受託収賄罪で収監されていた鈴木宗男元議員が出所。早くも、実刑確定の決め手となった証言は虚偽だと、この証言をした北海道開発局の元港湾部長を提訴。精力的に動いている

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 この連載も今回が最終回になる。通常、書き手にとって連載最終回は卒業式のようなもので、ちょっと寂しさを覚えるのだが、今回は違う。心の底からうれしく思う。それは、われらが鈴木宗男「新党大地」代表(元衆議院議員)が塀の中から出てきたからだ。

 12月6日午前8時30分、仮釈放になった鈴木氏から電話がかかってきた。

「鈴木宗男です。今出てきました。それにしてもたまげましたよ。ヘリコプターまで出ています。マスコミの人たちには何も言わなかったけれど大丈夫かな」

 と問われたので、筆者は、

「午後3時から記者会見をやるので問題ないと思います。新聞の夕刊やテレビのお昼のニュースで扱われるよりも、新聞は明日の朝刊、テレビは今日の夜のニュースで報道されたほうがいいと思います」

 と答えた。

 鈴木氏がなぜ喜連川社会復帰促進センター(刑務所)の前でマスコミの取材に応じなかったのか。その理由は髪の毛にあると筆者は見ている。仮釈放の候補者は刑務所当局に「蓄髪(ちくはつ)願い」を出す。そうすると五分刈りでなく、長髪が認められる。長髪といっても、専門の理容師ではなく刑務所用語で「ガリ屋」と呼ばれる受刑囚が、はさみや剃刀を用いずにバリカンだけで調髪をする。どうしても髪の毛がばさばさで落ち武者のような雰囲気になる。この写真や映像はロシア人も見る可能性がある。「かつて北方領土交渉で日本国家を代表した政治家がこんなになってしまったか」という印象を持たれることを鈴木氏は避けた。「虎は死んでも皮を残す」という精神だ。

 電話で鈴木氏は、「佐藤さん、あなたからの最後の402通目の手紙を読んだ。ありがとう」と言った。その手紙の一部を引用しておく。

〈本信が、喜連川社会復帰促進センターに送る最後の手紙になります。長い間、ほんとうにお疲れ様でした。(中略)鈴木先生の仮釈放に関するマスメディアの関心はひじょうに高いです。政治家・鈴木宗男を日本が必要としているということです。(中略)私が北方領土交渉に鈴木先生を巻き込んでしまったがために、こんなことになり、ほんとうに申し訳なく思っています。北方領土返還が実現できなかったことが罪に問われるならば、服役しなくてはならないのは、鈴木先生でなく私たち外務官僚のほうです。この一年で北方領土に関しても「鈴木宗男先生の方針でやっていればよかったんだ」と多くの人が口にします。

 いずれにせよ、鈴木先生に御迷惑をおかけしたことを、ほんとうに申し訳なく思っています。お詫びは今後の仕事を通じて行いたいと思っています。再会を楽しみにしています〉

 鈴木宗男氏は、へその緒がつながっていたときから政治家だ。おかしな法律のため刑期を終えても5年間は公民権が停止されるので、選挙に立候補することができない。しかし、国会議員でなくとも政治家・鈴木宗男にしかできない仕事がたくさんあると筆者は信じている。

(文/佐藤 優、取材協力/小峯隆生、撮影/五十嵐和博)

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