セルビア戦、ベラルーシ戦出場18選手、識者たちの採点表
2連敗、しかも無得点で終わった今回の欧州遠征。サッカージャーナリスト3人が出場全選手を採点する(10点満点で平均は5.5点。2試合に出場した選手はその平均)。総じて攻撃陣への評価が低かった。
■この内容で疑いを持つなというのは無理――浅田真樹
2試合を通じて、ほとんどいいところがなかったというのが率直な印象だ。
それでもセルビア戦はわずかながら、相手を押し込んでセカンドボールを拾い、連続攻撃を仕掛ける時間もあったが、ベラルーシ戦は皆無。それどころか守備時に全体がズルズルと下がり、逆に連続攻撃を受けて失点するなど、ベラルーシ戦は相手との力関係を考えると、最近ではあまり記憶にないほど酷い試合だった。
一度完成されたチームがさらに上を目指すために試行錯誤しているのだろうが、アジアカップ優勝から2年半以上が経ち、1トップが変わっただけのメンバー構成でどれだけサッカーを変えられるのか。この内容で疑いを持つなというのは無理がある。
柿谷という新戦力もまったくチームに取り込めておらず、目立った好材料もなし。11月にはヨーロッパの一線級と戦う2試合が予定されているが、今の日本代表はそれを腕試しの場として有効に活用できる状態にあるのかどうか。今回の2試合を見た後では、「場違いなところに来てしまった」などということにならないかと、少なからず不安を感じてしまう。
【GK】
川島永嗣 5.5
前への飛び出しや足元でのつなぎに安定欠く
【DF】
長友佑都 5.5
孤立する場面も多く、攻撃力を生かせず
吉田麻也 5.5
縦への配球の判断悪く、攻撃の起点になれず
今野泰幸 6
守備では苦しい場面あったが、攻撃で工夫が見えた
内田篤人 6
試合展開をよく読み、質の高い攻撃参加
森重真人 6
全体に堅実なプレイも、やや守備での軽さが見えた
酒井高徳 5.5
ミスなくこなすも攻撃面で持ち味出せず
【MF】
長谷部誠 5
ボランチとしてはボールロストが多すぎる
遠藤保仁 5
パスミス目立ち、攻撃を組み立てられず
細貝萌 5
リズムに乗れず、致命的なパスミスを犯す
山口螢 6
パスミスあったが、攻守のつなぎ役として及第点
香川真司 4.5
ボールを迎えにいくばかりで持ち味を見失う
本田圭佑 5.5
誰よりも気持ちは見えたが、ミスも多かった
岡崎慎司 6
無得点も精力的に前線でボールを引き出した
清武弘嗣 5.5
香川の調子を考えれば、もっとプレイさせてもよかった
乾貴士 −
【FW】
柿谷曜一朗 5
良し悪し以前にほとんど試合に入れていない
ハーフナー・マイク 4.5
パワープレイ要員としては物足りず
【監督】
ザッケローニ 4.5
あらゆる意味で中途半端。結局、何もせずに2試合が終わってしまった
■チームの一体感のなさが結果に表れた――佐藤俊
今回の欧州遠征では、セルビア戦、ベラルーシ戦2試合で、得点0、失点3。数字だけで判断すると危機感しかないが、選手ひとりひとりが得た収穫は少なくないようだ。実際に、守備の意識は向上していたし、攻撃も得点にはつながらなかったものの、これまでにない形が見られた。ただし、選手それぞれで、収穫に対する意識の差がある。そのうえ、チーム内には「レギュラー組」と「サブ組」という明確な"壁"があり、チーム全体として戦えているかどうかは疑問。その一体感のなさが、今回は結果として出てしまった。
【GK】
川島永嗣 4.5
不安定な時期を脱して好セーブを見せるも、ミドルシュートへの対応がやや緩慢だった
【DF】
長友佑都 4.5
前への推進力はあるが、不用意にボールを失って攻撃のアクセントにはなり切れなかった
吉田麻也 4
相手との駆け引きで後手に回ることが多く、守備が軽かった
今野泰幸 5
前に出ていく強さが戻って、DFラインのラインコントロールも統制がとれてきた
内田篤人 5.5
守備のカバーリング、シュートブロックのうまさが光った。攻撃でも動きが一番よかった
森重真人 5.5
安定した守備を見せた。縦パスで変化をつけるなど、攻撃でも存在をアピール
酒井高徳 4.5
得意の攻撃参加で、他の選手との"違い"を見せることができなかった
【MF】
長谷部誠 4.5
前線からのプレッシングは効果的だったが、攻撃面ではダイナミックさを失っていた
遠藤保仁 4.5
遠藤らしからぬパスミスが多く、攻撃のリズムに変化をつけることができなかった
細貝萌 4
セルビア戦では失点に絡むパスミスをするなど、交代選手としての役割を果たせなかった
山口螢 5.5
全体のバランスをとり、人への強さも見せた。能力の片鱗は十分にうかがえた
香川真司 3.5
プレイにも動きにもキレがなく、持ち味であるボックス内の仕事ができなかった
