「あまちゃん」現地レポ。衝撃! 久慈のひとは「まめぶ」を知らなかった
「まめぶってなんですか?」
「黒砂糖とクルミを入れた団子と人参、豆腐、ごぼう、しめじをしょう油で味付けして煮たものだ」
ヒロイン天野アキと地元の海女とのやり取りだ(エキレビでは毎週頭に木俣冬による「先週の『あまちゃん』」を展開中!)。
まめぶ、それは朝の連続テレビ小説『あまちゃん』第1回から登場する謎の郷土料理。
東京育ちの女子高生アキ(能年玲奈)は夏休みに母親(小泉今日子)に連れられて北三陸市にやって来た。知らない訛りの人たちに囲まれて、出されたのがまめぶ汁である。食べる。
「さいしょはそういう反応だよね。甘さとしょっぱさが口の中で緊急会議を開くよね。結論としては……?」
「びみょうだよねー、うん。でもだんだんすきになるー。だんだんすきになれえー」
「あ……おいしい!」
冒頭から緊張しっぱなしのアキ、初めて顔をほころばせる。
時間差で笑顔になるおいしさってどんなか気になる! というわけで東京から6時間かけて鉄道を乗り継ぎ、やってきました岩手県久慈市。
「まあ東京から取材に来るなんてねえ。身近にあるものを使ったシンプルな料理ですよー」
出迎えてくれたのは『まめぶの家 駅前店』の谷地ユワノさん。
店内には能年玲奈ちゃんのサイン色紙が。ロケ中にキャストが訪れたというお店で、あまちゃん気分でいただきまーす。
お椀のなかには、細かく刻まれた野菜や焼き豆腐がぎっしり。汁はしょう油ベースでとろみがついている。匂いも見た目もけんちん汁。
そのなかに、白玉みたいなものが浮いている。これが噂のまめぶ! 噛むと弾力があった。カリッ! 急に香ばしい。中にクルミが入っている。
やがて、じわじわと、時間差攻撃で来た。甘み。黒砂糖だ。たしかに微妙である。その個性、必要?
クルミの香ばしさと甘みが口に残ったまま汁を飲む。さっきよりおいしい。醤油の味が引き立っている。後味と今の味が重なって、初めて脳がおいしいと判定。「あ……おいしい」の「……」を体感できて大満足。
「まめぶを広める活動をして、30年になりますかねえ」
ユワノさんと話していたら、おまわりさんが巡回にやってきた。
「いやあ、今日もドラマでまめぶまめぶって言われてましたね。はっはっは。小袖じゃまめぶは食べないのになーって、不思議な感じですね」
ええーーー? 海女はまめぶを食べないの?
「3年前くらいまで、久慈市の人のほとんどはまめぶを知らなかったです」とユワノさん。
昔からみんなに微妙と思われてる郷土料理、というイメージが崩れていく。微妙どころか、存在すら認知されていなかったとは。
「旧山形村の8つの集落だけで伝えられてきたものなんですね。それが全国に知られてねえ、不思議ですねえ」
ユワノさんは言うのだった。
「見せてあげたいですねえ。旧山形村。平庭高原には一面に白樺林が広がっていて気持ちいいですよ」
よし海は後回しだ! おら山へ行きてぇー。
というわけで翌日、旧山形村へ。ユワノさんの家は、民宿「まめぶの家」になっていて、その横にまめぶを作る工房がある。近所の人たちが集まって、ひとつひとつまめぶを手でこねていた。仲間に入れてもらった。
ふるいにかけた小麦粉を熱湯でこね、一口サイズにして、黒砂糖と地元産の鬼胡桃を中にいれて丸めることで、まめぶはできる。すべて手作業だ。ユワノさん指導のレシピがネットにあるので、詳しくはここを見てください。
やってみて分かったポイントを書く。
生地をまるめたあと、親指で穴をあけ、その後広げて隙間を大きくつくる。そうすると、黒砂糖が入る範囲が増えるので、じわじわと甘みがひろがる。
