番組進行役のショッピングナビゲーター1名と、商品を紹介するゲスト1名(※メーカーの担当者など)だ。また、リアルタイムの情報を反映する進行スタイルであるため、番組には台本がない。となると、進行役のナビゲーターは、かなり大変なのではないだろうか? 2003年からナビゲーターを務める道田真一さんに番組作りについて聞いた。

――台本がないのにどうやって番組を進めるんですか?
「番組前には、すごく綿密な打ち合わせをしています。まずはバイヤーがこういう思いで買ってきた、じゃあ番組としてどう売ろうか? というところから始まり、最終的にはナビゲーターやゲストも加わってテレビでの見せ方を詰めていきます。台本はありませんが、ざっくりとした流れや構成はありますよ」

――そうは言っても台本なしで毎回異なる商品を紹介するのって、ものすごく大変だと思うのですが……。
「慣れます(笑)。それに大変なのかもしれないですが、大変だと思っていないんですよね。基本的に自分が楽しくなかったら見ている人も楽しくないと思うんで。カメラって正直で、絶対わかるんですよ」

――なるほど。では生放送ならではの苦労はありますか?
「収録とちがって撮り直しができないので、発言には気を使います。とくに薬事法の絡みとか。あとは話に熱中しているうちに料理が焦げちゃったり……、なんてハプニングもたまにあります」

――逆に生放送ならではの面白さは?
「いろいろなスタイルで生活している人いるということがよくわかることですね。今、夜中から朝にかけての番組を担当しているのですが、3時や4時でも見てくださっている方がいる。6時半くらいになると急に盛り上がってきて、“あ、みんな起きてきたな”とわかる(笑)。そういうのがリアルタイムで伝わってくるのは面白いです」

――仕事のやりがいや歓びはどんなところに感じますか?
「たとえば、“入院して買い物にも行けないけれど、QVCで素敵なジュエリーが買えた”という声をいただくことがあります。そういう方々にも届けることができるというのは、実はすごいことだなと思っていて。また、夜中なんとなく一人で寂しいと思って起きている方に親しみを持って見て頂けるというのもありがたいと思う。いま自分が紹介しているものが、誰かにとって本当に必要なものなのかもしれない。そういう気持ちで紹介しています」

取材後、実際に道田さんの番組を見てみたのだが、本当に楽しそうで思わず見入ってしまった。そういえばインタビュー時に道田さんが「ナビゲーターというのは、いわば売り子さん。伝えるのは最大で画面の向こう側にいる2〜3人。基本的には1人だと思って話しています」と言っていたが、まさに私に向かって話しかけてきてくれているような感じなのだ。なかにはQVCの番組を究極の対面販売だという人もいるというが、その表現にも納得だ。

QVCの会員数は約500万人、1カ月あたり35〜40万人が買い物をしているという。2013年の売り上げは、1000億円で、これまでの一日の最高売り上げは14億2000万円(※2013年11月17日の記録)。取り扱う商品はファッション、ジュエリー、美容、食品、家電など多岐にわたり、高額なものでは1000万円のジュエリーやメルセデス・ベンツの特製仕様車が売れたこともあるそう。また、実店舗で買いにくい女性用ウィッグ(かつら)もよく売れるとのこと。

番組はパソコン・携帯電話は「QVC.jp」 から24時間無料で見られる。「QVCアプリ」からも視聴可能。テレビではCS放送、ケーブルテレビで24時間生放送をしている他、BS放送(4ch(BS日テレ)、12ch(TwellV))の一部時間帯で視聴可能。また、年に何回かは番組観覧イベントを設け、事前公募で一般消費者も招いているそうなので、スタジオ見学のチャンスもある。

24時間いつでも見られて、思いがけない商品との出会いもあるQVC。まさに今、このときもやっているので、気になる人はチェックしてみては。
(古屋江美子)