雑誌「BIG ISSUE」の売り子にもらったもの/金森 努
売り手と買い手の関係は、有形無形の商品と対価の交換において対等である。しかし、顧客満足という考え方が台頭して以来、売り手が弱者となりがちではないか。商品の対価+αのサービスが売り手に求められる。それは基本的な接遇であったり、サプライズでスペシャルなサービスであったりするが、顧客は自らの支払う対価以上の満足を得ることが当然の権利と思いがちだ。筆者はある日、そんなことを思い直させる出来事にであった。
「ビッグイシュー(BIG ISSUE)」という雑誌を知っているだろうか。知らない人は「全32ページで300円」という体裁と価格を聞くと「高い!」と驚くかもしれない。しかし、その価格にはワケがあるのだ。「ホームレスの自立支援」である。1991年に英国で発足し、世界で展開。日本版は2003年にスタートした。300円の定価には、路上で雑誌を販売する売り子であるホームレスの取り分、160円が含まれている。ホームページ( http://www.bigissue.jp/about/index.html )の説明では、雑誌の販売収入を得てする「路上生活→簡易宿泊所(1泊千円前後)→アパート賃貸・住所取得→住所をベースに新たな就職活動開始」という自立への目標ステップが記されている。老子の言葉「授人以魚 不如授人以漁」(人に魚を与えれば一日で食べてしまうが、釣りを教えれば一生食べていける)と同じ考え方だ。現在、多くの売り子が路上生活を脱し、恒常的な住所取得のために頑張っているという。
とはいえ、目標達成は容易ではない。暑さ寒さに耐え、1冊ずつ、160円の収益を積み上げていく日々だ。「ベンダー」と呼ばれる売り子としての登録を証明する身分証を首からさげる以外、販売にマニュアルはなく、通行人に買ってもらうためには各自の努力に依る。
続きはこちら
とはいえ、目標達成は容易ではない。暑さ寒さに耐え、1冊ずつ、160円の収益を積み上げていく日々だ。「ベンダー」と呼ばれる売り子としての登録を証明する身分証を首からさげる以外、販売にマニュアルはなく、通行人に買ってもらうためには各自の努力に依る。
続きはこちら