『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』ジェーン・スー (著)/幻冬舎

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ここ数年、「女子会」「女子力」など“女子”というワードが世間をにぎわせている。飲食店やホテルなどでも「女子会コース」が多く存在し、自分もまたそれに便乗している反面、「もう女子って年齢でもないだろう」とも思っている。

私は、ピンク色の服を着たり、かわいいものを身に付けたりすることに少なからず抵抗がある。買う洋服は地味めな色ばかりだし、ピンクなど明るい色のものはどこか自分には似合わない気がすると思い、購入をあきらめることもしばしばだ。

しかし自分のまわりには年齢問わずピンクの服が着られたり、LINEでかわいいスタンプを多用できたり、かわいらしいものを見て素直に「かわいい!」とテンションをあげられる女性が確かに存在するのである。
彼女たちの様子を見て、「自分とはまったく違うタイプの人なのだな」と思いながらも、なんだかスッキリしない自分がいる。なぜだろう。

そんなモヤモヤを解消してくれる本に出会った。作詞家、コラムニスト、ラジオパーソナリティというさまざまな肩書きをもち、最近では「未婚のプロ」としてメディアで活躍されているジェーン・スーさん著『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』である。タイトルからして衝撃的!

本書は、ジェーン・スーさんのブログ「ジェーン・スーは日本人です」に投稿されていた記事と、20本の書き下ろしが収録されている。目次を見ているだけでも『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』『女子会には二種類あってだな』『三十路の心得十箇条』『ピンクと和解せよ。』『三十代の自由と結婚』などなど、ひっそりと心の奥に隠していた何かを、グリグリと見せられる感じだ。

「本著では、女子を背負えなかった時代と、それと楽しく付き合えるようになってからのあれこれを書きました。(本文引用)」とあるように、本書では自分の思い込みから理想像以外のもの(自分の中にある女子の部分=女性性)にNGを出していたジェーン・スーさんが、それとうまく向き合えるまでに至った経緯と、その後の様子が掲載されている。

もしかしたら、ピンクの服が着られないのも、かわいいものを身につけられないのも、それらができる人たちを見てモヤモヤするのも、自分が女子を背負えていないことが原因なのかも……。しかし、三十路の自分が今から女子を背負って生きてもよいのだろうか。女性はいつまで「女子」でいられるのか?
この疑問について、ジェーン・スーさんは本書で「私の答えは、『女は生涯、いち女子』であります」と言われている。生涯、いち女子であるならば、女性性を受け入れられる人と、それを受け入れられない人というのは、どこで分かれてしまうのだろうか。ジェーン・スーさんご本人にお伺いしてみた。

ジェーン・スーさん:「たぶん、明確に二分化されているわけではなくて、すごく細やかなグラデーションになっているのだと思います。自分がどこまで受け入れられるかという折り合いって、はっきりと分けられるものではないと思っていて。なぜ(分かれてしまうの)かっていうと、それぞれ小さい頃に『女の子だったらこれがかわいい』というのを、テレビや幼稚園などから情報として受け取っていて、それを自分とマッチングさせたときに、『どうも相性が悪い』と自分で自分にNGを出したり、まわりからNGを出されたことが深く心に残ってしまっていて、それによりグラデーションの濃さが変わってくるのだと思います」

なお、ブログでは本書にも収録されている『ピンクと和解せよ。』の反響が大きかったという。
これは、子供のころからピンクが大の苦手だった著者が、なぜピンクが苦手になってしまったのか、その要因について幼少期にまでさかのぼり、そこから派生した「ピンクが憎い」という思い込みを解消するまでが書かれている。

ジェーン・スーさんいわく、「自覚している・していないというよりは、文章として(女性性について)読むということが、そんなにある体験ではなかったのかもしれないですね」とのこと。
この記事の反響が大きかったということは、同じようにピンク(=女性性)に対しての劣等感や嫌悪感を抱きながら、原因不明のモヤモヤを抱えていた女性が多かったということなのかもしれない。

ジェーン・スーさん:「女性らしいと言われているものに対して、どこか居心地が悪かったり、自分には関係のないものだと思っていたけれど、何で自分でそう思ったのか分からないというモヤモヤを(この本で)スッキリさせることができたらいいなと思っています」

最後に、私のようにモヤモヤとしている女性たちへのアドバイスをお伺いしてみた。

ジェーン・スーさん:「“自分はこういう人だ”っていうのを、自分で決めつけないほうがいいと思います。というのも、自分がそうやって決めつけていたことで、得したことはなかったなというのがあるので。実体験としてそう思いますね」

幸いにも、私は風邪もめったにひかない健康体なのだが、それゆえに貧血気味にふらりと倒れてしまう感じや、「どこかほっとけないよ」感をだしている女性を、どこかでうらやましいなと思っている。実際の自分は、「いえ、自分大丈夫ですから!」と大体のことはひとりで対処してしまうし、誰かに甘えたりすることが下手なように思う。

これは、兄弟の中で一番上として生まれてきたことで、兄弟喧嘩をしようものなら「お姉ちゃんなんだから」と当然のように我慢を強いられたり、いつからか「自分を主張しても無駄なのだ」と察するようになったことも影響しているのかもしれない。

そこで、私は思い切ってピンク色のワンピースを購入してみた。通販で購入したため、数日後にそれは届き、鏡の前で自分にあわせてみた。悪くない……。いいじゃない、女子。
これをちゅうちょなく「かわいい!」と着られるようになるまでには時間がかかりそうだが、それでも、自分が変わらずに状況が変わることばかりを望んでいては、何も始まらない。

「さみしくて傷ついた時にそれを認識しないでいると、嬉しくて飛び上がりたい時の感情も、可愛いものや美しいものを見て幸せになった気持ちも、感動で心が揺さぶられた時の気持ちも、だんだん表に出せなくなってきます。(本文引用)」

私もTPOをわきまえつつ、今まで隠していた本音=女性性に向き合うことで、楽しく、そして楽に女性人生を歩んでいこうと思う。
(平野芙美/boox)