米インターネット通販大手アマゾンが6月18日、自社開発スマホ「ファイアフォン」の発売を発表した。

Android系の「ファイアOS」を搭載し、当面は同国市場のみでの展開。米キャリア大手AT&Tと2年の回線契約を結べば、端末価格は199ドル(約2万円、32GBモデル)だ。

ファイアフォンには、端末を傾けるとアプリや3D画像の見える角度が変化し、奥行きのある画面を楽しめる「ダイナミック・パースペクティブ」、端末の使い方などについて24時間年中無休でビデオ通話による無料サポートを受けられる「メイデイ」といった目玉機能、サービスがあるのだが、なかでも最大の特徴といえるのが「ファイアフライ」である。

これは、端末を実際の物体や音楽、文字などにかざすと、カメラやマイク経由で対象物を認識し、当該商品を販売しているアマゾンのサイトに自動的にリンクしたり、対象物の詳細な情報が得られるというもの。そして、このファイアフライの機能こそが、アマゾンが自社スマホ発売に踏み切った意図を、如実に物語っているのだという。ITジャーナリストの石川温(つつむ)氏が解説してくれた。

「物販やデジタルコンテンツ販売による利用料収入をさらに増やすため、スマホそのものをアマゾンサイトへの導線にしようという戦略なのです」

他社端末やPCのユーザーだと、アマゾンを閲覧しにいく手間がまず面倒だし、購入そのものを忘れてしまったり、迷った末に結局購入を思いとどまってしまうことだってある。しかし、スマホが自動的にアマゾンの購入サイトにつながるとなれば、話は別だ。

「ファイアフォンによって、ユーザーが外出先でふと興味を持ったものをすぐにアマゾンで購入、という消費行動につなげることができるのです」(石川氏)

だが、そもそもスマホをかざすだけで対象物を正確に認識できたりするものだろうか。携帯電話ライターの佐野正弘氏が語る。

「画像検索自体は、ソフトなら『Googleゴーグル』アプリ、ハードならソニーのスマホ『Xperia』がすでに似たような機能を持っていて、それなりの認識能力があります。ファイアフライも、少なくともアマゾンで取り扱っている商品に関しては、高い確度でヒットするでしょう」

そんなファイアフォンが、アメリカ市場で受け入れられる公算はいかに?

「私はかなり厳しいと思います。アマゾンのサイトにつながることが最大のウリであるようなスマホに飛びつく人は、アメリカでも少数派でしょう。フェイスブックとの連携を強化したHTC製の『フェイスブックフォン』でさえ、昨年大コケしたわけですから。ただ、例えばファイアフォンを使ってアマゾンで買い物をした客には10%引きするような特典をつけたりすれば、ある程度売れるかもしれませんが……」(前出・石川氏)

そうなれば、将来的には日本市場にも導入されたりして?

「可能性はあります。ファイアフォンと組む大手キャリアがあるとすれば、現在、アマゾンのKindle端末のために回線を提供しているNTTドコモでしょうね。あるいは、格安SIMを提供するMVNO事業者と提携し、自社サイトでSIMフリー端末を直販することも考えられます。ですが、iPhoneからはもちろん、OSがまったく同じではないため、Android機からもアプリなどの引っ越しが直接できない端末への乗り換えを考える人が、どれくらいいるか」(前出・佐野氏)

天下のアマゾンだけに、日本に上陸する際には、通信料割引など、さらなる特典も期待したい!