「単純に生きるほうが難しいんだ」名言ハンターがよりすぐった『野原ひろしの名言』に打たれる
理想の父親像とは誰か?
私事だが昨年、父になり、こんなことをたまに考えるようになった。
こうした設問が出ると、『サザエさん』の磯野波平の名が挙がりがち。だが、波平さんは父であるとともにお爺ちゃんでもある。30半ばの自分からするとちょっと遠い存在だし、世のお父さん達からしてみても同様ではないだろうか。
そこで、野原ひろしですよ。
「埼玉県春日部は野原一家の長にして! 双葉商事営業第2課係長! ローン32年!! 35歳!! 野原ひろしたぁ、俺のことよおぉ!!」
話題の映画「クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん」で、野原ひろしはこんな口上を述べている。
思わずグッと来た。今どき会社名と役職をこんなにも堂々と口にできる男なんてそうそういるもんじゃない。
だからこそ、この本に手が伸びた。
『野原ひろしの名言』。
この中の第2章「サラリーマン」でも上記の口上が紹介されている。
自分の仕事と会社に誇りとやりがいを感じているからこそ、こんなにも胸を張っていられるんだろう。それもまた、理想の父親像の必須項目な気がしてくる。
本書『野原ひろしの名言』の著者は、『名言力』『平成の名言200』などを上梓し、テレビ番組にも出演する“名言ハンター”大山くまお。
インターネット上には「ひろしの名言」を集めたウェブサイトが数多くあるのだが、それらの中には実際にひろしが口に出していない、どこかで聞いたことのある古典的な名言も数多く含まれているという。でもそこは“名言ハンター”。そんなサイトからは一切引用せず、コミックス、TVアニメ、映画から集めた140の「ひろしの名言」が並ぶ。
第1章「家族」からはじまり、「サラリーマン」「父と子」「夫婦」「男の生き様」「幸せ」「人生」の7章構成。最初から一気に読み進めてもいいし、仕事に疲れたときは「サラリーマン」の章を、夫婦仲がうまくいかないときは……と、その時の気分でページを選ぶことで、その都度新たな発見ができるはずだ。
それぞれの章から、私のお気に入りをひとつずつ紹介したい。
◎第1章:家族……「オレの人生はつまらなくなんかない! 家族がいる幸せを、あんたたちにも分けてあげたいくらいだぜ!」
名作映画『オトナ帝国』から。独り身だったときに観て感動した映画やこのセリフを、今観たらどうなるんだろう?
◎第2章:サラリーマン……「仕事ってのはラクじゃないけど、楽しいこともあるんだ」
《面倒なことから逃げてばかりいては、決していい仕事はできません。苦労が実ったとき、初めてその仕事が楽しいと思えるはず。「楽(ラク)」と「楽しい」は違うのです》という解説文もまた味わい深い。
◎第3章:父と子……(しんのすけに「オラいつになったら女子更衣室に入れるの?と聞かれて)「それは『日本の政治はいつ良くなるの?』って聞くようなものだ」
こういう、風刺の効いたジョークが飛ばせる大人になりたい。
◎第4章:夫婦……「みさえちゃんおかえり!! あんたはすごい!! 毎日えらい!!」
妻は褒めて欲しいらしい、ということを自分も最近学びました。もっと早くこの名言を知りたかった……。
◎第5章:男の生き様……「くるか!? オレは中学時代、空手部員のヤツと友だちだったんだぞ!」
本書を読むと、学生時代のひろしは<空手部員を友だちに持つ、卓球に精を出していたSFクラブ会員>というひろしウンチクまで手に入ります。
◎第6章:幸せ……「しっかし、こいつらと風呂に入っていると、何となく疲れもとれてくるから不思議だぜ」
ホント、不思議だぜ!
