/どうでもいいことに執着しても、どうにもなるまい。欲が無ければ、無いものは無い。むしろ、楽しみもまた、心の中にある。楽しみは、自分で捜さなければ、生まれない。悪いこと捜しはもう止めて、人の良い所、世の中の楽しいことを捜そう。/

 大航海時代、だれもが新大陸の奥地を目指した。夢の黄金都市エルドラド。自分たちがそこに先にたどり着くために、他の探検隊をじゃまをし、ときには戦って殺した。十七世紀初頭になっても状況は変わらない。カリブ海貿易を行っていると称する英国の南海株式会社を巡って、人々は争奪戦を繰り広げ、その株価は天井まで高騰し、やがて破綻した。いや、近年でも、大量破壊兵器を破壊しに、米国は大軍を送り、多くの人命を失った。しかし、エルドラドも、カリブ海貿易も、大量破壊兵器も、最初からありはしなかった。

 たとえ本当にあったとしても、いったいそれが自分と何の関係があるのだろうか。そこに自分が住んでいるのならともかく、だれも行ったことも、見たこともない島のことで、人々が憎み合ってみても、いったいなにを憎み合っているのやら。どうせどちらかの国のものになったところで、どこぞの人々ががっぽりと儲けるだけで、そのほんのわずかなおこぼれさえ、あなたの手元には落ちてはくるまい。そんなどうでもいいことを騒ぎ立てて、それで、あなたは、いまの仕事を失い、命さえ落とす覚悟があるのか。

 よく言われるように、自分の死は、自分のものではない。生きている間は、死んではいないし、死んでしまえば、死ぬ自分がいない。ところが、殺されまいとして、人に戦いを挑み、殺されてしまう人がいる。生きるために働いて、働きすぎて死ぬ人もいる。自分は病気ではないか、と、気に病み、病気になる人も多い。


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