本田圭佑 4.5
ボールを失う回数が多く、周囲とのコンビネーションも今ひとつ。イライラが募っていた
岡崎慎司 4.5
周囲との連係に迷いがあるのか、思い切りのよさが影を潜めていた
清武弘嗣 5.5
自分でいくのか、人を使うのか、その判断とメリハリがよく、動き自体もよかった
乾貴士 4
ゴールへの意識は高いが、常に単独での突破のみ。周囲とのコンビネーションに難があった
【FW】
柿谷曜一朗 3.5
プレイの特徴を周りに理解されておらず、自己主張にも欠け、消えていることが多かった
ハーフナー・マイク ―
【監督】
ザッケローニ 4
選手交代時に戦い方を指示せず、すべて選手任せ。W杯不出場国相手に連敗した責任は大きい
■このままではW杯グループリーグ突破は困難――中山淳
この2試合で得られた収穫は、このままでは来年のW杯でグループリーグ突破が極めて困難なことを再確認できたということだけ。セルビアやベラルーシが難敵と分かっているなら、それ用の対策を持って試合に臨むことが本番のためのテストになるはずで、手ぶらで戦うのでは何も収穫は得られない。問題は、ザッケローニが自らのコンセプトを押し殺し、選手任せにしていることにある。もはやザッケローニ体制は限界だと思う。
【GK】
川島永嗣 5.5
セルビア戦の2失点は仕方ないが、ベラルーシ戦の失点ではミドルに対する弱さを露呈。それ以外はファインセーブもあり及第点の出来だった
【DF】
長友佑都 5
持ち前のハードワークと攻撃参加は見せたが、そこに輝きはなかった。ベラルーシ戦では守備面のミスも目立つなど、期待値からすると低調に終わった
吉田麻也 5
個人的なミスは少なくなったものの、依然として好調時とはほど遠い出来。ビルドアップに関われず、安全策に終始。何よりもっと自信を持ってプレイすべき
今野泰幸 6
このランクの相手であれば問題なくプレイできることを証明。サイズの差もクレバーな守備でカバーし、ファウルを使いながらも競り合いに上手く対応していた
内田篤人 6
これまでは左とのバランス調整を重視していたが、今回は左が機能しないと見るや積極的に攻撃参加。地味ながら、いつの間にかチームに不可欠な選手となっている
森重真人 5.5
ベラルーシ戦の後半途中から3バックの右に入ったが、特筆すべきプレイはなかった。国際レベルで未知数な部分は多いが、3−4−3要員として地位を得た
酒井高徳 5
ベラルーシ戦で負傷した長友に代わって途中出場。最後は右SBを務めたが力不足は否めない。得意の攻撃面で仕事をできず、守備面の不安定さは改善されていない
【MF】
長谷部誠 5
一時期に比べればよくなったが、それでもこの2試合におけるボールの配給や攻撃参加は不十分。ボランチとしての役割は半分しかこなせていない
遠藤保仁 5
セルビア戦の失点場面でも守備力の弱さを露呈してしまった。アジアを出ると、ボランチの守備力は最低条件。来年に迫る本番を考えると、その起用方法が悩ましい
細貝萌 5
セルビア戦の後半途中から出場して2失点目の原因となった。ただし、スタメン起用されてもっとプレイ時間が増えれば、違った顔を見せそうな雰囲気はある
山口螢 5.5
ベラルーシ戦で長谷部と変わって出場するも、特筆すべきプレイはなかった。まだ相手に振り回されている印象があり、自分の特長を出すまでには至っていない
香川真司 5
4.5に限りなく近い5点。もはやアンタッチャブルな選手になっているが、そこまでの仕事ができていないのが問題。焦りもあるだろうが、初心に立ち返るべし
本田圭佑 5.5
フィジカルの強さを改めて証明。屈強なセルビアやベラルーシの選手相手でも球際で勝てていた。しかし決定的な仕事はできず、全体的に消化不良に終わった
岡崎慎司 5.5
いつものように献身的にプレイしたが、少ないチャンスをものにするという部分では決定力不足を露呈。内田とのコンビネーションも改善の余地あり
清武弘嗣 5.5
セルビア戦の後半途中から出場するも、存在感はなかった。守備に弱点があるだけに、香川のバックアッププレイヤーの域を出ないのが現状
乾貴士 −
【FW】
柿谷曜一朗 4.5
1トップを任せるには荷が重い。相手CBとの駆け引きができず、何もできないまま終わった。相手の陰に入る場面が目立ち、味方からパスをもらえなかった
ハーフナー・マイク −
2試合ともプレイ時間が少ないため採点不能。指揮官がチームにパワープレイを徹底できないなら、起用の意味はない
【監督】
ザッケローニ 4
これでは誰がやっても同じ。この2試合における采配はただ先発を選んだだけ、と言われても仕方ない。ピッチ上の問題も根深く、複雑に絡み合っている。ここまで問題を放置している指揮官に存在意義はない