福岡県弁護士会は北九州市の弁護士(61)を業務停止2カ月の懲戒処分にしたと発表した。この弁護士は「処分については真摯に受け止める」と話しているという。

【映像】弁護士がロウソクの火で探し物→被告の家が全焼

 2021年8月、国選弁護人として弁護士が訪れたのは、自身が担当する被告の自宅。刑事事件で拘留中だった被告から「自宅にある本や寝具を差し入れてほしい」と鍵を預かり、訪問した。しかし室内が薄暗く視界が悪かったことから、部屋にあったロウソクを見つけた弁護士は、ライターで火を点け明かりを確保して本を探すなどしたという。ところが弁護士が家を出た後、被告の家が全焼。ロウソクの火を消し忘れたまま退去してしまったためだという。

 弁護士はその後、失火の罪で罰金刑の略式命令を受けた。一方、火事から4年以上経った現在まで、損害賠償は行われていなかった。

 この事件について法律事務所 三ツ星の中川みち子弁護士は「被疑者・被告人の家に行って、何か物を持ってくるということは、基本的に私はしません」として「刑事事件の被疑者・被告人であるので、証拠隠滅であるとか、少しでも自分の有利になるように弁護士を利用することも考えられる。例えば隠したい物を取ってきてください、隠したい物を捨ててください、そういうことを言われることが昔からある。その辺は気をつけるような認識を私たちは持っている」とコメント。

 さらに中川弁護士によれば、今回の弁護士がどうであったかは不明としたうえで、本来担当する被告の自宅に立ち入る際は、後からトラブルにならないよう事前に書面で許諾をもらっておいたほうがいいという。

 果たして弁護士は依頼人のためにどこまでやるのか、実は意外と知られていない苦労があるという。中川弁護士は「例えば離婚事件をお受けしていて『物が家にまだ残っているので取りに行きたいけれど、一人だと元夫と会うかもしれないから一緒に行ってください』とか」と、同行を頼まれることもあると説明。

 さらに、身寄りのないお年寄りの「成年後見人」を務めたときの苦労については「後見人って何年もやる、亡くなるまでやる。亡くなった後、身内の方がいなかったらご遺体をそのままにしておくわけにはいかない。簡単なお葬式はやりますし、死後事務委任という形で権限としてできる」と明かした。

 それ以外にも「家を片付けに行ったり、お掃除したり。やらない人もいっぱいいるし、私も『そこまでやってくれる後見人、初めて見た』とよく言われる。ご飯とかも一緒に食べたりする。別にそれはやらなければいけないことではないし、それをやったとしても家庭裁判所は『お掃除したから』といって報酬は上げてくれない。それぞれの考え方。掃除は成年後見人の範囲を超えている。汚いんです。すごく汚くて私が耐えられない」と、ケースによってはあえて苦労を担ってしまうとも語った。

 「証拠隠滅のためにわざと火事を起こしたのでは」という指摘に本村健太郎弁護士は「この北九州の火事の事件に関して言うと、この弁護士さんのことを依頼人である被告人が懲戒請求しているので、完全に対立しているからそこまでの憶測はいらない事件。単純に自分の家が弁護士さんのせいで燃えてしまったという事件」と説明。

 「この事件が起きたのは昼間で夜じゃない。昼間だから普通にやれるだろうと思ったら、家の中がおそらく薄暗くて手元が見えなかったと。まあまあ年配の弁護士さんだから、スマホで照らすとかは多分考えつかなかったのだろう。とりあえずしょうがないからロウソクを使おうと思ったのではないか」とした上で「損害賠償義務が当然ある。自分の火の不始末で燃やしてしまったから、本当は全額弁償しないといけない。だけど全く弁償してないから重い処分になった」と、顛末を語った。

 その上で、本村弁護士は「本来は弁護士がやる仕事ではない」「家の中に入るというのは本当はやらないほうがいい」「一人で行くのは避けた方がいい」と語ると、「この方は国選弁護人。だから本当にこんなことまでやる必要はなかった。国選だから一切相手からお金をもらっていない。国からは報酬をもらうけど、ごくわずかなお金だけ。だから善意でやってあげたことは間違いない」との見方を示した。

(『ABEMA的ニュースショー』より)