東京も顔負け!? サンフランシスコが「20平米のアパート」を許可
もしあなたがサンフランシスコに暮らしているならば、すでにクローゼットの中に住んでいるような感じがしているかもしれない。しかし同市がこのほど許可した最小の部屋は、1台の車を停めるくらいのスペースになる。
サンフランシスコの管理委員会は11月20日(米国時間)、220平方フィート(20平方メートル)の「マイクロ・アパートメント」の実験を暫定承認した。最近の都市開発で人気になっている、念入りに設計されたコンパクトな住居だ。
12月に市長の承認が得られると、この計画は、「カナダで最小」とされるヴァンクーヴァーの「マイクロ・ロフト」を小ささで上回ることになる(マイクロ・ロフトは226平方フィートだ)。ニューヨークが実験している275平方フィート(26平方メートル)の住居などは、飛行機の格納庫のように広いということになるだろう。
マイクロ・アパートメントは、東京やパリのような人口の多い都市では以前から存在してきた。2008年には世界人口の半分が都市に住むようになり、田舎に住む人口を超えたと初めて報告されたなか、ロンドンやポーランド、中国などで、マイクロ・アパートメントの実験が開始されている。
サンフランシスコの規則では、最低150平方フィート(14平方メートル)の居住空間に加え、バスルームとキッチンが必要とされているが、キッチンはリヴィングとひとつにすることができる。当局は今回、全部で375の部屋を暫定的に許可した。
このマイクロ・アパートメントがどんな感じになるのか手がかりを得ようと、WIREDは開発業者のパトリック・ケネディが先週公開したサンフランシスコの新しいマイクロ・アパートメント、「SmartSpace」を訪ねた。このアパートメントには、280〜310平方フィートの部屋が32軒入っている。
SmartSpaceは各部屋が細長い。玄関側にバスルームがあり、コンピューター作業スペースの壁にはテレビが掛かっている。窓際に席があり、油圧式でテーブルが出てくる。
ユニットのなかには、ベッドをたたむと一体化したダイニングテーブルが姿を現すものもある。バスルームそばのクロゼットは、洗濯機と乾燥機のほか、小さな対流式オーヴンなどが機器をしまえるように設計されていた。食器洗い機はあるが、2口の小さな電気コンロの下にオーヴンは無い。
デモユニットにはいろいろなガラクタがちらかっていなかったせいもあるが、部屋は広く感じた。ケネディ氏によると、天井が高いことと窓が大きいことが重要だそうだ。ソファを開くと収納があったり、バスルームの上に小さな屋根裏があったりと、収納が工夫されている。同氏の会社では160平方フィート(15平方メートル)の実験的な部屋に住む大学院生の意見を参考にして設計を行っているという。
SmartSpaceの部屋代は1カ月959ドルからで、部屋も高品質だ。しかし、マイクロ・アパートメントの市場が完全に解放されると、もっと低い品質の部屋も現れてくる可能性がある。サンフランシスコの新規則に関して議論があったのもそれが理由だ。最終的には、375部屋についてのみ許可して様子を見るという暫定承認となった。
小型化と効率化の議論では、SRO(single room occupancy:キッチンとバスルームが共同の一室ユニット)がよく言及される。SROは低所得者向けの住宅として使われるが、サンフランシスコなどでは、個別のバスとキッチンを義務づけている。
一人で暮らす借家人のための小さな部屋は、低所得の家庭向けの市場にとってプラスなのかマイナスなのかについては議論がある。家庭向けサイズ物件の建設や提供が減少することになるかもしれないが、単身者にフラットシェアの代替案が提供され、家族向けに残される物件が増える可能性もある。
※以下の動画は、「カナダで最小」とされるヴァンクーヴァーのマイクロ・ロフトを紹介するニュース動画。もともとSRO式の格安ホテルとして使われていた古いビルを改装して、1カ月850ドルで貸し出されるアパートメントにしたため、ホームレスを作り出すものだと抗議する人々の姿も報道されている。
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