例年だと、必ず“伏兵”が1、2チームは紛れ込むものだけど、今季は前評判の高い“強豪”が順当に勝ち上がったね。いよいよ欧州チャンピオンズリーグ(CL)の準々決勝が始まる。

注目はなんといっても、前回王者バイエルン・ミュンヘン(ドイツ)。日本での人気や知名度は、バルセロナやレアル・マドリー(ともにスペイン)に劣るけど、今季も優勝候補の最右翼といっていい。グアルディオラ新監督の下、今季国内リーグで無敗(26節終了時点で24勝2分)、CLでもグループリーグで決勝トーナメント進出決定後に1敗を喫しただけ。圧倒的な強さを見せている。

バイエルンの最大の強みは、攻守のバランスがよく、誰かひとりに頼るサッカーをしていないこと。ロッベン、リベリという看板選手はいるものの、攻撃面で彼らに依存することはなく、マンジュキッチやミュラーもゴールをたくさん決めている。

一方の守備陣もデカくて強い選手がそろっていて、安定感タップリ。どんな相手と対戦しても“横綱相撲”が取れる感じだね。2年連続の3冠(CL、国内リーグ、国内カップ戦)も夢じゃない。

そのバイエルンと準々決勝で対戦するのは、香川真司の所属するマンチェスター・ユナイテッド(イングランド)。チームを27年間率いたファーガソン監督が去った今季は歯車が噛み合わず、国内リーグでは極度の不振に陥っている。選手たちの不満もメディアに漏れるなど、モイーズ新監督はチームを仕切れていない。また、戦力的に見ても、準々決勝に残った他チームに見劣りしてしまう。

結果を出せていないモイーズ監督にとってはラストチャンス。名門マンUが無冠に終われば、監督の首が飛ぶのは当然だからだ。国内リーグ、国内カップ戦での優勝の可能性が消えた今、彼はCLにかけるしかない。

そうした“開き直り”の怖さがないことはないけど、エースのファン・ペルシの故障は本当に痛いね。バイエルンの強さを認めた上で、どこまで泥くさい戦いができるか。それが番狂わせを起こすためのポイントだ。

ラストチャンスという意味では、今季不振の香川個人も同様。チーム状況を考えれば、おそらく出場のチャンスはあるはず。大一番でチームの勝利に貢献する活躍を見せれば、一気に巻き返せる。反対に、何もインパクトを残せなければ、もう来季のマンUに居場所はない。踏ん張りどころだ。

バイエルンに続くのは、昨季ベスト4のバルサ、レアルのスペイン勢。ただ、両チームとも相変わらずメッシ、クリスティアーノ・ロナウドという個人の力に頼ったサッカーをしているのは気になるところ。

特に、バルサはバイエルンと対戦した昨季のCL準決勝で、メッシを徹底マークされて2戦合計0−7という大敗を喫している。メッシに偏重した攻撃面を解消すべく獲得したネイマールは頑張っているけど、主力の高齢化のせいか、最近は一時期ほどの強さが感じられない。今のバイエルンにはやはり分が悪い。

バルサ、レアル以外には、手堅いサッカーをするチェルシー(イングランド)、大型補強で勢いのあるパリ・サンジェルマン(フランス)も面白い。

バイエルンの連覇か、それとも他クラブが意地を見せるか。準々決勝からはどの試合も目が離せないね。