改正雇用対策法の趣旨とも合致せず、若者の機会を奪い、潜在的失業者の権利と化している定年制度について。

「65歳までの雇用義務付け」が、実行されようとしている。もちろん、年金の支給開始年齢を引き上げざるを得なくなったことに伴う措置だ。このままだと、年金財政の逼迫にともなって近い将来に、68歳になり、70歳になりとどんどん雇用が義務付けられる年齢が上がっていくのだろう。

このような、年金制度の設計と運営の失敗の尻拭いを企業に押し付けるだけの付け焼刃を続けていたら、企業が疲弊していくだけなのは目に見えている。厚労省がやるべきことは、企業部門にセーフティネットの肩代わりをさせることではなく、「定年退職」という時代遅れの仕組みを禁じることだ。

定年退職制度は、平成19年に改正された雇用対策法にある「年齢にかかわりなく均等な機会を与える」という趣旨と矛盾している。この改正以降、企業が採用募集をする際、求人票や求人広告に原則として年齢を記載することができなくなった。働く機会を、年齢によって制限したり奪ったりすることを禁じているのである。

であれば、定年退職制度という一定年齢を超えた人達の働く機会を奪う仕組みは同じように年齢差別であって、禁止するのが筋である。採用という入り口で年齢差別を禁じるなら、退職という出口もそうしないとおかしい。

採用募集をする際の年齢表記禁止は、「多くの場合、年齢と仕事の能力には関係がない」という前提に立っている。「従って、年齢は選考に当たって重要な情報ではないのだから記載してはならない」というのは理解できる。(そもそもの狙いである、中高年の雇用状況改善には大した効果がないが。)


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