◎第7章:人生……「単純に生きるほうが難しいんだ」
時にこうした真理に気づかせてくれるのも、『クレヨンしんちゃん』の魅力だと思うのです。
父の日のプレゼントにも最適。父から子どもに「本当はこんなことを考えてるんだ(考えたいんだ)」というメッセージとしても使える一冊。『野原ひろしの名言』、オススメします。
(オグマナオト)
私事だが昨年、父になり、こんなことをたまに考えるようになった。
こうした設問が出ると、『サザエさん』の磯野波平の名が挙がりがち。だが、波平さんは父であるとともにお爺ちゃんでもある。30半ばの自分からするとちょっと遠い存在だし、世のお父さん達からしてみても同様ではないだろうか。
そこで、野原ひろしですよ。
「埼玉県春日部は野原一家の長にして! 双葉商事営業第2課係長! ローン32年!! 35歳!! 野原ひろしたぁ、俺のことよおぉ!!」
思わずグッと来た。今どき会社名と役職をこんなにも堂々と口にできる男なんてそうそういるもんじゃない。
だからこそ、この本に手が伸びた。
『野原ひろしの名言』。
この中の第2章「サラリーマン」でも上記の口上が紹介されている。
自分の仕事と会社に誇りとやりがいを感じているからこそ、こんなにも胸を張っていられるんだろう。それもまた、理想の父親像の必須項目な気がしてくる。
本書『野原ひろしの名言』の著者は、『名言力』『平成の名言200』などを上梓し、テレビ番組にも出演する“名言ハンター”大山くまお。
インターネット上には「ひろしの名言」を集めたウェブサイトが数多くあるのだが、それらの中には実際にひろしが口に出していない、どこかで聞いたことのある古典的な名言も数多く含まれているという。でもそこは“名言ハンター”。そんなサイトからは一切引用せず、コミックス、TVアニメ、映画から集めた140の「ひろしの名言」が並ぶ。
第1章「家族」からはじまり、「サラリーマン」「父と子」「夫婦」「男の生き様」「幸せ」「人生」の7章構成。最初から一気に読み進めてもいいし、仕事に疲れたときは「サラリーマン」の章を、夫婦仲がうまくいかないときは……と、その時の気分でページを選ぶことで、その都度新たな発見ができるはずだ。
それぞれの章から、私のお気に入りをひとつずつ紹介したい。
◎第1章:家族……「オレの人生はつまらなくなんかない! 家族がいる幸せを、あんたたちにも分けてあげたいくらいだぜ!」
名作映画『オトナ帝国』から。独り身だったときに観て感動した映画やこのセリフを、今観たらどうなるんだろう?
◎第2章:サラリーマン……「仕事ってのはラクじゃないけど、楽しいこともあるんだ」
《面倒なことから逃げてばかりいては、決していい仕事はできません。苦労が実ったとき、初めてその仕事が楽しいと思えるはず。「楽(ラク)」と「楽しい」は違うのです》という解説文もまた味わい深い。
◎第3章:父と子……(しんのすけに「オラいつになったら女子更衣室に入れるの?と聞かれて)「それは『日本の政治はいつ良くなるの?』って聞くようなものだ」
こういう、風刺の効いたジョークが飛ばせる大人になりたい。
◎第4章:夫婦……「みさえちゃんおかえり!! あんたはすごい!! 毎日えらい!!」
妻は褒めて欲しいらしい、ということを自分も最近学びました。もっと早くこの名言を知りたかった……。
◎第5章:男の生き様……「くるか!? オレは中学時代、空手部員のヤツと友だちだったんだぞ!」
本書を読むと、学生時代のひろしは<空手部員を友だちに持つ、卓球に精を出していたSFクラブ会員>というひろしウンチクまで手に入ります。
◎第6章:幸せ……「しっかし、こいつらと風呂に入っていると、何となく疲れもとれてくるから不思議だぜ」
ホント、不思議だぜ!
◎第7章:人生……「単純に生きるほうが難しいんだ」
時にこうした真理に気づかせてくれるのも、『クレヨンしんちゃん』の魅力だと思うのです。
父の日のプレゼントにも最適。父から子どもに「本当はこんなことを考えてるんだ(考えたいんだ)」というメッセージとしても使える一冊。『野原ひろしの名言』、オススメします。
(オグマナオト)