第3回WBC(World Baseball Classic)が来年3月に開催されるが、日本代表チーム、通称侍ジャパンでは、日本人メジャーリーガーの参戦に黄色信号が灯っている。 
 
 主力投手として期待が寄せられていたテキサス・レンジャーズダルビッシュ有はこのほど、来季への調整を最優先するため、参加を辞退。「母国である日本を代表するのは非常に光栄なことなので、とても難しい決断でした。今は来季を見据えて、十分な休養をとることが最も大切だという決断に至りました」と、代理人を通じ声明を発表した。 
 所属球団が決まっていない川崎宗則も辞退した他、イチロー黒田博樹青木宣親らの参加も微妙なところだ。
 
 わが国はこれまで、WBCに本腰を入れない米国に苛立ちを覚えていたが、こうも日本人メジャーリーガーの参加が怪しくなると、考え方を改めなくてはならないだろう。 
 
 米国がWBCに消極的なわけではない。メジャーリーガーにとって世界一決定戦はワールド・シリーズであって、WBCは二の次なのだ。 
 
 となると、WBCの開催時期を見直そうとする案も上がるが、現実的には難しい。メジャーリーグのコミッショナー、バド・セリグ氏も、「(開催時期に)問題があることは承知しているが、動かせないだろう」という。 
 
 WBCの開催時期については一時、ワールド・シリーズ終了後の11月、もしくはオールスター・ゲーム直後の7月が候補に挙がった。 
 
 だが、ワールド・シリーズ後の開催は、選手の疲労度から立ち消えになった。選手は年間162試合も戦い、ワールド・シリーズに出場した選手たちは、さらにそこから1カ月間、死闘を繰り広げる。まさに満身創痍だ。 
 かつての日米野球のような、エキシビジョン・マッチのイベントならともかく、WBCのような真剣勝負を、ワールド・シリーズ後に開催するのは難しい。 
 わが国にも、クライマックス・シリーズ日本シリーズアジア・シリーズとの調整が課される。 
 
 オールスター・ゲーム後の7月の開催は、ビジネスの側面から反発が寄せられた。7月は球団にとって、最も集客が期待できる時期だ。 
 仮に7月にWBCを開催すれば、その分、レギュラーシーズンの閉幕が後ろにずれ込む。そのときポストシーズン・ゲーム出場が絶望になったチームは、残りの試合が消化試合になる。 
 そんなリスクを考えれば、球団は7月のWBC開催に賛成できない。 
 
 はたしてWBCは3月に開催されることになったが、メジャーリーガーの多くが、ワールド・シリーズを優先している。 
 わが国にとっては歯がゆいばかりだが、こればかりは、価値観の差。海の向こうからどんなに声高に叫んでも、メジャーリーガーには響かないだろう。 
 
 国際野球連盟は昨年、WBCを世界一決定戦として公認することを決めたが、わが国とメジャーリーガーの価値観の違いはいかんともしがたい。