【レビュー】Google Chromecastを試す - インターネットの動画などを液晶テレビで楽しむガジェット
●導入作業は無線LANを設定するだけインターネットのコンテンツを液晶テレビで楽しむには、いくつかの方法がある。PCやスマートフォン、タブレットとテレビをHDMIでつないだり、インターネット対応のテレビを利用したりなどだが、いずれもあまり便利とは言えない。前者はケーブルで接続するのが煩わしいし、後者はテレビが古くなると処理性能や表示能力に不満を感じやすい。
こうした不満を一気に解決してくれる可能性を持つガジェットが、Googleが5月28日に発売した「Chromecast」だ。Chromecast自体は液晶テレビのHDMI端子に挿し込んで使う。Chromecastとスマートフォンやタブレット、PCとの接続は無線LANだ。そのためリビングで長々とケーブルを引っ張りまわす必要がない。
Chromecastは、iOSやAndroid搭載機器のほか、WindowsやMac向けのWebブラウザ「Chrome」にも対応している。自分の使いやすい機器をコンテンツプレーヤーとして利用できるため、機能が陳腐化しにくく、将来にわたって長く使っていけるのだ。
米国では2013年7月に発売されていたが、満を持して国内投入となった。販売はGoogleの直販サイトのほか、大手家電量販店で行われ、実勢価格は4,200円(税別)だ。
○シンプルなパッケージ、導入作業は無線LANを設定するだけ
パッケージはChromecast本体のほか、本体に電源を供給するACアダプタ、HDMIの延長ケーブルと非常にシンプルだ。導入の流れを簡単に解説する「スタートガイド」が内箱に印刷されているが、紙のマニュアルはない。このへんはGoogleらしい割り切りではある。
早速導入してみよう。まずはChromecast本体にACアダプタの電源供給用USBケーブルを接続して起動し、液晶テレビなどのHDMI端子に挿し込む。テレビのUSBポート経由でも電源供給は可能だった。次にプレーヤーとなるスマートフォンやタブレットに導入用のアプリ「Chromecast」をダウンロードしてインストールしよう。アプリからChromecast本体を検索し、無線LAN設定を行う。
ここまでの作業で、Chromecastをスマートフォンやタブレットから利用できるようになった。文字で書くとややこしいように感じるかもしれないが、実際のところはChromecastアプリが示す手順に従い、無線LANアクセスポイントの設定を行うだけだ。手動で無線LANの接続設定をしたことがあるユーザーなら、特に迷うところはない。
このChromecast本体の導入作業は、最初に一度行えばOKだ。利用するスマートフォンなどのデバイスには、それぞれChromecastアプリをインストールしておこう。Chromecast本体とそれぞれのデバイスは一対一で紐付けられるわけではないので、デバイスごとに導入作業を行う必要はない。
○アプリ側からボタン一つでChromecastに転送
Chromecastアプリをインストールしたデバイスで、YouTubeなど対応するアプリを起動。そして画面上に表示される「Chromecastマーク」をタッチする。そして映像を送信したいChromecast本体を指定すれば、液晶テレビにその動画の再生画面のみが表示される。一時停止や戻る/進むなどの制御はデバイス側で行う。
勘違いしやすいのは、Chromecastから液晶テレビなどに映し出せる内容についてだ。Chomecastにコンテンツを転送できるのは、iOSやAndroid向けのアプリでは、YouTube、Google Playの動画再生、NTTドコモの動画配信サービス「dビデオ」、KDDIの動画配信サービス「ビデオパス」(予定)などの対応アプリ。iOSやAndoridの画面そのものを転送できるわけはないので注意したい。
WindowsとMac OS XではウェブブラウザのChromeが、タブ一つぶんの出力に対応するほか、画面全体をChromecast経由で配信する機能も用意している(ともにベータ版)。
前述したように、Chromecast本体は特定のデバイスと紐付けられる機器ではない。あるスマートフォンAからChromecast本体にコンテンツを転送中に、ほかのタブレットBからそのChromecast本体にコンテンツを転送すると、すぐにプレイヤーBからのコンテンツ表示に切り替わる。リモコンによる「チャンネル争い」のようだ。
●「艦これ」のプレイ画面はきちんと表示されるが……○動きが激しい場面ではブロックノイズが発生
YouTubeの表示品質は、スマートフォンなどの液晶画面で見るときと比べると、動きの激しい場面ではブロックノイズがやや強くなる印象だ。とはいえ内容はきちんと把握できるし、音声にノイズが乗ることはない。大型液晶テレビで迫力満点の動画が楽しめるのはなかなか面白かった。
Windowsではウェブブラウザの「Chrome」に、拡張機能「Google Cast」をインストールする。するとアドレスバーの横に「Chromecast」ボタンが追加される。そのボタンをクリックすると、表示中のタブがChromecast本体に転送される。テキストはややにじみがあり、細かい文字は読みにくい。これは転送レートを上げても変わらなかった。
Chromecast側の表示には約1秒程度のタイムラグがある。パソコンの画面からやや遅れて、Chromecast側の表示が変化するという感じだ。そのためリアルタイム性が重視されるゲームは向かない。音声の出力もChromecast側に切り替わるが、映像との音ズレは起きなかった。
また、どんな画面でも表示できる、というわけでもなさそうだ。一般的なニュースサイトや、Adobe Flashを利用するDMM.comの「艦隊これくしょん〜艦これ」は表示できた。しかし、Webブラウザからグラフィックス機能を呼び出して描画する「Unity Web Player」を利用するゲーム、コーエーテクモ「大航海時代V」は、Chromecast側では画面が黒く抜けた状態になった。
また、Webブラウザのタブを表示する場合、マウスカーソルが表示されない。タッチ操作に対応するタブレットなら問題はないが、一般的なデスクトップPCやノートPCから操作するのは、少々難しいものがあった。
○スマートテレビの未来へとつながる一里塚
もう一度繰り返すが、Chromecastはスマートフォンやパソコンの画面そのものを液晶テレビ側に出力できるワケではない。液晶テレビ側をもう一つのディスプレイとして認識するIntelの「WiDi」やWi-Fi Allianceの「Miracast」とは性格の違う技術を使ったガジェットであることは、注意したいポイントだ。
ただし、導入のしやすさや対応アプリでの使いやすさは、WiDiやMiracast対応機器よりもはるかに上だ。対応アプリでChromecastボタンをタッチするだけ、そしてLANに接続されたデバイスなら設定を一切変更することなく、まったく同じ操作でChromecastに画面を転送できるのは、非常に便利だ。
映像を送出できるアプリが限定されるとはいえ、Chromecastはかなり革命的な製品だろう。Chromecast機能とプレーヤーとなるスマートフォンやタブレットの組み合わせは、スマートテレビの将来像に一石を投じたといえる。将来的には、Chromecastは「テレビ標準の内蔵機能」になるのかもしれない。
(竹内亮介)