ただし、200兆円もの公共事業投資を目論む安倍政権下では、この他にも利権が生まれると見られている。その筆頭が、民主党政権が先送りにしてきたTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)への参加なのである。
 安倍氏は「聖域なき関税撤廃を前提にする限り参加に反対」とする一方で、「守るべき国益が守られれば、交渉していくのは当然」と発言。そのため、今後は交渉のテーブルに着くと見られるが、そこにも利権の構図が渦巻いているのだ。

 政治アナリストが解説する。
 「米国は日本が参加するなら、まず関税を撤廃した米国車の輸入枠拡大を迫る魂胆。さらに軽自動車の税制優遇制度を撤廃させ、アメ車を日本国内で売りまくろうとしているのです。また、現在、輸入米には778%もの関税がかけられているが、関税撤廃で日本への米や牛肉の輸出拡大を目論んでいる。そのため手先となる日本の議員や経済学者、アナリスト、反対にこれをはねのけようとする議員や各種団体などにも、想定外の利権が生まれるのです」

 ちなみに、米国はTPPにかこつけて、金融利権も狙っているという。
 「それが、かんぽと預貯金を合わせた270兆円に及ぶ郵政マネーなのです。米国は、『TPPに参加するなら、政府が持つ日本郵政の株を市場に放出しろ!』などと迫っている。米国金融会社が大株主となり、日本人の貯金を投資に回して自国だけが肥え太ろうとしているのです」(同)

 要は、米国側のロビー活動家とそれを拒む日本側の代理人らに利権が生まれるわけだが、TPPを巡る暗闘は、すでに水面下で始まっているのだ。
 そのいい例が医療業界だ。12月19日に、日本医師会は自民党への支持を宣言。'13年夏の参院選に同党公認の組織内候補を出馬させると宣言したが、これがTPPへの参加を睨んだものといわれているのである。
 「会員数20万人弱といわれる日本医師会が危惧しているのは、公的医療保険の崩壊なのです。TPP参加となれば、米国資本が病院経営に続々参入。米国は、日本政府に自由診療(保険を使わない高額診療)と公的保険診療の混じった混合診療をゴリ押しするはずで、この手の病院が乱立すれば診療報酬体系が崩壊する。日本の医療機関は壊滅的打撃を受けると見られているのです」(経済アナリスト)

 つまり、日本医師会は族議員を選出し、TPP交渉時に条件闘争を仕掛けようとしているのである。
 前出の政治部記者は、「端的に言えば、これは日本の医療費36兆円の奪い合い。今後もこうした動きはあらゆる業界から出てくる」と言うが、一方で自民党本部や水際の議員たちに、ゾクゾクと献金が集まっていくことも確実なのだ。