右手の拳を叩きつけ、悔しさをむき出しに。機能しないチームに苛立つ本田圭佑
気温13度。どんよりとした曇り空の中、ミンスク郊外のジョジナで行われたベラルーシ戦。日本は11日のセルビア戦(ノヴィサド)の反省を踏まえ、立ち上がりから積極的に攻めに出た。が、前半終了間際に相手ボランチ・ティゴレフにまさかの強烈なミドルシュートを決められ、0−1のビハインドを背負って後半突入を余儀なくされた。
相手が新戦力を大量投入しテスト的な色合いを強めてくる中、日本は攻めあぐねて1点を奪えない。アルベルト・ザッケローニ監督は50分すぎに柿谷曜一朗(セレッソ大阪)を下げて、森重真人(FC東京)を投入。4−2−3−1から3−4−3へと布陣変更を試みたものの、攻撃の活性化にはつながらなかった。
そんな68分、長谷部誠(ニュルンベルク)の縦パスを受けた本田圭佑(CSKAモスクワ)が左から抜け出しかけたところで複数のDFにつぶされた。その瞬間、本田は衆人環視の中、右手の拳をピッチに思い切り叩きつけ、苛立ちを爆発させたのだ。
これまでも狙い通りのサッカーができない時は悔しそうな表情を浮かべることが多々あった本田。だが、ここまで激しく感情を表に出したことはかつてなかった。それほど機能しない日本代表攻撃陣に強い消化不良感を抱いていたに違いない。
それでも彼は気を取り直し、何度か強引にゴール前への侵入を図ったり、好位置からFKを蹴ったが、どうしてもゴールが遠い。セルビア戦でも決定機らしい決定機のなかった本田は2試合連続無得点。チームも2014年ブラジル・ワールドカップ予選敗退国に2連敗という最悪の形で10月2連戦を終えることになってしまった。
ブラジル、イタリア、メキシコに3連敗を喫した6月のコンフェデレーションズカップ(ブラジル)の時、失点はこそ多かったものの、本田や香川真司(マンチェスター・U)、岡崎慎司(マインツ)ら攻撃陣には得点の匂いが感じられた。ところが、ここへきて日本自慢のアタッカー陣も停滞してしまっている。所属クラブで苦悩する香川、岡崎より本田は恵まれた状態にいるはずだが、今回の2連戦では得点の迫力と凄みが影を潜めた。得意のFKも枠に飛ばず、どこか中途半端な印象が強かった。
チームと自分自身の厳しい現実に打ちひしがれたのか、タイムアップの笛が鳴るや否や、本田は早々とロッカールームへと引き上げ、チーム全員で揃ってサポーターに挨拶する場にも顔を出さなかった。彼としては1人になって頭を冷やし、冷静さを取り戻したかったのだろう。
重苦しい雰囲気の漂う中、内田篤人(シャルケ)や長谷部、香川らザックジャパンの主力たちが次々とミックスゾーンに登場。それぞれチームの課題や自身の改善点などを言及したが、本田だけはなかなか出てこない。一足先にモスクワに戻るため、その準備があったのだろうが、彼としてはメディアの前で理路整然と試合分析ができるようになるまで、じっくりと時間をかけたかったのかもしれない。
「勝てないというところがある意味、収穫だったのかなと。アウェーで勝つということで日本はステップアップしないといけなかったんですけど、それができなかったのは残念。でも実力ではある。なぜアウェーだと結果が出ないのか、自分たちが悪いのか相手がいいのか…。メンタル面がプレーに影響している部分も多少なりともあると思うんで、普段のリーグ戦でもっと結果にこだわってプレーすることで、僕らのレベルもさらに向上していくと思います。ただ、自分たちの方向性は間違っていない。セルビアに対してもベラルーシに対しても、90分間自分たちのサッカーを貫いていたのは1つの進歩だと思う。ここで僕らがブレるようなことがあれば、それが一番ダメなことだと僕は思いますね」と本田は努めて前向きにコメントした。
ブレずに前進を続けるのは悪いことではないが、2013年国際Aマッチ8敗目という現実はやはり重い。このままではブラジル大会1次リーグ敗退も現実味を帯びてくる。しかし本田は、今の勝てない状態をブラジル本大会で一段とハイレベルなものを魅せるための足踏みだと強調している。
「ワールドカップ用のさらに大きなものを披露しようとして、今はそれを組み立てている段階で。そこに新たなトライをしていることで、前と同じようにすれば得点もできたかもしれないことでもうまくいかずに、以前のよさが出ないこともある。そのちぐはぐさは若干あると思う。でもアジアカップで優勝した時のサッカーをワールドカップでやろうとは思わないし、一歩も二歩も先に行くためにシミュレーションしながら戦っている。非常にポジティブな感じですよ」と彼はどこまでも強気だった。
