概念の工作〜「成功」の反対は?…「失敗」ではない/村山 昇
失敗は成功までの一つの過程であって、その経験知は成功の土台になるので資産である。成功も失敗も資産側に計上すべきプラス価値のものである。では、マイナス価値に置かれるものは……?
私は最近、「概念工作家」という肩書きを付けるようになりました。英語表記では「コンセプチュアル・クラフツパーソン(conceptual craftsperson)」と勝手に造語をしています。
私は、子どものころから工作が好きで、木工やねんど細工、紙工作、電気回路のハンダ付けなど時間を忘れてやっていました。大人になるにつれ、職人の手仕事に関心が湧いてきて、「クラフツマンシップ」というような精神性にあこがれも抱くようになりました。私が最初、メーカーに就職したのもそんな流れでした。
ところが私は、いつごろからか、モノの切り貼り・組み立て・造形よりも、概念・観念といったコトの切り貼り・組み立て・造形といった表現のほうに魅力を感じるようになりました。
なぜかというと、仕事に対する動機が変わっていったからです。最初、メーカーに入り、希望どおり商品開発部門で働いていたときは、「何か新規性のあるモノをつくって、世の中を驚かせてやろう」のような、言ってみれば、「モノを通して新しいスタイルを提案すること」に面白みを感じていたように思います。
ちなみに、“ように思います”という表現になるのは、働く動機というのは、往々にして、進行形で動いているときには見えにくいものだからです。
そうして20代の月日は流れ、30代前半くらいに、あるアート作品本に出会いました。オノ・ヨーコの『グレープフルーツ・ジュース』です。ページをめくるたび次のような文が並んでいます。
「地球が回る音を聴きなさい。」
「空っぽのバッグを持ちなさい。
丘の頂上に行きなさい。
できるかぎりたくさんの光を
バッグにつめこみなさい。
暗くなったら家に帰りなさい。
続きはこちら
私は最近、「概念工作家」という肩書きを付けるようになりました。英語表記では「コンセプチュアル・クラフツパーソン(conceptual craftsperson)」と勝手に造語をしています。
私は、子どものころから工作が好きで、木工やねんど細工、紙工作、電気回路のハンダ付けなど時間を忘れてやっていました。大人になるにつれ、職人の手仕事に関心が湧いてきて、「クラフツマンシップ」というような精神性にあこがれも抱くようになりました。私が最初、メーカーに就職したのもそんな流れでした。
なぜかというと、仕事に対する動機が変わっていったからです。最初、メーカーに入り、希望どおり商品開発部門で働いていたときは、「何か新規性のあるモノをつくって、世の中を驚かせてやろう」のような、言ってみれば、「モノを通して新しいスタイルを提案すること」に面白みを感じていたように思います。
ちなみに、“ように思います”という表現になるのは、働く動機というのは、往々にして、進行形で動いているときには見えにくいものだからです。
そうして20代の月日は流れ、30代前半くらいに、あるアート作品本に出会いました。オノ・ヨーコの『グレープフルーツ・ジュース』です。ページをめくるたび次のような文が並んでいます。
「地球が回る音を聴きなさい。」
「空っぽのバッグを持ちなさい。
丘の頂上に行きなさい。
できるかぎりたくさんの光を
バッグにつめこみなさい。
暗くなったら家に帰りなさい。
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