高齢と暗殺の脅威、トランプ氏が不死身ではないと気付かせる二つの視点

(CNN)米国のトランプ大統領は26日、健康診断を終えて病院を後にした。ホワイトハウスへ戻る途中には、何もかも「完璧に」検査したと宣言した。
しかし、この発言によってトランプ氏の健康状態にまつわる疑問の声が収まる公算は小さい。本人も自分が決して不死身の存在ではないことを暗黙のうちに認め始めている(多くの場合は警備上の文脈のことではあるが)。また残りの人生の限られた時間について時折思いを巡らせ、天国に行けるだろうかなどとも口にしている。
「あとどれくらい生きられるか分からない」と、今年初めにホワイトハウスのイーストルームで行われたイベントでトランプ氏はつぶやいた。「私を狙っている人はたくさんいるから」
トランプ氏がウォルター・リード米軍医療センターを訪れるのは、昨年史上最高齢の大統領として就任以来、3度目となる。ホワイトハウスは今回の健康診断について、「定期的な歯科検診と健康診断」が含まれると発表したが、トランプ氏は今年すでにフロリダの歯科医を2度受診している。
トランプ氏とそのチームは、本人を無限の活力と比類なき鋭敏さを備えたリーダーだと熱心に称賛。年齢を感じさせる明確な兆候や、会議中に居眠りしているように見える瞬間が複数回生じてもそれを気にかける様子はない。しかし頻繁に検査を行い、主治医が楽観的な評価を提示してもなお、トランプ氏の健康状態に関する疑問の払拭(ふっしょく)にはほとんど寄与していないのが実情だ。米国の大統領は自身の健康状態について何も公表する法的義務を負っていないため、公表はすべて本人の意思によって行われる。トランプ氏以前の大統領の中には、在任中に健康問題を隠していたことが後に発覚した人物も複数いる。
力強さと活力というイメージを政治的ブランドとして築き上げてきたトランプ氏は、身体的な衰えを認めることを極度に嫌うことで知られている。前任者をほぼ毎日引き合いに出し、「スリーピー・ジョー(眠そうなジョー)」と呼んでみせる。側近たちは、同氏が遅くまで仕事をしていることをすぐに指摘する。今週末も広報担当補佐官は、トランプ氏が午後9時半に大統領執務室にいたと明らかにした。
トランプ氏は、前任者のジョー・バイデン氏の任期中より声が大きく、メディアへの露出も多い。それでも1期目よりは移動の頻度は少なくなり、カメラの前で長時間目を閉じる場面も何度か確認されている。
度重なる暗殺未遂事件と本人の高齢化は、すべてが一瞬にして変わる可能性があることを改めて思い起こさせる。トランプ氏自身と側近たちは、手のあざや脚のむくみといった身体的な衰えを軽視しているものの、同氏は時折、人生観についてうかがわせるような言動を示している。
公の場で何度も命の危険にさらされながらも、トランプ氏は驚くほどの冷静さを保ってきた。先月、ホワイトハウス記者協会主催の夕食会で銃撃事件が発生した際も、その後の記者会見にタキシード姿で現れたトランプ氏の振る舞いは実に落ち着き払ったものだった。
しかしトランプ氏と話をした人々は、同氏が身の安全を常に意識していると明かす。ただ本人はそれが強迫観念にならないよう心掛けてもいるという。現在軍事衝突が起きているイランは、過去にトランプ氏の暗殺を企てたことがある。また近年、トランプ氏と近い関係にあった安倍晋三元首相と保守活動家のチャーリー・カーク氏は、屋外での集会中に単独犯の銃撃によって殺害されている。23日には、ホワイトハウス近くの検問所で警官に向けて発砲したとみられる男が大統領警護隊(シークレットサービス)によって射殺された。この時トランプ氏はホワイトハウスの中にいた。大統領が直面する安全上の危険を改めて示す事件だった。
トランプ氏の1期目の任期中も、健康上の問題は度々発生した。例えばウォルター・リード米軍医療センターへ突然、理由の説明もなく受診に訪れたことがあった。後に側近が明らかにしたところによれば、これは大腸内視鏡検査のためだった。新型コロナウイルスにも感染したが、当時のホワイトハウス当局者は重症度を公表しなかった。
2期目に入ってからは、目に見える症状が現れたため、ホワイトハウスはトランプ氏の健康状態に関する新たな詳細を公表せざるを得なくなっている。
トランプ氏の健康問題として、認知能力ほど物議を醸しているものはないだろう。大統領に復帰して以降、公の場での同氏の発言は、本来の目的とは関係のない話題へと目まぐるしく変化する。本人も自身の回りくどい話し方については自覚があることを示唆しているが、同氏に批判的な人々は精神状態への疑義を表明している。
トランプ氏が医師の監督下で受けたと述べている3度の認知機能検査は、同氏の恒例の政治イベントとなっているが、今月、同氏は今後検査を受けないかもしれないと明かした。
「もう終わりにしようと思う。検査を受けるのはもううんざりだ」。ホワイトハウスで行われた中小企業経営者を称賛するイベントでの演説で、トランプ氏はそう語った。
