JC08モード燃費で「リッター30km」を実現すると発表された軽自動車のイース(e:S)が注目されています。これまで燃費に関しては、効率的には軽自動車よりもやや大きなリッターカー・クラスのほうが有利と考えられていたのですが、その難題を乗り越えた出来事ともいえます。実はデミオのリッター30kmは10・15モードでの話で、新しいJC08ではリッター25kmなのです。このことは、軽自動車とスモールカーの燃費バトルが始まることを意味するのかもしれません。


 またホンダは軽自動車のミッドシップカーとして知られたビートの復活を宣言しました。次世代のビートは軽自動車とは限らないとのことですが、できればビートも軽自動車で…との声は少なくありません。


全長3.4m×全幅1.48m×全高2m以下、エンジンは660cc以下というミニマムな寸法が軽自動車の制約ですが、それはむしろ軽自動車の魅力になっています。そんな小さな寸法のなかでもスポーツカー、ミニバン、ワンボックス、トラックとあらゆるジャンルのクルマがひしめきあっています。ある意味では日本の自動車のデザインを象徴する一側面に軽自動車があるといえると思います。


 ここではそんな軽自動車の最近のエポックメイキングなモデルを紹介し、軽自動車規格の魅力をもっともっと理解いただければ、と思っています。



ダイハツ・タント



 


 ダイハツ・タントは、とにかく広さを追求したクルマです。軽ミニバンとも呼べるモデルですが、エンジンルームを極限まで小さくすることで室内長(ダッシュボードからリアシート後端部)2.15mを実現しました。室内幅が1.35mなので、居住空間は1.8畳ほどの面積。そして左側後部ドアはスライド式で、Bピラーをなくすなど、前後ドアを開ければ大きな窓を開け放ったリビングのような感覚です。おまけにどこにでも移動できるわけですから、子供にとってはちょっとした「どこでもドア」かもしれません。各ピラーをできるだけ内側に寝かせていないことで、目線で感じる広々感を重視しているのも特徴です。






スズキ・パレット タントのライバルとして登場。タントにはない両側スライドドア採用ながら、左側Bピラーは健在。


 


 スズキではワゴンRは見逃せません。現行型はすでに4代目ですが、初代からのコンセプトはほとんど変わっていないモデルです。



スズキ・ワゴンR


 


 限られた寸法のなかで、ヒップポイントを高くすることで居住性を高めるのが狙い。乗降性もよくなり、高齢者ドライバーからの高い評判も得たといいます。ワゴンRの登場がそれ以降の軽自動車のパッケージを変えたといっても過言ではありません。



ダイハツ・ムーヴ ワゴンRの好敵手。ワンモーションのフォルムでワゴンRよりも先進性を主張。


 


ホンダ・ライフ ワゴンRより押し出しの強い豪華な雰囲気も加味。



三菱eKワゴン ワゴンRの直接のライバルではないが、競合車より全高をやや低めて、リーズナブルな価値もアピール。


 


 オープンカーとしては、現在は唯一ダイハツ・コペンがあります。単なるオープンではなく、電動格納式ハードルーフを持つクーペ・カブリオレである点が大注目です。



ダイハツ・コペン


 当時他のメーカーの開発者もコペンの登場にひそかに期待し“アレが出ればウチでもできる”という話をよく内緒で聞きました。しかし、スズキ・カプチーノ、ホンダ・ビート、マツダAZ-1などのようにお金をかけて開発されたスポーツカーとは違う点が功を奏したともいえます。“楽しさ”を“オープン2シーターを持つライフスタイル”の中にあると考え、その結果FFレイアウトを利用しても十分に魅力的な製品になり得るという読みに至ったことです。あまりスポーツに振り過ぎないスタイリングも、コペンの個性を明確にしています。



ホンダ・ビート 現在は生産されていない90年代のスポーツ軽の1 台。当時、スズキはカプチーノ、マツダはAZ-1を発売したが、ダイハツはそれらのモデルを持っていなかった。


 


 ここではエポックメイキングなモデルとその競合車を紹介しましたが、デザインはどれも似ていないというほど個性的なことにお気づきですか。


寸法やエンジンなど厳しい制約を受けることは、コンセプトやデザインなどで他との違いをより明確にしなければならないことを意味します。単にブランドだけで売れるものとは異なり(もちろん一部ではブランド化したものもありますが)、そのもの自体の商品性が評価されてしまうのも、軽自動車規格の面白さだと思います。


【画像がすべて見られない方は】http://clicccar.com/2011/07/23/44379


(MATSUNAGA, Hironobu)




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