〜高度成長からバブルを駆け抜け、さらなる未来へ〜
1980年〜90年台にかけての日本経済のバブルが膨れ上がって破裂前後の頃の、筆者のドロドロの商社マン生活の実体験をベースに、小説化しました。 今も昔も変わらない営業マンの経験する予想を超えた苦楽物語を、特に若手営業マンに対して捧げる応援メッセージとして書きました。


第三章 初めての海外出張



「これは何だ!?」



イラン国テヘラン国際空港の税関係官がこれでもかというほどの
ギンギンの疑いの眼で聞いてきた。


その時宮田はとっさに答えた。



「こ、これはTAMAN(田万)というジャパニーズライスジュースだ!」



「ライスジュースだと? それではこの数字は何だ?」



係官が指し示すラベルの先の数字の前後には、カタカナと漢字でこう
書いてあった。


(アルコール分25度)


幸運にもアルコールという文字が英語で書かれていなかったことを
とっさに宮田は確認して堂々とこう言い切った。


「米の成分が25%ということだ」



係官は、宮田の返事に一瞬怪訝な顔をしたが、次々と紙パックを手
にしてしきりに振って、ちゃぷちゃぷという音を何度も立てながら、
他の同僚係官となにやら話してから、最終的に宮田にこういった。


「検査は終了だ。 週刊誌だけ没収する。
スーツケースのふたをして行ってよろしい」


< あー、 よ、良かったー・・・。  ふー・・・ >


検査自体はものの20分ぐらいだったが、宮田にとっては数時間に
感じられた。

終わったときには汗だくで放心状態であった。

税関を無事めでたく通過した宮田は、バゲッジクレーム(荷物受け
取り場)で心配そうに待っていた内村技師と合流した。


「宮田さん。 絶対出て来れないと思ってました。
よかった。 よかった。 本当によかった。 
それにしても日本酒を12本もこのイランに持ち込んだなんて。
私も中東での仕事長いけどそんな日本人見たのは宮田さんが
初めてだ」



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