ビールが1杯、3,000円!? ここでしか手に入らない限定品なら...いやいや、なかなか悩ましいところだ【W杯戦記】
カップの正体は、スタジアム内で売られているビールやソフトドリンクの入れ物。アメリカでは一般的な、いわゆる“スーベニアカップ”である。
中身を飲み終わった後は、お土産(スーベニア)として持ち帰れることから、その名がついた。分かりやすい例で言えば、ドジャース・スタジアムでの試合なら、カップには大谷翔平が描かれている、といった具合で、ファン心理をくすぐるデザインが施されている。
現地の試合中継を見ていても、特にメキシコで行なわれた試合では、いくつも積み重ねた青いカップを手にした観客がよく画面に映っていた。日本でテレビを見ていた人も、その存在にけっこう気がついたのではないだろうか。
ざっくりと言えば、青はビールが入っているカップで、赤はソフトドリンクが入っているカップ。やはりビールのほうが飲まれる数が多いのか、赤に比べ、青のカップを大量に持っている人を見かけることが多かった。
仮に日本代表を追いかけ、現地を訪れたサポーターであれば、全試合分を揃えたくなるのが本心だろう。
ただし、アメリカにしろ、メキシコにしろ、物価は高い。
ビールなら1杯2,500円、ソフトドリンクでも同じく1,400円くらいはするのだから、飲み物としてはなかなかの値段である。実際は飲み物を買うというより、カップのために買っている、という人は多いだろう。
なかでも一番驚かされたのは、メキシコのビールである。
容量は1杯約700mlと大きめのサイズではあるのだが、その値段、およそ3,000円である。日本の物価水準で考えれば、ちょっと手が出ないレベルだ。
それでも売店には行列ができ、飛ぶように売れていたのは、のどを潤すことだけが購入の目的ではなかったからだろう。
それをビールの対価として考えても意味はない。今ここでしか手に入らない限定品が手に入ると思えば、この値段でも...いやいや、なかなか悩ましいところである。
実はこのスーベニアカップ、最近のワールドカップでは定番の人気商品と言っていい。
筆者の記憶が正しければ、試合ごとの対戦カードや日付などを記したものが売られるようになったのは、2014年ブラジル大会から。大会公式スポンサーも、うまいことを考えついたものである。
そのカップのデザインは準決勝までは変わらず、対戦カードなどが書き換えられるだけなのだが、決勝戦になると、さらに特別感のあるデザインが施されていたりするから、コレクターの心はまたくすぐられる。
いつの大会の決勝だったか、記者席に一番近い売店でコーラを買おうと思ったら、すでに売り切れていたことがあった。
「カップなしでもいいなら、売ってもいいよ」
店員はそう言って、ペットボトルをそのまま目の前に出してきた。お断りしたのは言うまでもない。
取材・文●浅田真樹(スポーツライター)
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