その強気を勝利に結びつけるためにも、CSKAに帰って自ら貪欲にゴールを奪うことが求められる。かつてオランダ2部でゴールを量産し、VVVフェンロを地獄の淵から救い出したように、本田は自分から泥臭く状況を変えていく必要がある。
彼と香川の攻撃の2枚看板が本調子を取り戻さなければ、ザックジャパンの未来はない。本田にはこの日味わった悔しさを飛躍のエネルギーにしてほしい。
文●元川悦子
相手が新戦力を大量投入しテスト的な色合いを強めてくる中、日本は攻めあぐねて1点を奪えない。アルベルト・ザッケローニ監督は50分すぎに柿谷曜一朗(セレッソ大阪)を下げて、森重真人(FC東京)を投入。4−2−3−1から3−4−3へと布陣変更を試みたものの、攻撃の活性化にはつながらなかった。
これまでも狙い通りのサッカーができない時は悔しそうな表情を浮かべることが多々あった本田。だが、ここまで激しく感情を表に出したことはかつてなかった。それほど機能しない日本代表攻撃陣に強い消化不良感を抱いていたに違いない。
それでも彼は気を取り直し、何度か強引にゴール前への侵入を図ったり、好位置からFKを蹴ったが、どうしてもゴールが遠い。セルビア戦でも決定機らしい決定機のなかった本田は2試合連続無得点。チームも2014年ブラジル・ワールドカップ予選敗退国に2連敗という最悪の形で10月2連戦を終えることになってしまった。
ブラジル、イタリア、メキシコに3連敗を喫した6月のコンフェデレーションズカップ(ブラジル)の時、失点はこそ多かったものの、本田や香川真司(マンチェスター・U)、岡崎慎司(マインツ)ら攻撃陣には得点の匂いが感じられた。ところが、ここへきて日本自慢のアタッカー陣も停滞してしまっている。所属クラブで苦悩する香川、岡崎より本田は恵まれた状態にいるはずだが、今回の2連戦では得点の迫力と凄みが影を潜めた。得意のFKも枠に飛ばず、どこか中途半端な印象が強かった。
チームと自分自身の厳しい現実に打ちひしがれたのか、タイムアップの笛が鳴るや否や、本田は早々とロッカールームへと引き上げ、チーム全員で揃ってサポーターに挨拶する場にも顔を出さなかった。彼としては1人になって頭を冷やし、冷静さを取り戻したかったのだろう。
重苦しい雰囲気の漂う中、内田篤人(シャルケ)や長谷部、香川らザックジャパンの主力たちが次々とミックスゾーンに登場。それぞれチームの課題や自身の改善点などを言及したが、本田だけはなかなか出てこない。一足先にモスクワに戻るため、その準備があったのだろうが、彼としてはメディアの前で理路整然と試合分析ができるようになるまで、じっくりと時間をかけたかったのかもしれない。
「勝てないというところがある意味、収穫だったのかなと。アウェーで勝つということで日本はステップアップしないといけなかったんですけど、それができなかったのは残念。でも実力ではある。なぜアウェーだと結果が出ないのか、自分たちが悪いのか相手がいいのか…。メンタル面がプレーに影響している部分も多少なりともあると思うんで、普段のリーグ戦でもっと結果にこだわってプレーすることで、僕らのレベルもさらに向上していくと思います。ただ、自分たちの方向性は間違っていない。セルビアに対してもベラルーシに対しても、90分間自分たちのサッカーを貫いていたのは1つの進歩だと思う。ここで僕らがブレるようなことがあれば、それが一番ダメなことだと僕は思いますね」と本田は努めて前向きにコメントした。
ブレずに前進を続けるのは悪いことではないが、2013年国際Aマッチ8敗目という現実はやはり重い。このままではブラジル大会1次リーグ敗退も現実味を帯びてくる。しかし本田は、今の勝てない状態をブラジル本大会で一段とハイレベルなものを魅せるための足踏みだと強調している。
「ワールドカップ用のさらに大きなものを披露しようとして、今はそれを組み立てている段階で。そこに新たなトライをしていることで、前と同じようにすれば得点もできたかもしれないことでもうまくいかずに、以前のよさが出ないこともある。そのちぐはぐさは若干あると思う。でもアジアカップで優勝した時のサッカーをワールドカップでやろうとは思わないし、一歩も二歩も先に行くためにシミュレーションしながら戦っている。非常にポジティブな感じですよ」と彼はどこまでも強気だった。
その強気を勝利に結びつけるためにも、CSKAに帰って自ら貪欲にゴールを奪うことが求められる。かつてオランダ2部でゴールを量産し、VVVフェンロを地獄の淵から救い出したように、本田は自分から泥臭く状況を変えていく必要がある。
彼と香川の攻撃の2枚看板が本調子を取り戻さなければ、ザックジャパンの未来はない。本田にはこの日味わった悔しさを飛躍のエネルギーにしてほしい。
文●元川悦子