バランスのとれた食事。
バランスの取れた運動。
バランスがとれていて悪いことは思い浮かばないですよね。
組織だってバランスが必要です。
ですがそのバランスをとるためには、時に真逆に舵を切ることも必要なのです。

「仕事が増えて手当がナシじゃヤル気も出んわ」

「それもそうですね…」

発言力のある古参A氏の意見に、皆が賛同しかけた時のこと。

「ちょっと待ってください!」

私は急いでプロジェクト会議を止めました。
十店舗を展開するホール企業、議題は

「接客サービス推進リーダーの処遇について」。

これまでの『接客レベル向上は本部インストラクターの仕事。
現場は本部に従う』というものを、今後は『店舗のことは店舗が主体的に動く。本部は店舗を支援するだけ』と、180度転換することが目的です。

店舗毎に新たに任命する接客リーダーについて

「役職はつけるのか?」

「給与手当は?」

などを話し合う中での、冒頭の発言でした。

「皆さん、『振り子理論』をご存知ですか?」

「フリコ?」

虚を突かれたのか、
社長を含めた8名のプロジェクトメンバーは
皆キョトンとした顔。

「今回の風土改革は、本部から現場への指令、つまり悪く言えば『やらされてる』というイヤイヤ感を、『やりたい!』という自発的行動へ転換するのがキーワード。要するに『主体性』が軸になりますよね?」

「だから変化に耐えうるバランスを取るため、現場に手当てをつけたほうが良かろう」

古参A氏が繰り返します。
そう、経営にバランス感覚は重要ですが、

なんでもかんでも「バランス命」にするのは大ウソ。

私は言いました。

「そういったお考えもご尤も。ですが皆さんの進めている風土改革はまさに『振り子』を逆に振るようなもの。やらされる仕事であれば手当をつけるべきです。しかし、やりたい仕事に必要なのは気概やプライドや心意気なんです」

すると、若干23歳のC主任が目を輝かせて口を開きました。


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