閉じるときは、黒砂糖が漏れないように慎重に。ちょっとでも漏れると黒く染まっちゃう。その後、丸めて終了と思いきや違うのだ。
「ぎゅうっと握って。空気を逃がすと黒砂糖がしみ出しにくくなるからね」
つぶしてからもう一度まるめ直す。
「よかったら息子の話も聞いてみてー」
まめぶ作り体験後、ユワノさんに連れて行かれたのは久慈市山形総合支所というお堅い場所だった。
職員の谷地彰さんの声は、低くて渋い。聞けば、オリジナルの持ち歌が2曲あるという。彰さんはまちおこし団体久慈まめぶ部屋のメンバーでもある。
以下、彰さんの言葉は船越英一郎のような美声で再生ください。
「2006年に、久慈市と合併して、山形村の名前は消えました。そこで落ち込んでちゃダメだ、まちおこしをしようって、B級ご当地グルメの祭典 B−1グランプリに挑戦することを決めました」
『あまちゃん』の首脳会議のように、どの料理にするか話し合ったとのこと。
「調べるうちに、まめぶが、ここにしかない珍しい料理だと分かったんです。家で食べるものっていう感覚しかなかった。価値に気づかず、ましてや他に広めるなんて考えもしていなかった」
そして東日本大震災が起きる。まめぶで炊き出しをした。岩手中の避難所を回った。
「帰ってからも、仮設住宅でまめぶ作りをやってますっていう情報が流れてきました。まめぶ作りは自然と人が輪になるんですよ。お年寄りも子供も参加できて、黒砂糖が漏れた漏れないで必ず会話が生まれる」
久慈まめぶ部屋は、2011年にB−1グランプリ正会員に認められ、二年連続で出場することになる。
まめぶはまちおこしのために再発見されたものだった! 被災地でコミュニケーションツールとして活き、少しづつ名を広げていったのだ。そんな物語があったなんて。
ドラマでも、昨日4月25日放送で、まめぶ後援会の安部小百合(片桐はいり)が海女を引退すると告白。地味で控えめなあんべちゃんが、まめぶを北三陸の名物にするために動き出す。ますます『あまちゃん』が気になる!
(与儀明子)
「黒砂糖とクルミを入れた団子と人参、豆腐、ごぼう、しめじをしょう油で味付けして煮たものだ」
ヒロイン天野アキと地元の海女とのやり取りだ(エキレビでは毎週頭に木俣冬による「先週の『あまちゃん』」を展開中!)。
まめぶ、それは朝の連続テレビ小説『あまちゃん』第1回から登場する謎の郷土料理。
東京育ちの女子高生アキ(能年玲奈)は夏休みに母親(小泉今日子)に連れられて北三陸市にやって来た。知らない訛りの人たちに囲まれて、出されたのがまめぶ汁である。食べる。
「びみょうだよねー、うん。でもだんだんすきになるー。だんだんすきになれえー」
「あ……おいしい!」
冒頭から緊張しっぱなしのアキ、初めて顔をほころばせる。
時間差で笑顔になるおいしさってどんなか気になる! というわけで東京から6時間かけて鉄道を乗り継ぎ、やってきました岩手県久慈市。
「まあ東京から取材に来るなんてねえ。身近にあるものを使ったシンプルな料理ですよー」
出迎えてくれたのは『まめぶの家 駅前店』の谷地ユワノさん。
店内には能年玲奈ちゃんのサイン色紙が。ロケ中にキャストが訪れたというお店で、あまちゃん気分でいただきまーす。
お椀のなかには、細かく刻まれた野菜や焼き豆腐がぎっしり。汁はしょう油ベースでとろみがついている。匂いも見た目もけんちん汁。
そのなかに、白玉みたいなものが浮いている。これが噂のまめぶ! 噛むと弾力があった。カリッ! 急に香ばしい。中にクルミが入っている。
やがて、じわじわと、時間差攻撃で来た。甘み。黒砂糖だ。たしかに微妙である。その個性、必要?
