決勝点を決めた内田篤人<br>(撮影・岸本勉/PICSPORT)

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 いい選手が決めてくれた。1対0で勝利した5月27日のキプロス戦で、決勝ゴールをあげたのは内田篤人だった。

 前半43分にゴールを決めた内田は、迷わずベンチへ駆け寄った。リハビリをサポートしたメディカルスタッフを目ざしたのだが、サブメンバーも手荒い祝福で迎えた。4か月近い空白を経て実戦復帰を果たした男の一撃が、チームの一体感を高めた瞬間だった。

 ゴールへの流れも申し分ない。
 相手ディフェンスのクリアボールを、山口蛍がワンタッチで岡崎慎司につないだ。ミドルシュートという選択肢もあるエリアで、もっと言えばフィニッシュへ持ち込むことで満足感に浸りがちなエリアで、彼は岡崎へパスを出してゴール前へ飛び出していった。

 パスを受けた岡崎も、ワンタッチで香川へつないだ。絶妙な浮き球のパスを、香川もまた彼らしい技巧的なトラップでシュートへ結びつけた。

 ここで、内田がゴール前へ飛び込んでくる。相手DFにブロックされた香川のシュートに反応し、こぼれ球をプッシュする。一度は跳ね返されたボールをもう一度押し込むと、スタジアムに歓声が沸き上がった。

 内容的にはいまひとつの一戦である。シュート18本で1対0は、決めきれなかった、攻めあぐねた、との印象を呼び込む。

 だが、指宿で身体をいじめ抜いてきたチームにとって、キプロス戦は万全のコンディションで迎えた一戦ではない。疲労感がミスを呼び、ミスには見えないズレを生み、攻撃の連動性を奪ったところがあったのだ。

 8年前の5月30日を、忘れてはいけない。ドイツW杯を直前に控えた日本は、開催国とのテストマッチに臨んだ。高原直泰の連続弾で2対0とリードし、ドイツの顔色を失わせた。最終的には2対2に追いつかれたが、ドイツ国内でも日本の評価が一気に上昇した一戦だった。

 しかし結果は、ご存じのとおりである。万全のコンディションでキプロス戦を迎え、大勝を飾ったところで、何も得ることはできない。照準はあくまでも、6月14日に合わせるべきなのだ。