中村のFKによる“1−0”は多くの人が想像できた結果だっただろう。安堵感に爽快感が伴わないのは、チームとしての前進を感じられないからだ<br>photo by Kiminori SAWADA

写真拡大

 1−0の勝利が運んできたのは、今回も爽快感ではなかった。試合後の埼玉スタジアムには、歓喜ではなく安堵が漂っていた。それも、消化不良な思いでコーティングされた安堵感だ。

岡田武史監督は、「チームは少しずつ進歩している」と言う。最終予選で3勝2分けと結果が出ているから、指揮官の言葉を否定することはできない。

 ただ、「少しずつ」だけに進歩を読み取りにくいのも事実だ。試合後の印象は、どの試合もほとんど同じというのが率直な感想である。中村俊輔のフリーキック一発で1−0という結果は、かなり多くの人が予想していたものではなかったか。

 テレビ中継の解説者は、「シュートを打たないと何も起きない」と繰り返していた。「ちょこちょことパスを廻してばかりでは崩せない」とも。解説に頷きながら、2月のオーストラリア戦でも同じ話を聞いたと感じたのは、僕だけでなかったはずだ。

 バーレーンを1−0で退けた今回のゲームは、これまでと何が違ったのか。「少しずつの進歩」は、どこにあったのか。昨年6月22日に行なわれた3次予選のバーレーン戦と、今回のゲームを比較してみた。

 ボール支配率はほとんど変わらない。昨年6月の試合が64・4パーセントだったのに対して、今回は61・5パーセントだ。

 シュート数も似たような数字が残っている。

 昨年6月の対戦が13本で、今回は14本だ。バーレーンのシュート数も7本から9本と、日本同様に微増となっている。

 特徴的な違いは直接FKの数か。バーレーンの直接FKはどちらの試合も14だが、日本は12から22へ増えている。ゲームのなかの動きに置き換えれば、バーレーンがファウルを冒した回数がそれだけ増えている、ということになる。

 しかし、日本の攻撃陣が相手守備陣を慌てさせ、その結果として直接FKが増えたという印象は薄い。キッカーがそのままゴールを狙える位置からの直接FKは、前半の遠藤と中村のゴールだけだろう。

 試合後のミラン・マチャラ監督は、「これで日本は70パーセントから80パーセントの確率で本大会へ行けるでしょう」と話した。4大会連続のW杯出場へ、数字の上では確実に近づいている。ただ、チームの進歩は見えにくいままで、「W杯でベスト4進出」の根拠も示されていない。試合内容が次のゲームへつながっていないことが、僕を含めた観戦者にとって何よりのストレスになっている、と思う。

戸塚啓コラム - サッカー日本代表を徹底解剖