今季ブンデスリーガ1部でプレイする日本人は9人。大半が代表選手であり、コンフェデ杯に参加していたため、出遅れが心配された。だがふたを開けてみれば、ほとんどの選手が開幕節の試合に出場を果たしていた。各選手が所属チームでしっかりポジションをキープしており。順調なスタートを切ったと言えよう。

 嬉しいのは岡崎慎司(マインツ)、細貝萌(ヘルタ・ベルリン)という2人の移籍組がきっちり結果を出したことだ。

 岡崎は古巣シュツットガルトを相手に、念願のゴールをあげた。右からのボールを左足でコントロールし、最後は寄せてきたディフェンダーの股を抜く華麗なシュートで、この日の2点目を決めている(試合はマインツが3−2で勝利)。

 去年はリーグ戦でわずかに1点。ヨーロッパリーグと合わせても2ゴールしかあげられなかった岡崎は、この移籍にストライカーとして期すものがあると常に口にする。出場は4−2−3−1の左MFとしてだったが、得点をあげたことで、今後はチーム内でもスムーズに自分のプレイを貫けるようになるだろう。ちなみにその報を聞いた内田篤人は「本当? 良かったね。岡ちゃんの得点って久々に聞いた」と、冗談めかしながらも嬉しそうだった。

 一方の細貝は、本職だと自負するボランチでフランクフルト戦に先発出場した。1週間前のドイツ杯ではわずか8分間の出場だった。チームに合流してから約3週間で、他の選手のほぼ半分。わずかな時間しか実戦を経験しておらず、「開幕スタメンはちょっとわからない」と弱音を吐いていた。地元メディアからもスタメンとは目されておらず、試合後は「細貝出場はサプライズだが」とルフカイ監督へ質問が飛んだ。指揮官は「全てを明かす必要なないと考えている。チームの質を上げるために細貝は起用した」と説明した。

 細貝はダブルボランチの一角でプレイし、イメージの強い守備的な役割ではなく、より高い位置で攻撃的にプレイした。細貝にボールが入ったところから縦パスが入る、いわばスイッチの役割として機能し、この日の6得点のうち2点の起点となり、1点をアシストしている(試合は6−1でヘルタが大勝)。

 対戦相手、フランクフルトの乾貴士は、4−2−3−1から中盤がダイヤモンドの4−4−2、もしくは4−3−3へとシステムの変更が行なわれたあおりを受け、ポジションを失った格好だ。ビハインドで迎えた後半立ち上がりからプレイしたが、ドリブルの回数自体も少なく、苦しんだ。試合後は苦笑いを見せながら無言で立ち去った。

 内田篤人(シャルケ)はハンブルガー戦に先発フル出場を果たしている。先週のドイツ杯ではコンディションの影響でベンチスタートだったが、途中から守備を安定させるために出場し、信頼を得ていることがうかがえた。この日は攻守に卒なくプレイ。前半は相手の左MFから徹底したプレスを受け攻撃的にプレイすることはなかったが、相手にやられることもない。後半に入ってプレスが緩むと、ベンチからは「上がれ」と指示があり、高い位置でプレイした(試合は3−3のドロー)。

 後半24分にはジョーンズからのパスを受け、中央へ好クロスを配球するなど、見せ場も作った。「あれは良い形だった。ボールが出るようになっている」と、そのシーンを満足そうに振り返った。対面でプレスをかけてきたゾウアのことは「よく知らない」と言い「いつもは髪の長いヤツ(イラチェク)だったのに違うヤツだったから、(イラチェクに)『どうしてプレイしないの』って聞いたら『知らねー』って言われた」と、対戦相手との珍しいエピソードを明かす。ブンデス4年目の余裕が感じられる幕開けだ。

 清武弘嗣(ニュルンベルク)、酒井高徳(シュツットガルト)はそれぞれの定位置で先発。コンディション調整の遅れはこの開幕戦までにきっちり間に合わせており、指揮官からは変わらぬ評価を得ているようだ(ニュルンベルクはホッフェンハイムに2−2のドロー)。また酒井宏樹(ハノーファー)もドイツ杯に引き続いてボルフスブルク戦に先発出場。本職である右SBでの起用が続いており、このまま定位置を確保するかが注目される(試合は2−0でハノーファーの勝利)。

 なお、長谷部誠(ボルフスブルク)は出場停止、金崎夢生(ニュルンベルク)はベンチ外となっている。

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