西武時代の張奕【写真提供:産経新聞社】

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元オリックス、西武の張奕は台湾代表でプレミア12に出場

「ちょっといいですか?」。チャイニーズ・タイペイ代表の張奕投手は取材中、記者に丁寧に断りを入れて、三塁方向へ向かった。西武時代の同僚、源田壮亮内野手から手招きされ写真撮影。「(西武では)5試合しか投げてないのに……。今でも僕のことを気にかけてくれてありがたいですね」。満面の笑みを浮かべた。

 16日に台湾・台北ドームで行われた「ラグザス presents 第3回 WBSC プレミア12」グループBの野球日本代表「侍ジャパン」戦。オリックス、西武に所属した張は「久々に会えてとても嬉しいですね。懐かしさを感じます」。かつてのチームメートやライバルたちとの再会を喜んだ。

 2022年オフ、森友哉捕手の人的補償でオリックスから西武に移籍。2023年には右肩を痛めており、わずか5試合の登板にとどまった。オフに戦力外通告。「正直、まさかでした」。当時は右肩を痛めていたこともあり、育成契約があると思っていた。その後、トライアウトを受けたが、NPBからの声はかからなかった。

家族は日本で生活「なんとしてもSRに行きたい」

 迷いに迷って決断したのは地元・台湾に戻ること。高校から来日していた張にとって実に15年ぶりの帰国だった。CPBLの球団に入団するには、7月のドラフトで指名される必要があり、それまでは台鋼ホークスと練習生契約。衣食住は保証されているが、給料はゼロ。貯金を切り崩す生活だった。

 日本人の妻にはNPB時代の貯金を全て渡した。不安はあったが「それ以上にやってやろうと覚悟を決めて台湾に戻りました。食事や練習環境を提供してくれた台鋼さんには感謝しかないです」。7月のドラフト会議で富邦ガーディアンズが2巡目で指名し、再び“プロ”の世界に戻ることができた。「嬉しかったです。またプロの舞台に戻れるのは幸せですね。(台湾は)『帰ってきた〜』って気分です」。

 家族を日本に残してプレーしている。「まだまだ稼いでいるわけではないですし、まだ呼べていないです。これから相談ですね」。家族を養うため、単身で覚悟の帰国。「なんとしても(東京ドームで行われる)スーパーラウンドに行きたいので、頑張ります」。グループBを突破しなければならない理由がある。(川村虎大 / Kodai Kawamura)