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テレビ番組でお笑い芸人を目にしない日はないほど、日本人にとって芸人はなじみ深い存在。しかし、熱心なお笑いファン以外はライブに行く機会はそうあるものでもなく、生で芸人のネタを見たことがない人も多いのでは? そこで今回は「間近で芸人を見たい! でも、ライブに行くほどでは……」という人にうってつけの店、「中野コメディエンヌ」を紹介しよう。

○芸人の街、中野で触れる生の笑い

若手芸人が数多く住む町として知られる東京都中野。JRと東京メトロが通る中野駅を降りて、中野通りを南へ進んでいくと、「日本初! 女芸人パブレストラン」の文字が流れるネオンの看板を目にする。

その建物の地下に「当店はキャバクラではありません」と書かれたボードのかかった小洒落た趣のドアが。中に入ると「いらっしゃいませ」と威勢のいい声が飛んできて出迎えてくれたのは、もう見るからに"女芸人"という感じの個性豊かな女性たち。うん、確かに! よくも悪くも、確かにこりゃキャバクラじゃない!!

「デブとブスとバージンばっかりでスンマセンなー。でもそれがお客さんにとっては新鮮みたいで、キャバクラ帰りのサラリーマンの方とかよく来てくれはるんよ。そっちじゃできないえげつない話なんかも、私たちはノリノリやから気つかわんでええみたいで」。

現れたのは、関西のおばちゃん感MAX! 芸歴4年で下ネタ大好きのじゅんこBAN! BAN! さん!! 綾戸智恵さんのものまね芸を得意とする彼女は、役者を12年経験した後にそのマシンガントークが買われてお笑いへと転向したそうな。うん、しょっぱなから女芸人臭がハンパない!

○期待の新人芸人53歳「家族置いて東京出てきちゃった」

「私たちは相づちするだけじゃなくて、苦労話だっていくらでも聞いてあげられるしね。それにここは女芸人の卵の店。ショータイムがあって、1ステージ3〜4組ずつ店の芸人がネタ見せするのよ。それは他の女の子の店じゃ考えられないでしょう? 」。こう話すのは、AKB48のコスチュームという実に若々しい格好をした芸歴2年目の期待の新人芸人・大木堂ゆばさん、53歳。復唱しますね。53歳!

「元々、山梨で20年間主婦やってたんだけど、親戚にあのサンドウィッチマンの伊達くんがいてね。M-1優勝後に彼らのネタを見たらハマっちゃって、いても立ってもいられなくなって、家族を置いて東京出てきちゃった」。彼氏の家にアポなしで突然「来ちゃった」的なライトなノリだ、うん!

「でも家で御三どんだけしてたころに比べたらとてつもなく幸せよ。やっぱりあのまま死にたくはなかったもの。日本全国のミドルエイジ女性に夢と希望と元気と笑いを与えるためにがんばっています」。それは何よりだけど、本当に人生って何が転機になるかわからないものだ。そのゆばさんの息子と同い年の22歳だというのが、女子サッカーの宮間あや選手の「こまかすぎて伝わらないものまね」が持ちネタの小口夏生さん。見た目は先に紹介した2人に比べてかなりフレッシュだけど、店でも夏生さんは若い方ですかね?

「そうですね。私は小学生のころから芸人に憧れてたんで、高校卒業後すぐに芸人になりました。でも男芸人と違って、女芸人はOLなどの普通の仕事に就いてから転向する方が多いんで、この店でも20代後半から30代の方が多いんです。ゆばさんはぶっち切りですが(笑)」。

だがその幅広い年齢層が、芸人の店然とした独特の雰囲気を醸し出しているのかもしれない。

○芸を磨く女芸人の受け皿に

しかし、そもそもどうしてこういう店をオープンしようと思ったのだろう。中野コメディエンヌのオーナーで自身も芸人である"牙一族の兄者"氏に聞いてみた。「芸人って、やっぱりそれだけで食べていけるのは一握りなんで、芸人としての仕事をしつつお金をそれなりに稼げる場所を作ってあげたいってことで始めたんですよ。ここではネタ見せができるので、芸も磨けますからね」。

なんて良心的なコンセプト! オープンから5年足らずで約60人もの女芸人が所属していたのもうなずける。志だけでは腹は膨れぬ、そんな彼女たちの受け皿になっているようだ。しかも、舞台前にネタの感触を確かめられるなんて、芸人さんにとっては願ったりかなったりではなかろうか……なかろうかーーーッ!!

「まあここでウケても、ライブで滑ることは多々あるけどね(笑)。ここはみんなお酒入ってるから空気があったかいんよ。でもキャバクラより楽しいって言って帰っていくお客さんも結構いるから、そういう言葉は本当にうれしいわね」(じゅんこBAN! BAN! さん)。

○「マイナビニュースを見た! 」で激安になるぞ!!

女芸人さんと会話を楽しむのもいいが、ここはパブレストラン。お通し付きの焼酎、ウィスキー飲み放題プランは90分男性4,980円・女性2,980円だが、ゆばちゃんが駅前で配っている店のティッシュを持っていけば50分で2,980円。更に「マイナビニュースを見た!! 」と言えば、60分2,980円でOKだという。これを利用しない手はないぞ!

フードは別料金だが、こちらも充実している。「唐揚げピッチャー」(1,180円)はドデカイピッチャーにジューシーな唐揚げがギッシリ。「ロシアンたこ焼き」(1,180円)は8つのたこ焼きのどれかにわさびが入っているという、上島竜平師匠あたりと一緒に楽しみたいまさに芸人の店らしいメニューだ。飲んで食って笑って……このラインナップなら日々の憂いもすっ飛ばせるに違いない。

○いよいよネタ見せタイム! 過去にはあのキンタローも在籍

ということで、いよいよお待ちかねのショータイム! 小口夏生さんはなでしこJAPANの宮間あや選手のものまねを、大木堂ゆばさんは強烈な1人ショートコントを、じゅんこBAN! BAN! さんは綾戸智恵さんのものまねをそれぞれ舞台上で披露。

うん……何か……何かすげぇ! 今ここで文章化しただけでは伝わりきらないんで、ネタの詳細に興味のある方はぜひ自分の目で確かめてもらいたいが、何かえも言われぬ空気感と勢いがビシビシと肌に突き刺さります!!

「ゆくゆくはテレビで見るような芸人さんもここで定期的にネタやってもらうようにしたいとは思ってます。正直、彼女らのネタはまだまだ粗削りですけど、うちの一番のコンセプトはいつ売れるかわからない芸人さんに会えるということ。あのキンタローだってうちにいたんですからね」(牙一族の兄者氏)。

今をときめくあのキンタローがこの店に!? これは第二、第三のキンタローを輩出する可能性だって全然否定できないぞ。

「芸人って芸歴は関係なくて、しっかりと努力してればあとは運とタイミングなんです。今はオーディションとかで悔しい思いをしてますけど、いつか絶対に売れてみせますよ」(小口夏生さん)。

……目がキラキラしていて、まぶしいくらいだ。いや、お笑いって誰が売れるか本当にわからない。がんばれ、絶対に売れてやれ! と心底彼女たちの今後の活躍を祈願し、笑いで満ちあふれるにぎやかな店を後にしたのだった。

(文・A4studio武松佑季)

(A4studio)