守備に奔走した日本。力の差は歴然としていた

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「中学生とプロのレベル差があった」。長友のこの試合後のコメントが、すべてを物語っていた。それほどの完敗だった。

首都ブラジリアで行われたホスト国との開幕戦。ほぼ黄色一色に埋め尽くされたスタンドは、試合前の約7万人のブラジル国家大合唱で完全に一体となり、試合開始わずか174秒でボルテージも最高潮に達した。来季バルセロナ入りが決まっている国民的アイドルのネイマールが、待望の大会初得点を決める。FWフレッジがDFマルセロのクロスをFWフレッジが胸で落し、そのボールを右足のダイレクトで強烈に叩き込んだ。

敵味方にかかわらず、平凡なミスなどには容赦ないブーイングを浴びせるセレソン・サポーター。フェリペ監督も試合前日に「ブラジル国民は今のチームをリスペクトしていない」とボヤいていたが、この先制点でブラジルはサポーターを味方につけることに成功した。

逆に日本はこの雰囲気に完全に飲み込まれてしまった。ザッケローニ監督はこの試合「空中戦では勝てないので裏のスペースで勝負したかった」と、大方の予想に反し1トップに前田でなく岡崎を起用。だが、この奇策も5度のW杯制覇を誇る王国相手にはまったく通用しなかった。世界屈指のセンターバック、ダビド・ルイス(チェルシー)、チアゴ・シウバ(パリSG)の2人に、素早いチェックでことごとくつぶされ、裏のスペースに走ることさえ許されず、起点さえも作れない。本田、遠藤さえも相手の強烈なプレスの前にらしくないミスを繰り返し、攻撃の糸口さえもほとんど見つからなかった。

前半こそ1失点で凌いだものの、後半に入った3分にパウリーニョの追加点を許すと、後半ロスタイムにはカンターから3失点目。最終的なボール支配率はブラジルの63%に対し、日本がわずか37%。この数字だけ見ても、3失点で済んだ方が不思議なくらいの一方的な展開だった。これには普段強気な本田も「残念ですが完敗です」と相手の強さを素直に認め、長友も冒頭の強烈なコメントで失望感を露わにした。

ザッケローニ監督は敗因について「選手に聞いてみないと分からない」と前置きしながらも、「私の中では2つある。1つは移動による疲労の蓄積。もう1つは早い時間帯での失点で相手を怖がってしまった」と分析。確かに、チームの主軸である本田、長友が本調子からほど遠いこの状態では、ホームで負けられない本気のブラジルと勝負できるはずはない。完敗は必然の結果だった。

次戦は19日、ザッケローニ監督の母国イタリアとの対戦。この日奮闘した内田は「監督には恥をかかせられない」と必死に前を向く。選手の落胆は想像以上に大きい。だがまだ初戦を終えたばかり。巻き返しのチャンスはある。

取材・文 / 垣内一之(スポーツニッポン)、撮影・岸本勉/PICSPORT(6月15日、ブラジリア国立競技場にて)