国立社会保障・人口問題研究所は、1月30日、日本の将来人口推計の結果概要を公表した。この推計は、5年毎に行われているもので、将来の出生推移・死亡推移について、それぞれ中位・高位・低位の3仮定を設け、それらの組み合わせにより9通りの推計を行っている。以下では、出生中位・死亡中位のケースを基準として、論じることとする。

 まず、最初に結果概要を見ておこう。わが国の将来の総人口は、2048年に1億人を割り込み、2060年には8674万人になる。これは2010年に比べて32%の減少であるが、もし出生率が中位ではなく、低位で推移すれば(1.35%→1.12%)、7997万人(38%減少)と8000万人を割り込んでしまう。

 次に、経済に最も大きな影響を与える生産年齢人口(15〜64歳)の推移を見ると、第2次世界大戦後、一貫して増加を続けてきたわが国の生産年齢人口は、1995年にピークをつけ(8726万人)、その後緩やかに低下を続けてきたが(2010年で8173万人と、この15年間で6%減少)、2027年には7000万人、2051年には5000万人を割り込み、2060年には4418万人(対2010年比46%減少)となる。

 ちなみに出生低位推計では、50年後(2060年)の生産年齢人口は3971万人(51%減少)と、4000万人を割り込んでしまう。要するに、わが国の生産年齢人口は、この50年でほぼ半減してしまうのだ。このような社会が果たしてサステイナブル(持続可能)だろうか。大いに疑問なしとしない。働く人が半分になるということは生産性の上昇がなければ、GDPが半分になるということだ。それでこの国がもつと考える方がむしろおかしいのではないか。

 従属人口指数を見ると、問題点はさらにクリアになる。生産年齢人口に対する年少人口と老年人口の相対的な大きさを比較し、生産年齢人口の扶養負担の程度を大まかに表わすための指標として、従属人口指数がよく用いられるが、老年従属人口指数(生産年齢人口100に対する老年人口の比)を見ると、2010年の36.1(働き手2.8人で高齢者1人を扶養。いわゆる騎馬戦型)が、2022年には50.2(同2人で1人を扶養)まで上昇し、2060年には78.4(同1.3人で1人を扶養。いわゆる肩車型)に達するものと見込まれる。

 なお、出生低位推計では、同1.1人で1人を扶養することとなり、ほぼ完全な肩車型社会になる。人類の5000年の歴史の中で、1人が1人を支える社会が存立し得た事例は寡聞にして知らない。

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