10日にチェルシー戦を控えたアーセナルのアーセン・ベンゲル監督は、敵地スタンフォード・ブリッジに乗り込む約3000人のサポーターに対し、DFアシュリー・コールへの集中攻撃を自粛するよう求めた。

 今夏のチェルシー移籍以降、古巣アーセナルと初めて対戦するコール。しかし、様々な遺恨を生む形で同じロンドンのライバルチームに移ったイングランド代表DFに対しては、アーセナルサポーターによる集中的なブーイングが予想されている。また、一部のサポーターでは、チェルシーの資金力を揶揄する「ロシア銀行」の文字や、コールの顔などが印刷されたオモチャの20ポンド紙幣をスタジアムに持ち込み、コールの移籍を非難する計画もあるという。

 すでに警察が取り締まりの強化を発表するなど、物々しい雰囲気が予想されるチェルシー対アーセナルの大一番。この試合を前に、誰よりも状況を危惧しているのが、アーセナルの指揮官ベンゲルだ。この知将は、暴徒化したパリ・サンジェルマンのサポーターに警察が発砲し、その内1人が死亡した事件を例に取り、悲劇を繰り返してはならないと訴えた。

「我々には、試合が始まる前に状況を落ち着かせる責任がある。つい先日、パリでサポーターが1人死亡する事件があった。こんな事件は繰り返してはならない。サッカー界で起きてはならない悲劇だ。私は、チェルシーとアーセナルが、サッカー界の手本となるような素晴らしい試合を繰り広げることを祈っている。バカげた個人攻撃はやめて、イングランド・サッカー界のビッグマッチを楽しもうじゃないか。アシュリーの移籍に失望したファンもいるだろう。その気持ちは十分に理解できる。でも、選手に対する敬意を忘れてはならない」

 一方、当事者のコールは、「厳しくブーイングされるだろうね。普通の会社員が転職するのとはわけが違うから。サッカー選手が移籍すると、どうしても『金が目当て』と非難されてしまうから…」と半ば諦めムード。

 土曜日の試合で首位のマンチェスター・ユナイテッドが勝利し、暫定的に勝点差を9に広げられたチェルシーと、奇跡の逆転優勝に向け、上位との差を少しでも縮めておきたいアーセナル。両者ともに落とせない遺恨マッチだが、その激しさはピッチ内のみに留められることを願いたい。