中国の国営テレビ局・中国中央電視台(CCTV)はこのほど、教育番組で中国の著名な刑法学者を取り上げ、「今の中国はまだ死刑廃止の条件を備えていない」との見解を紹介した。同時に、中国の刑法が「“国家の刑法”から“市民の刑法”に移行するのが理想」として、中国の司法の問題も示唆した。1日付中国新聞網などが報じた。

 番組で紹介されたのは、馬克昌・武漢大学資深(終身)教授(85)。1980年に「林彪・四人組裁判」の弁護団の一員となり、1997年の中華人民共和国刑法の全面改正に携わった、中国の刑法学の大家だ。ドイツや日本の刑法にも詳しい。

 馬教授は死刑廃止問題について問われ、「生命権は尊重されるべき。しかし今の中国にはまだ死刑を廃止する条件が整っていない。庶民感情として“人殺しの罪は命で償うべき”との観念が根強い」と述べた。

 『ただし中国では、死刑は殺人などの凶悪犯罪だけでなく、収賄などの経済犯罪や麻薬犯罪にも幅広く適用される。共産党の指導下にあるため司法の独立が存在せず、法治より人治主義が優先され、政治的・恣意的な判決がしばしば問題にされる。』

 馬教授は、死刑は今のところ犯罪の抑止力になるとみる一方で、「文明がある程度に達すれば、死刑は徐々に廃止される」との見方も示した。「中国は犯罪の撲滅と人権の保障、どちらも重んじなければならない。そうして初めて文明国家といえる」

 また中国の刑法が「権威主義的な“国家の刑法”から徐々に“市民の刑法”に向かうのが理想」だと語り、中国司法の問題も示唆した。(編集担当:阪本佳代)



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