クルミの香ばしさと甘みが口に残ったまま汁を飲む。さっきよりおいしい。醤油の味が引き立っている。後味と今の味が重なって、初めて脳がおいしいと判定。「あ……おいしい」の「……」を体感できて大満足。
「まめぶを広める活動をして、30年になりますかねえ」
ユワノさんと話していたら、おまわりさんが巡回にやってきた。
「いやあ、今日もドラマでまめぶまめぶって言われてましたね。はっはっは。小袖じゃまめぶは食べないのになーって、不思議な感じですね」
ええーーー? 海女はまめぶを食べないの?
「3年前くらいまで、久慈市の人のほとんどはまめぶを知らなかったです」とユワノさん。
昔からみんなに微妙と思われてる郷土料理、というイメージが崩れていく。微妙どころか、存在すら認知されていなかったとは。
「旧山形村の8つの集落だけで伝えられてきたものなんですね。それが全国に知られてねえ、不思議ですねえ」
ユワノさんは言うのだった。
「見せてあげたいですねえ。旧山形村。平庭高原には一面に白樺林が広がっていて気持ちいいですよ」
よし海は後回しだ! おら山へ行きてぇー。
というわけで翌日、旧山形村へ。ユワノさんの家は、民宿「まめぶの家」になっていて、その横にまめぶを作る工房がある。近所の人たちが集まって、ひとつひとつまめぶを手でこねていた。仲間に入れてもらった。
ふるいにかけた小麦粉を熱湯でこね、一口サイズにして、黒砂糖と地元産の鬼胡桃を中にいれて丸めることで、まめぶはできる。すべて手作業だ。ユワノさん指導のレシピがネットにあるので、詳しくはここを見てください。
やってみて分かったポイントを書く。
生地をまるめたあと、親指で穴をあけ、その後広げて隙間を大きくつくる。そうすると、黒砂糖が入る範囲が増えるので、じわじわと甘みがひろがる。
閉じるときは、黒砂糖が漏れないように慎重に。ちょっとでも漏れると黒く染まっちゃう。その後、丸めて終了と思いきや違うのだ。
「ぎゅうっと握って。空気を逃がすと黒砂糖がしみ出しにくくなるからね」
つぶしてからもう一度まるめ直す。
「よかったら息子の話も聞いてみてー」
まめぶ作り体験後、ユワノさんに連れて行かれたのは久慈市山形総合支所というお堅い場所だった。
職員の谷地彰さんの声は、低くて渋い。聞けば、オリジナルの持ち歌が2曲あるという。彰さんはまちおこし団体久慈まめぶ部屋のメンバーでもある。
以下、彰さんの言葉は船越英一郎のような美声で再生ください。
「2006年に、久慈市と合併して、山形村の名前は消えました。そこで落ち込んでちゃダメだ、まちおこしをしようって、B級ご当地グルメの祭典 B−1グランプリに挑戦することを決めました」
『あまちゃん』の首脳会議のように、どの料理にするか話し合ったとのこと。
「調べるうちに、まめぶが、ここにしかない珍しい料理だと分かったんです。家で食べるものっていう感覚しかなかった。価値に気づかず、ましてや他に広めるなんて考えもしていなかった」
そして東日本大震災が起きる。まめぶで炊き出しをした。岩手中の避難所を回った。
「帰ってからも、仮設住宅でまめぶ作りをやってますっていう情報が流れてきました。まめぶ作りは自然と人が輪になるんですよ。お年寄りも子供も参加できて、黒砂糖が漏れた漏れないで必ず会話が生まれる」
久慈まめぶ部屋は、2011年にB−1グランプリ正会員に認められ、二年連続で出場することになる。
まめぶはまちおこしのために再発見されたものだった! 被災地でコミュニケーションツールとして活き、少しづつ名を広げていったのだ。そんな物語があったなんて。
ドラマでも、昨日4月25日放送で、まめぶ後援会の安部小百合(片桐はいり)が海女を引退すると告白。地味で控えめなあんべちゃんが、まめぶを北三陸の名物にするために動き出す。ますます『あまちゃん』が気になる!
(与儀明子)