【寄稿連載】第五話 ホームレスが売っている『BIGISSUE』って何?
今回は松田良一さんのブログ『ホームレスのおっちゃんの溜め息』からご寄稿いただきました。
■第五話 ホームレスが売っている『BIGISSUE』って何?
俺は電車に乗っていた。
実は携帯電話を探しにいったおっちゃんたちのテントで、黒さんからメモをもらっていた。そのメモに書かれていた場所に向かっているのである。
最初にこのメモを渡されたときは、なんのことだかわからなかった。表には携帯電話とだけ書かれている。裏には駅の場所とその駅前のあるところに×印がつけてあり、神さんと名前が書いてある。
実は俺の携帯電話を拾ってくれたのは、神さんという人らしい。そしてこのバツ印の場所に今いるらしい。
俺は黒さんに礼を言って、今この場所に向かっているのである。俺は電車に揺られながら、何故こんなことになったのか考えていた。元はと言えば、自分でまいた種だから、仕方ないのだが。何でこのおっちゃんたちは、あんな生活をしているのだろうか?そして何で俺は、このおっちゃんたちが気になったのか?
俺は電車を降りると、このメモを頼りに×印と思われる所を目指した。そのバツ印がついた場所には、一人の男性が雑誌らしき物を上に掲げて立っていた。
よく見ると確かにあの日に会った、あのおっちゃんの一人だ。
俺はしばらくの間、その神さんと呼ばれるおっちゃんがしていることを見ていた。この神さんは、ストリートマガジンを売っていたのである。
ストリートマガジンとはホームレスなどが街頭などに立って販売する雑誌のことである。今世界にストリートマガジンは110誌存在している。そして四十カ国で約20万人の販売者がいると言われている。日本では皆さんも知っているように『ビッグイシュー(BIGISSUE)』* がある。2003年9月に日本で創刊している。今年で七年目に入る。もともとは1991年に、イギリスのロンドンでホームレスを支援するために始まったのが最初である。
*:『ビッグイシュー』日本版 公式サイト
http://www.bigissue.jp/
日本では今まで二千人以上のホームレスの人々が『ビッグイシュー』に登録している。そして延べ五億円以上の売り上げを販売者の人々が手にしているらしい。この数字だけを見ると、売れているように見えるが、黒字になったのは最近のことなのである。
『ビッグイシュー』の基本コンセプトは、自分で仕入れから販売そして金銭の管理までしなければならない。そのため、ある程度きちんとしておかないと失敗するのである。それ故に『ビッグイシュー』をすぐに辞めていく人も多くいる。それに立ち仕事でもあるので、肉体的な面でもきついし、一応客商売であるため、合う合わないもある。場所によっては、売れる・売れないの差もある。自立していった人も80名以上いるらしいが、中にはまた戻ってくる人もいるのである。やはりもう一度普通の生活に戻るというのは大変なことなのだろう。
神さんはというと、見ている間にも2、3人の人々が買っていく。その人一人ひとりに、丁寧に頭を下げている。俺は人が引くのを待って、神さんに声をかけた。
続く執筆: この記事は松田良一さんのブログ『ホームレスのおっちゃんの溜め息』からご寄稿いただきました。